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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第14章「同じリングで戦う」西暦2035年7月6日

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第293話「桜S2021」

 自動販売機からジュースを2つ取り出し、天上院姫は天上院咲に言った。

「今回の戦闘どうじゃった?」

 言われて。咲は、心のトーンを一段下げて。落ち着きながら感情のヒントを見つける。


「……心が許せば、魂が許せば許される。……てわかっても、内心複雑」


「……そうか」

 缶の鍵を開けて中身の飲み物をコクコクと飲む2人。

「読者が作者の内心を当てるような、作者が読者の内心を当てるような。そんな回りくどさを感じるわね」

「ま、そうじゃろな。んじゃコレをやる。危険な実験を手伝ってくれた礼じゃ」

 言って、AR端末から。姫は咲にデータを送る。

 中身には、〈剣・Sランク武器『桜S2021』〉と書いてあった。

 意味合いとしては、桜色のS型、2021年物の品。と言った感じだろう。

 咲には。その桜も、Sも。ただの文字にはもう見えない……。認識が変わってしまった。より高級に言えば、概念が変わってしまったからだ。自分の中で……。

「この武器、剣と名前以外の色や形や性能が書いて無いんだけど……」

「そんなもん自分でカスタマイズしろい。私がいつもやってることだ」

「あれれ? まさか試作品のまま渡されちゃった?」

 苦笑いと共に姉に言葉を返す。すると「ちょっと独り言いうぞ……」と怪奇電波を飛ばす姉。

 

「本当は、動画作品なんだから動画作品で打ち返すのが筋なんだよ。でも、そもそも目的がプロになるための壁。や、好きな子のための愛の表現方法だったんだ。それを逆説的に反論作品作ったって、例え正しくても。面白くも何ともない。だから不可逆的に、次へ進むしか無かったんだ。……今回の件はな」


 何が? とか、何の話? とは、当然聞かない。彼女は真相を正直に話しているだけだから。これは自白も同じだ。


「……、……そう」

「桃花の件は、もう終わりだ。でも、私の件はまだ終わってない。ちゃんと最後まで見届けるのが、私の責任の取り方だしな」

「うん」

「だから咲、お前はお前の道を進め。夢と共に歩め、こんな所で立ち止まって考察するな。それが天上院姫の【回答】だ」

「うん、わかった」

「あ、でも一緒に歩くからな? 気持ちの問題じゃ気持ちの」

「うん、知ってる」

 にこりと、全てを察する包容力でもって受け止める。流石に姉妹でこれまで難局を乗り越えて来ただけの、絆はそこにあった。

「んじゃ、いこっか」

「うん、おウチ帰ろう」

 もう気分は朝でも夜でもどっちでもいい。

 2人の冒険を阻む、心の障害は何処にもなかった。



 で、戻ってきたわけである。社長室、神道社。

 原点回帰も慣れればそつなくこなせるんだな、とは天上院姫の本人談。

「これで全て丸く治まったというわけか」

 アメリカ合衆国大統領、ジョン・サーガとの通話でで愚痴が出て来る姫社長。

『君にとっても、私にとってもプラスマイナスゼロだろ? 良かったじゃないか』

 餅つもたれず、数字の上下で視ればそうかもしれないが。

「それでも確実に時間は進んでいる」

 つまり、つまりだ。

「私は0から1を動かす、お前らは1から9まで勝手に動かす。お互い好きにしろってことか」

 それでも、回りくどくても確かに回っている。時計の針の音はグルグルグルと。

『正に、計画通りだな』

「望んではいたけど、実現するとは思ってなかったけどな」

 彼女は夢を語るが、実現することに慣れていない。今までの人生、失敗ばかりだったからだ。それも、他人と協力して夢を達成させると言ったらなおの事。実感が湧かない。当然である、彼女は言うだけ言って【まだ何もしていない】のだから。

 自分の手で目的を達成しなければ意味は無いとさえ思っている。援護が邪魔とは言わない。が、ただ慣れていないのだ。

 しかも、01は決まっているけど、そこから先の23456789に至っては特に具体的な意味合いはない。実際に使う数字の表記。漫画の本などで言うと巻数でしかその意味が計れなかったりするからだ。

「01、18、555、777、紅、U、S、α、Ω、エース、あとついでにジョーカー。これ以外のルールは特にない、理詰めは出来るがこれじゃゲームにならん」

 よくこれだけしかない象徴的な文字の羅列だけで、ゲームが成り立っていることこそが驚きである。

 なんでこれだけで世の中が廻ってる? と不思議でしょうがなかった。

「あとは動画の秒数とかだが、……それも……な……いや解んねえって!」

 自分でノリツッコミを入れる姫。たまに出て来る『数秒』とか『たっぷり数十秒』とかわけわからん魔術で誤魔化されるのも、もう沢山だ。

「今度は妹と、数字の羅列に意味を持たせて遊ぶよ、0から1の能力とかが出来たんだ。時間さえあれば9個分とかも行けるだろ」

 今ではもう、上手く回らないことこそが【悪】だった。

『では、私はこれで』

「ああ、今回の件。ありがとうな、ありがとうだけ言っておく」

 感謝の気持ちでも言うだけタダだと言いたそうではある。それでも何故かやりきれなさはある。自分で解決できなかった憤りだ。自分ではどうにもならないことがあった。他人をあてにしなきゃ解決しない事件があった。それを自分で解決出来なかったのがもどかしい。

 だから「ありがとう」しか言えないのだ、この子は。


 さて、目いっぱい風呂敷は広げた。

 落としどころも自他共についたらしい。

 あとは自分しだいだ。

 次はどこへ行く? 何をやる?

 これから先、成すべきことは変わっていない。

 成すべきことに対比して足りない所はどこだ?

 金か? 時間か? 信頼か?

 成すべきことは決まってる、しかし何度も失敗しているその原因。

 ミニゲームでその小さな成功体験を久々に得た。

 あとはその成功体験を積み重ね、軌道修正するだけ。

 そのための……単純な力量不足がわかる。


「技術が足らない」


 単純明快、努力が足らないと悟り。少女は右手にデジタルタブレットのペンを取った。


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