第254話「打ち切り宣告」
現実世界。西暦2035年4月28日、放課後。
受付嬢湘南桃花は歩くような速さでヤエザキに聞き返す。
「テスト勉強で赤点取った?」
「はい、成績が良くないから。このままじゃまずいだろうと先生に言われて……」
ヤエザキはしょんぼりである、せっかく良い感じに軌道に乗って来たのに。その宣告を受けてはオチオチゆるいエンジョイプレイも出来ない。「なので」とヤエザキは決意して言う。
「桃花さんからもらった『第50層無条件通過チケット』残り12枚を使って、第50層まで登って。そこのラスボスを倒して一旦ゲームを辞めます」
「おおっとそう来たか」と思う桃花。
「でも大丈夫なの? 第50層って【愛がなければクリアできない】がうたい文句でしょ?」
「確かに、私には愛はありません。欠けていて、没個性で。故にどうにもできない絶対の壁……」
一拍置いて……。
「でも愛がないなら無いで。どうやってそのゲームをクリアするか。私が皆に示してみせます。それが、最前線組の……いいえ、マスター承認試験組の1人。天上院咲が出来る最後の責任です!」
桃花が不安そうな顔色で尋ねる。
「仮に、第50層フロアボスをクリアした後は?」
「正式にマスター承認試験を辞退します」
そもまで言ってヤエザキは……。
「私には無理だったんです……」
励ますように桃花は言う。
「そんなことないよ。229人のファンが居てくれるプレイヤー、私観たこと無い」
愛がない事が欠点のヤエザキに言う。
「それだけあなたは愛されてるって事でしょ?」
愛する相手も居ないし、愛も知らない。
でも愛されてる存在ヤエザキ。
仮に愛されて居なくても【好まれている存在】、今。
彼女が彼女自身に決着をつける。
『愛がなければクリアできない』
彼女は彼女なりの決意で挑む。その方法は……。
《求む! 『第50層無条件通過チケット』12枚。改め、『見つめる眼』12本が欲しいと思う我こそはというプレイヤーにあげるから。代わりに私がを第50層のラスボスと戦わせてください》
そこで名乗りを上げたのはまず、ヤエザキ親衛隊の4名。
『幼女』『賢者』『牙』『地図化』
そろぞれ4名のプレイヤーとギルドに渡して【託す】。
これで残りは8本、あとはヤエザキが選んだ8名8ギルドに【託す】、なので間接的に馴染みの深いプロに渡す。
『海賊』『バスケ』『テニス』『禁書』『物語』『彼女』『ミニモン』『アート』
そしてこれら、一時的とはいえ。12ギルドの護衛を使って……。
一気に第50層のフロアボスの所までついた。
お人好しなヤエザキは当然、特別枠として戦空も一緒である。
◆
そして第50層で待ち受けていたフロアボスとは……。
《第50層フロアボス、愛をもって成した者『湘南桃花』とのバトルを開始します。》
「え!? 桃花さん!?」
「薄々はかんづいてたはずだよ、ヤエザキっち。さあサシで勝負しよう。私を倒せなきゃ、『愛の世界』は終われない!」
意を決して、戦場へと立つヤエザキであった。




