番外編29「親愛なる隣人へ」
天上院咲は、社長室に居た。
《ようこそ、天上院咲さま》
「システムへアクセス」
《システムアクセス権を執行、どのようなご命令をなさいますか?》
「親愛なる隣人へ連絡を」
《……、失礼ですが【ソレ】は別バースです。予測不能の危険性に巻き込まれる可能性があります。運営権限ではアクセスできません》
「ならゲームマスター権限でアクセスして」
《……、ゲームマスター権限により親愛なる隣人へアクセスします。前置きしますが秘匿性の高いメッセージは表現されません》
「いいわ、繋いで」
《――接続完了、音声を繋ぎます》
『ハイ! もしもし誰?』
「私よ、サキ。えーっと、■■■■ー■■以来だっけ?」
『あー! サキ! ■■人のサキだね! あの時は■■■ー■■■■■に変換されちゃってちょっと混乱しちゃったけど!』
「■■■■■から連絡よこせよこせ言われてたけど、観てたら解るでしょ? 私の■■■■ーは広い。頭痛になるくらいね」
『今どこに? 今回もまた僕が■■を歩くよ!』
「あいにくだけど、私とあなたじゃ住んでる■■が違う。簡単には出会えない」
『でも、皆と■■すればまた会えるはずさ!』
「まあ、そっちは相変わらずバトルやってるんでしょうけど……。じゃあ■■■ストーンを探して、それぐらいしか手がかり無いし」
『ストーン!? でもこっちの世界にはそれはもう無いって……ッ! ■■■■■が!』
「あるはずよ、いいえ。有ってもらわなきゃ困る。まだ始まりにすぎないんだから」
『始まりにすぎない?』
「あるかどうかはともかく、惑星■■ー■■には無いの? あるいは■■■■■ワールドとか」
『待って、地球には無いの?』
「地球に現存しているとしたら……■■■■? ■■■湖じゃない? そこに無かったらお手上げなんだけど」
『■■■湖だね! わかった行ってみる!』
「あ! 最後に! あんた何か選ばなきゃいけないんでしょ!?」
『あ! うんそう! ……』
「だったら、■■を選びなさい。どうせ■■じゃなきゃ私とは会えないし」
『……、オーケー解った!』
「じゃあ、……フェニックス■■■■と共に……!」
『フェニックス……?! 何だって!?』
《ピー! 通信が終了されました――。》
◆
機械的なステータス画面からゲームマスター咲は離れる。
咲には何とも言いがたい疲労感が少し貯まった……。
「ふう……」
真のゲームマスター姫は傍らで見守っていた、1人の少女の、1つの運命に。想いをはせながら。
「土を肥やし、種を蒔き、芽が出て、そして花が咲く。か……やっと咲いたな」
当時の咲は、2年間おきに花が咲く事を知らなかった。
「うん」
もうすぐやって来る未来を思い、咲いた花を。花見をするのを待ち遠しく思う。
「会えるかな、親愛なる隣人に」
「会えるさ、お前が思ってる以上に。世界が必要としてる」
――戦うことは、きっと間違いじゃない。
――宴に参加するのも、きっと間違いじゃない。
――きっとコレは、楽しんだもん勝ちなのだ。




