第266話「続・ベータ版」
現実世界。西暦2035年6月3日 放課後。
なんとか希望の兆、というか。話の根幹が見えて来た所で。ベータテスト版ではあるが、再ログインが可能になったゲーム状況と相成ったわけである。
具体的には。
・メインシナリオは第6話までは解放は良いものの、それに連動してスキルがどうこうというのはとりあえず廃止。
・スキルツリーカードは今のところ問題なし、スキルポイントもとりあえず今は動かすつもりは無い。とのこと。
・数字は危なっかしいから動かさない方が良いものの、ルミネ市というフィールドそのものには影響がないため。散策はオーケー。
・あいも変わらず無軌道ぷりは健全なので、頼れる数字はレベルの数字ではなく。プレイヤー自身のプレイ時間のみ。
という結果になった。
《エレメンタルワールド・オンライン2へようこそ。ルミネ市アドバンス地区・秋浜菊3丁目。桜ヶ丘公園へログインします。》
「あー流石に万全じゃない状態で、プレイ開始ってのはリスキーだったってオチかー」
「まあ、ヤエザキがやりたいって気持ちをくんで。今できる最大限のおもてなしって言ったらここらへんだろうな」
相変わらず、公園から微動だにしないヤエザキ。と、今回は農林水サンも居る。
ヤエザキはというと、昨日の緊急メンテでいら立ってはいたものの、時間が頭を冷やしてくれたので。熱は冷めた感じだ。
「お姉ちゃんは昨日、ずいぶん右往左往した感じみたいだね」
「まあな、でも中期的なゴールを。とりあえず見つけられたので、場の統率は取れたと踏んで。こっちにログインし直した感じじゃ」
「ほほう、つまり今は何やっても良いと」
「そういうわけにもいかん、威力制限はかける。この世界の世界観を壊さない程度の数値は……。言及は避けるが……」
皆、やりたいことはあるだろうが。元がプロット無し運航なので、操作が難しいものは難しいのだ。
「いいか? ヤエザキ、あくまでお主は今、本物のベータテストをやってる。その認識を忘れるなよ? 本来メインシナリオが推敲し終わってから始まる所を、推敲し終わったところから遊べるんじゃ。変化しないわけがない」
「はいはい、解かったわよ。じゃあ、遊んでもデータ初期化される気構えで遊んでるわ」
「……、そのつもりで居てくれ」
積もる話もあるだろうが、姉妹の阿吽の呼吸はそれ以上は必要なかった。
つまるところ、
上手くいくプレイヤーは上手くいくし。
上手くいかないプレイヤーは上手くいかないのだ。
とはいえ、ヒントが増えることはあれ。減ることは無いからそこは安心して良いことは判った。
確かな情報、それがこの世界には足りない。
不確かで不安定な情報があまりにも多いい。
「んじゃ、わしは別の作業をするからこれでログアウトするぞ」
「へいへい」
《農林水サンがログアウトしました。》
そうして後には、ヤエザキと腕についてるマゼンタだけが残った。
「さて、何しようかな。ん~とりあえず散策か」
楽天家は楽天家のままだった。




