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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第18章「V&Rシスターズ」西暦2035年9月1日

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第337話「小休止」

 現実世界。西暦2035年9月3日、季節は秋。

 〈家族の善神〉と成ってから2日目。


 天上院咲は学校の教室に居た。

「えっと、こっちが2035年で中学2年生で……あっちが2040年で中学3年生で……。こっちがゲームだけの世界で、あっちが異世界ファンタジーで……」

 自分で何を言っているのか解らなくなる。


 これが、認知症ってやつなのかしら……? 頭が、痛い……。

「えっと、こっちが平塚市の学校で。あっちが長野県ながのけん岐阜県ぎふけんの狭間の大喰岳おおばみだけの山頂の宇宙戦艦アースゴスペルの中の運営管理部屋で……。今からやることは……」


 誰だったかさえ覚えてないとある先生が、授業の一環で咲を指名して質問してきた。

「では咲さん、この 2003年頃まで印刷されていた日本の1万円で印刷されてい紙幣の人物はわかりますか?」

「へ? 2003年? ……リュウキ?」

「ん?」

「あ! あー! 2003年頃のお札の人物ですよね!?」

「もう、何を言ってるの? 教科書を見ても良いから答えてちょうだい」

 

 えっと、今は2035年で、私は2022年生まれで、2003年は19年前だから……。

 天上院咲はペラペラと歴史の教科書をめくって探す。

「ふ、福沢諭吉ふくざわゆきちさんですね! 昔は諭吉が無くなるー!? とか騒いでましたけど。今は栄一えいいちが無くなるー! ってお父さんが騒いでいて……」


 ~ジジジ……。ノイズのような物が入り込む。~

 まるでテレビのチャンネルを切り替えられたかのような錯覚だ。

 当たり前の質問を、当たり前の答えで返したつもりだった。……しかし先生は言う。

「何言ってるの? 1万円札の自分人物は【凪ノ唄家】の人物じゃない。令和じゃ常識」


「へ……?」


 そんなはず無い、今さっき教科書で確認して……。

 すると、教科書には。凪ノ唄家の人物が、しっかりと印刷されていた。

「……、ここは異世界ファンタジーの世界……?」

 教科書が書き換わってる……? 上書きされた……?


(いや、そんなはず無い。ちゃんと上書きをするときはお姉ちゃんが事前に言うはずだ……)

(お姉ちゃんは何も言ってこない、ということは……【それほど重要じゃ無いこと】なのだ。【今のこの現象は……】ッツ)

 何かが、何かがおかしい……。

「しっかりしなさい咲ちゃん、そんな暗記力じゃ。今年の受験で良い成績残せないわよ」

「へ……は……? だって今中学2年生で」

「夏休みボケもたいがいにしなさい、今は中学3年生の2040年の4月7日よ?」

 何が……。

 どうなって……。

 頭が……頭が……。

 

 ~ジジジ……。ノイズのような物が入り込む。~

 まるでテレビのチャンネルを切り替えられたかのような錯覚だ。

 ポンポン、と優しく肩を叩く女性が横にいた。

 今度ははっきりと人物を特定できた。

 湘南桃花しょうなんももか先生が「大丈夫?」と優しく声をかけてくれた。 

「は、はい。大丈夫です! ……あの桃花先生、今は西暦何年何月何日でしょうか?」

 〈理解者〉桃花は、不自然にならないように。さらりと、言われた事だけに答える。逆に混乱しないようにするために。

「今は西暦2035年9月3日、季節は秋」

「私は……今何年生ですか?」

「今は中学2年生よ、咲ちゃんちょっと変な汗かいてるわね」


(変な汗? あ、本当だ汗をかいてる。まるで【どこかの次元でデスゲームの第1層をクリアしたような】、【あるいはプロの実力を凪ノ唄夜鈴が披露したときのような】……、時間がズレてる? 重なってる? 遅れて来た……??)


 何が、どうなって……ッ。

 桃花先生は状況を察した。

「具合悪そうだから、誰か彼女を保健室に」

 立ち上がったのは、元凶。天上院姫てんじょういんひめだった。

「あ、あ私が行きます!」



 保健室で、優しい風に当たりながら。姫は言う。


「ま、つまりこういうことだ」


 何がつまり、なのかさえもわからなくなってくる。要は神様になると「こうなる」、と言いたいのだろう。

「とにかく、今は何も考えずゆっくり横になってろ。難しく考えると【そうなる】」

 自分が揺らいで、時空や次元が揺らいで。本人が今どこに居るのか、立ち位置がわからなくなる。つまり、自己という次元が歪む……。

 などと言う余計な心配はさせまいと、姉である姫は気を使う。

 お姉ちゃんが、人の名前を覚えられないと言うのも。こういう所で理由がちゃんと在るのかもしれない……などと考えて。


「わかった、何も考えずに寝てる」

 再び、優しい風に当たりながら。天上院姫はコソリと持ってきていた小説を両手に持ち。静に看病を始めた。

「……たまには、こんな小休止もいいじゃろ?」


 再びの間があってから……。

「お姉ちゃんは、こんなこと毎日あるの?」

「たまにある。そうじゃな、下手したら1日中横になってた。なんてこともあったな。今のところ過去4回ぐらい」

 何も言い返せなかった……。お姉ちゃんのキツさを知る、ソレがこんな恐ろしい事だったとは。


「一応補足しておくと。お前が見た【それらは全部現実だ、違う時空のな。マボロシじゃない】……」


「は、何ソレ!? てことは全部真実ッ……!??!ッツ」

 正常どころか逆に混乱した、混乱に混乱を上書きされたような感覚。

「気負うな気負うな、もっとリラ~ックス、リラ~ックスなのじゃ」

 深呼吸をして、更にリラックスをする。

「スーハースーハースーハー……。」

 今は西暦2035年9月3日、学校の保健室。

 ……それで良い。コレが神様になった権能。あるいは神様になった代償なのか。あるいは日常なのか……。


 天上院咲は再び横になり。

 更に更に更に、深いまどろみの中に入っていった……――。


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