第312話「カードゲームを始める」
カードゲームを作るにあたり、今風を覚えるためにゲームを買った天上院咲。だが、そこに待ったをかけるゲームマスター天上院姫だった。
「ちょっと待て、お前に言っておかねばならんことがある」
それは、とても重要な事だった。
「お前は、カードゲームだからテキストのルールを覚えればそれで良いと思っているが。まず大きな問題がある」
「ん?」
「ログの問題だ。このゲームは、どんな森羅万象な事をやっても大抵できるが。3000文字を超える文字数は処理できない、これが意味するところが解るか?」
機転の良い咲は何となく理解する。
「えっとー、カードの設定に文字数が食われる?」
「その通り。したがって、名前まではまだ良い。ブルーアイズホワイトドラゴンとかな、これだって字ずらで結構圧迫される。で、3000文字を超えて処理が出来なくなるとどうなると思う?」
「えっと、次のファイルに移動する? デジタル世界だからテキストの処理にはそんなに負担にならないと思うし……」
「その通り。具体例をあげてやろう。普通のカードゲームだったら良いかもしれないが。ここが小説投稿サイトだとする。書ける文字数は1日約3000文字、それ以上は次の日に持ち越しだ。そうなると、次の日までターンが持続することになる。お前は中断したゲームを毎日24時間後まで覚えているか?」
「たぶん、……学校の授業とか挟まるから覚えてないと思う」
「その通り。まぁ色々言ったが、私はこのカードゲーム。作るとしたら3000文字で完結するゲームにしたいと言っているわけじゃ。漫画だってページ数に限界があるじゃろ? そんな感じ」
ツッコミどころは満載だが、言わんとしていることは解る。
「設定をふんだんに入れたい気持ちは解かるが……。ブルーアイズホワイトドラゴンなら〈青瞳白龍〉とか、雨縁とか星咬とか、とにかく。設定でログを圧迫し過ぎるとろくなことが無い。言いたいことが解るか?」
「解るけど……、でもカードゲームって知略ゲームでしょ? どうしても文字数は長くなるし、ゲームだから問題ないんじゃ」
「とにかく、3000文字を超えると容量オーバーになる。これは絶対ルールだ。それ以上を望んでも、誰も得しない暗黙の了解。いくら文字制限がほぼ無制限に設定できるとしても。ここは守ってもらいたい」
「うん、……わかった」
「で、ここまでの『説明』で1000文字のログ消費なんだよなぁ~。あと2回、1000文字ぐらいの新規カードを紹介する文量しか残ってないって話になるんじゃ。じゃから、文字制限が無いように見えて実はある。まともにここでカードゲームしたいのなら……ん~せいぜい200文字ぐらいの説明文が限度じゃろうな」
「ほうほう……」
咲と姫の問答は続く。
「他にも、カードゲームが難しい要因は数あるが……。まあ初めてみようか」
というわけで始まった。




