第287話「賢術系第1位ラフティーヌ」
最果ての軍勢
賢術系第1位ラフティーヌ
それは知ること、知の象徴とも呼べるべき存在。その能力とは……。
農林水サンは「まあとりあえず戦ってみろ難易度はBだ」と言った、そんな瞬間――。
ヤエザキはと【ある戦場】に飛ばされた。
◆
《NPC戦 賢術系第1位ラフティーヌ、難易度B。スタートします。》
ヤエザキは混乱した。
「はい? なにここ? 戦場? どこの仮想空間よ? これはラフティーヌさんだっけ? あんたの趣味? ログアウトボタンは……アレ? 無いや」
ログアウトボタンが無い。どゆこと?
ラフティーヌが周りをキョロキョロと眺めて情報収集をすると。こうヤエザキに返す。
「……【なるほど】どうやらここはあなたの庭のようですね。どうします? AIにします? NPCにします? 本物にします? まぁどっちにしても、ヤエザキさんの負けという未来は変わりませんが……」
(何を言ってるんだろう、このNPCは?)
とかヤエザキは考えていたわけだが。まあ何にしても、考えるより戦った方が速いだろうと。剣を構えるヤエザキ。
「じゃあ本物で!」
と言っても、ラフティーヌは遠くを観ている。
「何にしても……あなたには速すぎるステージです」
視界が暗転した、いや。世界が暗転した。
「はあ! 〈斬空剣!〉」
ヤエザキの斬撃が飛ぶ。
「はぁ、理解が及びませんか? 良いでしょう、親切丁寧に教えてあげましょう」
すると〈斬空剣〉のエフェクトがバグった。
ラフティーヌが親切丁寧に説明する。
「まず、ここには仮想世界の私、現実世界の私、ファンタジー世界の私、NPCの私、AIの私、2次元の私、3次元の私がいるわけです。そのどれもが存在しています。理解できますか?」
「……? ごめん理解できない、電波系エルフさんですか?」
「……例えば、2次元の私を倒そうとしても。私は3次元の私に回避するという事です。理解出来ましたか?」
ヤエザキは微妙に解らない。
「……、理屈こねて〈攻撃〉回避したってことぐらいは……」
「マルチバーズ。私に攻撃を当てるためには6ヵ所に点在している『私』を【同時に攻撃しないと当たりません】。意味が解りますか?」
「? ごめん、つまりどういう事だってばよ?」
はぁ……と、ラフティーヌがため息を突いたあと……。
「つまりNPCラフティーヌと対戦したいなら。レベルうんぬん以前に。【三千世界の私】に【同時攻撃】しないと、同じ土俵には上がれないという事です。私にとってはヤエザキさん、あなたは本、私は読者。ぐらいに次元が違うので勝負にならないって事です」
なるほど、見下されてることはわかったヤエザキ。
「ふむ、つまり100年ほど本として突っ立ってれば。NPCラフティーヌには寿命で勝てるって事ね」
「……、そういうことですね。今私に勝てる勝率1%上がりました」
なるほどなるほど、確かにこれは勝負にならないわな。戦う前から本能的に【逃げちゃう】のもわかる。
「つまりラフティーヌさん、あなたは私と同じ土俵で戦うのが怖いんだ」
ム、となるNPCラフティーヌさん。お、挑発にはひっかかるんだ。
「なるほど、ではあなたと同じ土俵で戦ってあげましょう。想像できる限りの全力の知で。PCやら、発電所やら、雷の元素記号ごと存在を消してしまえば。あなたには勝てますか?」
やばい、やっぱこの褐色エルフさんは電波系だ。
「いや! だからゲームしろよ! お前アレか! ジャンケンしましょうって言ってグーチョキパー出すタイプだろ!?」
「グ……!」
図星だった。
(あーもうめんどくさい、ジャンケンしよっと!)
「「さーいしょはグー!」」
(未来予知すんなや! 感覚共鳴すんなや! そしてハモんなや!)
「「ジャーンケーン! ポン!!」」
ヤエザキはグー。
ラフティーヌはパー。
「「……」」
硬直するヤエザキ、何も考えてなかったのに。何? 未来でも視たの? それって反則じゃない? 同じ土俵じゃなくない? ちゃんと理由を聞かないと納得できない。
「……理由を聞いても良い?」
「……、眼がグーを出すと叫んでましタ」
「何それ!? 納得できない!? 逃げんなや!」
「マジックのタネを教えたらつまらないでしょ? だから教えません!」
「ちょっと待って! 未知からの攻撃は『未覚系』の特権でしょ!? 私知ってる!! 知的好奇心を満たす納得できる説明が無きゃ納得できない!」
「カンです」
「ダウト!!!!」
「結果は私の勝ちです、私の勝ちは揺るぎません」
「おま! ふざけんな! せめてマルチバースに逃げろや! 無限の可能性の世界線に逃げろや!」
「でもホラ、見てください。私は逃げてません。攻めてます」
「ふざけんなあー!」
「あなたに説明しても、高次元すぎて理解出来ません! これぞ! ザ! 知的!」
「なるほど、ミステリーで難解な科学技術が禁止されてるわけだ。これはウザイ……!」
何だかんだ小競り合いした後に、ヤエザキはわかった。
「なるほど、これがNPCラフティーヌね……」
「理解出来ましたか?」
「ええ、ジャンケンするのも一苦労するってことが解ったわ……」疲れる
これが難易度Bか……。と思たヤエザキだった。




