第304話「湘南桃花2009」
2009年、現実世界。日本国、群馬県。
――コンコンコン。と、不思議なドアを軽く叩く天上院咲。
「はいどうぞー」
「えっと失礼しまーす」
いやけに素直に湘南桃花の家に入れてくれると思たら。なんか色々と事情があるらしい。部屋の中は取っ散らかっていた。まるで何かに熱中するかのように……。他のものには眼中に無いと言わんばかりに。
「……で? 【今度は何? 誰の関係で来たの?】」
咲は、言っている意味が解らなかった。
「えっと、どういう意味ですか? 【桃花先生】」
「先生? 確かに教員免許は取ろうと考えてるけど……。ん~話が噛み合わないわね……。じゃあまず自己紹介をしましょうか。私の名前は湘南桃花、大学生。今はここで、とある大妖怪様とゲーム中。【本当は未来の京都に住んでるはずなのに、あなたは群馬県の真実の部屋に来た。そしてこの場所に来られたのは、あなたで3人目。だから今度は誰関係で来たの? って言ったの】で、あなたは誰?」
自分と同じことを考えてる人が先に2人来ているという驚愕の真実に驚く咲。そして天上院咲は自分の自己紹介をする。
「えっと……、私の名前は天上院咲。2035年の未来の神奈川県から来ました。えっと、私は桃花先生の生徒です」
「未来の私の生徒……か……そう。ちなみに、2012年3月ぐらいに神楽スズちゃんが来て。今度は2020年4月に未来の私が来た」
「2012年のスズさんと、2020年の桃花さんですか」
「んで、今度は2035年の咲ちゃんだっけ? あなたが来たってわけ、こっちとしては大混乱よ」
――コンコンコン。と、不思議なドアを軽く叩く音が来た。
「おいおい、何人来る気だよ? はいはい今度は誰~?」
ガチャリ、とドアを開けると。そこには不思議なロボットが立っていた。
「俺の名は仮面木人シェイク、スズゴーレム4号機。2021年6月から2035年の天上院咲を守るように言われてきた」
「4人目は。今度は未来のロボットですか……はぁ……あたし何かしたっけ?」
2009年の桃花は大混乱の上に、飽きれてため息が出る。
「まだ何にもしてなくて……」
「これから起こすんだよ、君が……」
そして、咲とシェイクは。各々の事情を話す……。
◆
「なるほどね、つまり私は普通に動画を作って良いけど。接合性が『問題の紅3話』で、社会の歯車が止まっちゃってるから、そこの流れを作りたいのね」
シェイクは咲の説明を補足するように話す。ちなみにこの時期には、動画のネームはもう出来ている。
「デジタル世界での物語だ、桃花はそのまま作業をしてて良いが。ちょいとそこで細工をする。咲は現在、世界観学者で今までの力を失っている。観測者にしか成れない。そこで誰が来ようと対応できる俺が2021年から2009年に来ることになった」
あとは3人ともこの部屋の中で夢の世界へご招待という算段だ。桃花も理解するのにだいぶ苦労したが、両方とも善人だったので。何とか理解出来た。
「じゃあ、あとはデータ世界で戦うってことね? どこで戦うの?」
「モンサンミッシェル」
「え? 紅魔館じゃなくて? なんで????」
桃花はまた混乱する。夢の世界じゃなくて何故現実? ちなみに、この時期の桃花は仮想世界の仮の字も知らない。VRという単語も知らない。ついでに言うとツイッターもスカイプもディスコードも知らない。というか無い。
「話すと長くなる、とにかく。フランス西海岸にデータ上で良いから俺達2名を飛ばしてくれ。【神の見えざる手】で、あとはこちらで何とかする」
そう言って、湘南桃花は。家のドアのカギを、内側から閉める準備に入った。
「じゃあ咲ちゃん、シェイクくん。行くよ?」
「ああ」
「お願いします」
ガチャリ――と内側から鍵を閉めた上で。
封絶――。と、桃花は細く呟く。
因果孤立空間が場を満たし、不可侵領域が展開された。
「で? これからどうするの?」
「もう一度タイムトラベルして『オーバーリミッツ2010』まで飛びます」
「俺達の主戦場はソコだからな。正直上位世界には興味はなかったが、真のゲームマスターが混乱するのは避けたかったからな」
「そう、じゃあ。私の実力。しっかり世に響かせてね?」
「はい!」
「言われるまでも無い」
元気のいい声が2つ帰って来た。
「んじゃ! 3人とも夢の世界へレッツ・ゴー!」
そう言うと。3名は、夢の世界を次元を超えて駆け上がった。
――異世界行ったから本気出すわ。
Q、咲って桃花の生徒だっけ?
A、色々関わってるから実質生徒、あと教員免許を桃花が取ってくれないと時空の歪みがヤバいことになるので、釘を刺した。




