第338話「続けるか否かの選択」
現実世界。西暦2035年9月4日、季節は秋。
――正直、続けても続けなくてもどっちでも良い自分がいる。
これはゲームの世界だ。だから何処まで行ってもゆるふわ安心安全、デスゲームとはそもそも無縁だ。
これからも色んなゲームに触れて、一杯遊ぶことが出来るだろう。
今までだって取っ替え引っ替え色んなゲームをやってきたじゃ無いか。
放課後クラブなんてゆるい部活名にしたのだって、学校が終わった放課後にしか活動しないという。ゆるい規制だからこそ出来た冒険な訳だし。
そこら辺行けばよく長続きした方だと思う。
――んで、今がある。
なんかゲームでも無いのにマジモンのファンタジーに足を踏み込みそうになっているのは。
一重にお姉ちゃんと同じ土俵に立つため、仕方の無い事だった。お姉ちゃんを孤独にさせないための措置だった。
――で、今はどうだ?
日にちが近しい世界でごっちゃになる世界線、ややこしいから私だったら、似たような世界線だったら。どっちかを切るのが正しい選択だろう。
普通に考えたら【私自身を切る】、【私の物語を切る、だってゆるいから】。とかそうなってしまうわけだ。だが。
【それをするにしては遊びすぎた】……、現在。私、天上院咲のトータルログ数は81万ログある、自他共に認める最長文学少女だ。
塵も積もれば山となるだが。いくら何でも積りすぎた。おかげで身動き一つ取ってもとりずらいめんどくささの領域まで入ってしまっている。
――別に、100万ログ行っても良いんだろう?
なんか強敵に立ち向かうフレーズみたいになってるが、こんな所まで来たら。あと10万ログやら20万ログで3桁の大台を超える……。その景色を見てみたいというのもある。
……目覚めてしまった。そこから見える景色には何が待っているのだろう。
ライトノベルの単行本1冊で10万ログ、100万ログで10冊。……この10冊の大台に達しなければ、観れない景色もきっとあるだろう。
ただの100万ログでは無い。皆を一緒に引き連れての100万ログだ。これはちょっとした楽しみでもある。
――実は、放課後クラブ親衛隊の隊員数は287人なのだ
この数を引っさげての100万ログの景色はただ事じゃ無い達成感があるだろう。
皆で登った100万ログ。他の誰でも無い、天上院咲の物語を見たくて付いてきてくれた287人。
……普通に考えて簡単じゃ無いこの数字……。
正直言って、続ける理由と。辞める理由を天秤にかけたら。
――続ける理由しか無かった。
――というか何で適当にエンジョイしてる私にこんな人数が????
私の存在自体がほんと謎だった。
んじゃ、決まりかな。
とりあえず、あと20万ログ! 単行本2冊分ぐらいお前ら付いて来いやぁー!!!!
◆
「ふわぁ~……」
「お、おはよう」
どうやら腹は括ったらしい。
「そんなに気負わなくても良いのに~」
と、現人神の天上院姫お姉ちゃんは言うが、流石に今までのドラマがあってコレがあるのだ。そう言うわけにはいかない。
「とりあえず、今後の目標でも聞こうか?」
「第1目標!――100万ログ達成! 第2目標! ――2年生編完結! 第3目標! ――中学卒業までエンジョイ勢を貫く!!!!」
目標がいつの間にか1から3つに増えていた。
2034年の4月から始まったこのゲーム。気ずけば2035年の9月になっていた。もう中学生の青春も残り半分を切っていた。
姫は、諦めたとばかりのため息に。心踊る。
「……無理を通せば道理が引っ込むとはよく言ったものだが……簡単では無いぞ? 20万ログも、1日2000ログ行ったとしても100日かかる」
「ふふふ! 余裕! 適当にやるだけならね!!!!」
流石にがむしゃらに遊んでしまった【81万ログの少女】は言うことが違う、からっきし名声とは無縁だが……。
「起きれるか?」
「うん!」
現人神・天上院咲は立ち上がった。
「んじゃ、やるか? VRMMOゲーム」
「うん! 十分寝たよー! 休んだよー!」
堅っ苦しいのはナシにして。
「「リンク・スタート!!!!」」
――2人は、光の世界へダイブした。
◆
《人生を続けますか? 続けませんか?》
《『続ける』が選択されました! ゲームを続行します!》
――次回、新章開幕。




