第268話「探究の花火」
アニメの動画をちょろっと観終わって。話の内容はもうだいたいわかってしまった。
結局のところ、自分自身で作ったステータス表記の方が良いらしい。よって……。
このゲームのステータスは……やっぱダメですね。観てもよくわからない。
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そうこうしている内に、天上院姫がまたログインしてきた。
《農林水サンがログインしました。》
「あれ? どうしたのお姉ちゃん。また来ちゃって、そんなに時間経ってないでしょ?」
「あーまーそうなんじゃがちょっと安全確認というか、まあ実験じゃな。試しておきたい事がある」
そう言って、おもむろにロケット花火を持ち出した。
「それは?」
「ただのロケット花火がどこまで飛ぶか、まあ実験じゃな。【まだ知らない】からこの『本家』でロケット花火を打ち上げたらどうなるか、テストしておきたい。【空間の把握】じゃな」
そう言って北方向を歩いてから、東方向に標準を合わせる。
「目標、東へ飛んでフィールドを一周! 打ち上げ花火! よーい! ……ドン!!」
ピューン!!
と、ロケット花火が打ち上げられた。東方向へどこまでも飛んでいくロケット花火はルミネ市を抜けて、観えなくなった。
…………
……
。
パアーン!!
と、ヤエザキの『後ろ側』。【西側から花火の炸裂音が聞こえて来た】、農林水サンは腕時計を観てタイムを計る。
「タイム、秒速4万キロメートル。フィールドを回って帰って来た時間、0.2秒」
光速、光が地球を1周回って花火が炸裂した音だった。
「んで、これをして。プレイヤー達の反応が観たいわけだから、ここから先が研究対象じゃ」
そう言って、農林水サンは公園の回りを360度。右往左往と様子見をする。
ヤエザキが反応を示す。
「何でそんな事してるの?」
「あいや、昔。日本とブラジルを使って。物体を半周させたことがあってな、それの周りの反応をわしは知らないんじゃ。でも今は反応のアンテナが冴えてる。だからもう一度実験今度は『わかってる』状態での実験じゃな」
「それをするとどうなるの?」
「安全にこの空間内でゲームができる、かもしれない」
思い起こせば色々な事をやった農林水サンだったので、その効果。因果関係を知りたいというべきか、それを調べてるのだ。
「どんな反応だと嬉しいの?」
結果論を知りたがるヤエザキ。
「この因果関係で、ミサイルが発射されるのか。誰かが花火を打ち上げるのか。SNSで変なのがバズるのか。リアリティの病人が増えるのか。電話が鳴るのか。何も起こらないのか。とかとかじゃ」
小技が出て来るのか、大技が出て来るのかを知りたいという気持ちだ。今までが無意識の産物だっただけに。空間の安全性を確保したいのが狙い目だ。
「プレイヤーである皆の動作も研究対象じゃ。一度やっておかないと、知らないで飛ぶのと知ってから飛ぶのでは勝手が違うからな」
なるほど、つまりこの事象のあとの因果関係を知りたいわけだ。とヤエザキはうなずく。
「いつ・どこで・だれが・どうして・どのように。これらの因果関係が発生・変換して廻るのか。の探究ですじゃ」
「つまり空間の安全性を確認したい作業ってことね」
「そういうこと」
姉妹の試行錯誤は続く。




