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第28話「家付き飛空艇」

(そしてフェイがどの世界でも死ぬ理由を突き止める)


(何としてもフェイちゃんの死は阻止しないと…後味悪いもんね!)


この場ではフェイに聞こえる、そういうことでサキとエンペラーは互いに相づちを打って合図し、誓い合った。


「必ず何とかしようね」


軽く汗を人拭いさせサキはこの先の波乱に備える。


「ああ、そうだな」


同じくエンペラーも身を引き締める。


「私も協力するよ!力になりたい」


何も知らないフェイは無垢な笑顔を皆に振りまく。


「ふが……! ふが……! ふが……!」


食べるのに夢中でそれどころではない精霊が一人。そこには今後多大なお世話になるであろう世界地図が悠然と置いてあるだけだった、地図もまた、黙して何も語ろうとはしなかった。


 ケンチャの部下を倒して宴会をして、一夜明け、更に朝になり、更に夕方。


 王宮の門を出た大通り、人が活気に満ちて出歩いている。そんな中サキ、エンペラー、ヒルド、フェイの四人は王宮の外の地を踏みしめていた。


「と言うか大きな都市6個あるわよね、ってことはこの6個の都市にスタンプが6個あると考えるのが普通よね」


 サキは憶測のみで言ってみたが、それはおおむねあってるのかもしれない。エンペラーは慎重にサキの思考を分析する。


「そうかもな、ほかにそれらしいのもないし。この地図が古ければまた新しい地図が手に入るかもしれない」


 サキは首をかしげてエンペラーの思考を疑問視する。


「う~んそういうもんなのかな~……」


 これまたゲーム脳全開でこういったときどういう行動をとるべきかエンペラーはサキに言う。


「それじゃあこういうゲームの基本、聞き込みを始めよう。スタンプはどこにあるか、乗り物はどこにあるか。おっけい?」


「おっけいおっけいそれで4人で探すの?皆で別れて探すの?」


「そうだな…この土地に詳しいのは……」


 そう思ってエンペラーは考えた、普通ならフェイが街の隅々まで知ってる案内役になりそうだが…フェイは箱入り娘で街の事を知らない。ヒルドに至っては400年風になりっぱなしで復活したばかり、ピュリアの土地勘などあるわけもない…。


「あれ? もしかして4人とも土地勘ない?」


 エンペラーの思惑をサキが代弁した。


「あ…あはははごめんなさい」


「うん、知ってるわけなかったな」


 フェイとヒルドは互いに言い合う。王宮は一番大きい建物を目指すだけでよかったが今回は違う、4人が4人とも土地勘がないなら迷子になる可能性がある。


「まあ……4人で手分けして聞き込み調査して時間になったら一番大きい城に集合って手も無くはないが……」


「4人で歩くのが一番だね~男組女組で分けようって案もあったんだけどね~」


 サキは穏やかに残り3人に語り掛けた。


「あのう何を聞き込み調査すればいいんでしょうか?」


 フェイが再確認するようにエンペラーに言う。


「ん? 何って、スタンプのありかと乗り物だが…」


「あ……あの……乗り物だったらありますよ。ちょっとうさぎ小屋みたいに小さいですが」


 サキとエンペラーは同時にクエスチョンマークを頭の上に付ける。


「「?」」


〈家付き飛空艇〉

 雲の王国ピュリアで見られる飛行石を土地の下に内蔵した家と土地の事を指す。小型版ラピ〇タを思い浮かべるとわかり易い。家は地下室と二階建て。縦横15メートルほどの広さがあり農作業が出来る。ピュリアでは上流階級の人たちが一部暮らしたりしているが、ピュリアと直結してないためピュリアに行くには乗り物が必要。なのでそんなに数は無い。


 日本の一個の家の相場は2014年の頃大体4000万円ほどぐらいなので(土地も含む)簡単には手に入らない、ある程度お金を持ってる人でないと入手は困難。EMOのゴールドの相場も同じくらいなので普通に買おうとすると4000万ゴールドほどする。序盤で手に入れておかないとこの先の長旅がきついのでぜひとも手に入れておきたい所。


 4人は乗り物のトンボに乗り家付き飛空艇へとやって来た、前回サキが言った国ごと移動して旅をすることは交流や交易や馴染んでいる土地(と言うか空域)なので移動するのは無理。


 とのことだったがこの小さな飛空艇なら乗り物としては不自由しないと言う事で紹介してくれたらしい。


「どこがうさぎ小屋よ…地下室と2階まであるなんて…ひょっとしてうちんちより広いんじゃないこの家って…」


 最初はサキも驚いたがサキが全然うさぎ小屋の大きさじゃない事で若干愚痴ってしまった、何しろフェイはずっとお城で住んでいたのである。そのフェイから見れば本当に小さいうさぎ小屋でいわば別荘なのである。外に出たことは無くともこういう事なら何でも手に入るお嬢様なのだと再確認した。


「こんな立派なものを本当にもらっていいんですか?」


「いいよ、助けてもらったお礼もしたいし。私のお古だしさ、何より友達が困ってるんだもん、手助けしたいしね!」


 明るく元気に受け答えするフェイ。

(お古……て、まるで古着をあげるようなノリで家をあげるか?……まあ初めての友達だからいいの……か……?)


 素直に嬉しいはずなのだがその軽く家をあげると言うノリに若干違和感を感じるサキであった、とはいえ人の好意は受け取るべきものである。


「そっか…友達出来てうれしかったんだね、ありがたく使わせてもらうよ」


 にっこりと笑みを浮かべてフェイの好意に答える。と、何故かフェイから水滴が眼前から溢れ出す。


「ふえ……よかった……私嫌われるんじゃないかと思って、う……う……」


 サキはきょとんと眼を点にした。


「へ?」


 突然の大粒の涙にびっくりするサキ、どうやらサキが思ってる以上にフェイの涙腺は弱いようだった。


「はははフェイは泣き虫だな~」


 茶化すように言うヒルド、これも笑顔で迎え入れる。一瞬何故そうなったのかわからず呆けるしかなかったがサキ慌てる。


「あああ何で嬉しいと思った時に泣くかな~こういう時どんな反応すればいいかわからないじゃん、とりあえず泣き止んで?ね?」


「うん……うん……うえええええええええぇん!」


(何で逆に大泣きするんですかこの子はー!)


 ガチ泣きである。念願叶って、初めて友達が出来て、自分に出来る事があって、友達の役に立つことが出来た…だから嬉しくて嬉しくて泣いてしまって、友達に心配されることが嬉しくって……だから更に泣いてしまう…。わからなくもない行動ではある。


「助かった、じゃあ今日はここに泊まろう。ずっとフェイの城の中で寝泊まりするわけにもいかないだろう。部屋の中を探検したいって思いもある」


 部屋中を探索していたら一日が終わって日が落ちてしまった。ちなみにEMOの日が落ちる時間は現実世界とほとんど同じなので現実世界でも日が落ちてしまったことを意味する。学校が終わってからの〈放課後〉しか活動出来ないのがネックである。


「ああ……もう暗くなっちゃったか…一旦ご飯とかお風呂入るからログアウトしないと…」


「そうか……じゃあ僕も一旦落ちてメシにするよ」


 プレイヤーである二人には現実世界がある、そちらもおろそかには出来ない。


「地球って所に帰るんだね。あれ?ってことは家はいらなかったのかな?」

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名を上げる。ボカロBGM:最終決戦~ファイナルバトル~
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