第260話「EWO2」
現実世界。西暦2035年6月01日、放課後。
2ヶ月の準備期間があっても天上院姫の作業はだいたい進まなかった。
天上院咲は天上院姫の報告を聞く。
「そういえば2ヶ月経ったけどどうだったの? 企画のほうは」
「課題をクリアしないとダメっぽい流れになってしまったのじゃ、主に桃花のせいで」
それは、湘南桃花が本当にあの世界『エレメンタルワールド』が好きだからハードルが上がっているのだ。
「てーわけで、シナリオを全部推敲してからじゃないと。本格始動は許さないってスタンスだった」
咲はちょっと考えてから……。
「じゃあ推敲が終わったシナリオはプレイ可能なの?」
速くゲームを遊びたい咲は、どうにかすぐにゲームをプレイ出来ないものかと。考えて、出て来た答えが。
「〈原典〉は完成してるなら、再推敲、〈リビルド〉は小出しにシナリオ進行をしても良いんじゃない?」
という答えだった。
姫は虚を突かれる。
「確かに、全部やったらリアルで1ヶ月かかるような代物だ。だったら小出しのシナリオ進行でも良いかもな」
咲は一応、念を押して確認する。
「別に本編シナリオがダメってわけじゃなくて、文字の表現の改稿だけなんでしょ? じゃあ推敲が終わったところから遊べるじゃん」
「お前は遊びの天才かよ。確かに推敲をやれと言われただけで。内容を変えろとは言われてない」
「今推敲が終わってるシナリオはいくつ?」
「エピソードは003までじゃ。元々原稿は昔に出来上がってるんだ、完結もしてるし脱線するはずもない」
「じゃあ遊べるね。ベータテストは何話まで行ったら正規版スタートするの? 私ベータテスターとして参加したい」
本当、遊びの天才だった。
「そこまで考えてなかったなぁ~……。ぶっちゃけ003まではシナリオ解放は可能じゃ。正規スタートは~……ん~咲が速く遊びたいってなら。010まで行ったら正式スタートでも良いかもな」
「おお~」
流石と、関心をする咲。
「世界観設定や、地図はあるの?」
「ありまくりじゃ」
「じゃあゲームプレイ出来るじゃん、ベータ版で」
「じゃな。……じゃあ今すぐベータ版をプレイする?」
「するする! 楽しみ!」
天上院姫は降参したかのように。
「はぁ~じゃあ今からポンとサービス開始するぞ? いいな? まだ何にもないぞ?」
とか言いながら、実は今までで一番設定を温める産物でもある。
「じゃ、お姉ちゃんは推敲作業。私はエレメンタルワールド・オンライン2にログインしてぶらり旅。て方向で」
「オッケイ分かった、上の連中や会議では。そこは押し通らせてもらおう。咲がつまんない時間を過ごすのはわしも嫌じゃしな」
「やったぜ!」
天上院家。
「じゃあとりあえずログインしてみるね」
「おーう、頑張れよ~」
「リンクスタート!」
咲の視界の景色は暗転した。
《世界樹ホームからエレメンタルワールド・オンライン2を選択。ゲームを開始します。》
◆
【運営は働きすぎ】オンラインゲーム総合掲示板【適度に休んで】
【皆さん、調子はいかがなものでしょうか。落ち込んだ時もあったけど、私は元気です】
【魔女再びかな? いやそんな事より聞いたか、神道社の新作ゲームのベータテスター募集の件】
【観たけど。……あれクリスタルウォーズのメインシナリオと何が違うの?】
【説明しよう。CWのメインシナリオは『エレメンタルワールドの原典シナリオ』が遊べて、今回のEWO2は〈原典〉シナリオが改稿される。このシナリオを〈リビルド・キーデータ〉と呼ぶ。略称は〈リビルド〉。その〈リビルド〉を基礎基盤にして、〈EWO2の続編シナリオ〉が今後公開予定って訳だ】
【噂じゃ、〈リビルド〉シナリオ完結は現実世界で1~2ヶ月後とされているが。これは予定は不明。〈2のシナリオ〉はそれから更に後だそうな】
【面白そうだし、過去のメインシナリオを皆でオンライン追体験できるのは良いけど。ところでデータコンバートは出来るのか?】
【できるっぽい】
【で、どの作品のコンバートが可能なんです?】
【ほぼ全部らしいぞ。EMO・CW・FRO・HFOこれらのゲームで遊んでたのは全部コンバートできる。世界観は変わるが】
【ただし! レベルに上限があってどうあがいてもレベル10以上は上がらないんだってさ。設定もされてないらしいから、限界突破も上限解放もない】
【まぁ、ベータテスト版だしな。おk把握】
【じゃあ当分は、知ってるシナリオを別視点から楽しむ感じになるのか。今度はリアルタイムで】
【なるほどなるほど、じゃあ後は好きに釣りでも何でも遊んでればいいわけか】
【そうだね】
【ベータテストは何人まで出来るの?】
【1万人だって】
【え、少なくね? 倍率高そう】
【まあ、〈テスター〉だしな~。しょうがない】
【お、そろそろ始まるっぽい】
【おっしゃー! ログイン戦争じゃあぁ――――!!!!】




