第270話「私は何をやっていたのだろう」
私は何をやっていたのだろう。
一般的な中学2年生、趣味はストーリーとVRゲーム。特に何の気なしに始めたこのゲームを、のらりくらりとプレイしてきた。初めこそお姉ちゃんのゲームということもありノリ気ではしゃいで、我武者羅に突っ走って来たのが。次第には、あの人はこうだから気をつけよう。とか、この人はこうだからもっと慎重に。とか、もっと言葉使いを……。とか考えて来た。
もちろんそれはネットゲームの醍醐味であり。社会と密接に繋がっている対人ゲームだからこそ発生する。人との会話だから。というのが大きい。
……。
でも。
私はどうだ?
ただただ遊び。
デスゲームでも無ければ、ハードゲームをやってるわけでもない。
例え、難しくても簡単でもお姉ちゃんに言えばゲームマスターなので直してくれるし。
セミプロにまでのし上がったから、ゲーム内でのお金や課金額の心配はゼロ。
ゲームが強いわけでもなければ、弱いわけでもない。
ステータスも普通、職業は魔法剣士から一歩も変えない。
挙句、オールラウンダーを自称して。あっちへウロウロこっちへウロウロ。
ただ、楽しむ事を目的とした自称エンジョイ勢ヤエザキ。
仲間も出来た、凄い仲間が出来た。でも凄いのは仲間達だけであって。私は全然凄くない。
強くも無ければ弱くも無い、普通かと言えばもっと普通な人は他に何人かあげられるし。その人たちより努力をしている自信もない。
あるのはほんのちょっぴりのプライドと、ゲームを『楽しむ』という姿勢だけ。
戦えば強く魅せようとして、気をてらった行動をとり。周りを楽しませたい、楽しみたい。
そんな私の何処に個性がある?
ゲームをやっては次へ行き、ゲームをやっては次へ行き。
安全地帯からは出ないぬるま湯で、ゆったりポッカリ良い天気。
自分だから言える。
私は私の物語の主人公ではあるけれど。
その場しのぎな楽天家だけど。
誰も死なないし。
ゲームに熱中することも無く、程よく現実から目が覚め。
遊んだら何も残らない生活を、日常に支障をきたさない程度に遊んでいる。
だから親はもう何も言わないし、そんな葛藤や摩擦も無い。
毎日がダラリダラリと過ぎてしまった。
こんな自分で良いのか? こんな姿勢でいいのか? こんな皆でいいのか?
ただ一つ、言えることは……。
私は……、本気を出していない。
出す必要も、覚悟も何もかも足らなかった。
死にたくなるような思いで、でも諦めず。魔王をやっつけてゲームクリアするような快感を私は味わったことが無い。
ならやってみよう。
今やろう、今日からやろう、今すぐやろう。
何の気なしに、ダラダラと言葉を浪費してきた私だけど。
人生を賭けてゲームを作ってる天上院姫お姉ちゃんや。
ただの人間を貫いて愚直に前に進んで行った湘南桃花や
空のように大きく眩しい光のように輝く真っ直ぐな心の浮遊戦空に。
今回私がやるべきことが、今決まった。
「あいつらに、勝ちたい」
心の炎を燃やすような、情熱を。久々に感じた。
だが、半端な覚悟じゃ。またダラダラと再開してしまう、だから咲は呟いた。
「3人に勝ったら、私はVRゲームを引退しよう」
◆
最終章 少女は異世界ゲームで名を上げる。 開幕




