第252話「運営会議室と悪役」
違反とは。
法規・協定・契約などにそむくこと。「ルールに違反する」などである。
運営長舞姫【今回、社長から「悪役について議論してて」という大雑把な依頼を承りましたので、急遽開催いたします】
運営A【それはキャラクターについてですか? それともプレイヤーや我々運営についてですか?】
運営長舞姫【社長からは「何でもいいよ」と言付かっております。兎に角、議論を深めるのが目的かと。では始めてください】
運営B【うーむ、色々解釈が取れるな。ルール違反なのか、ルール作りなのか。そもそも悪役だからルール違反をするのが前提と……】
運営C【ルール違反をした時の罰則とかが無いから、こんな議論を深める必要ができたんじゃないのか?】
運営D【B、今回はルールは関係ないぞ。悪役についてだ。プレイヤー・NPC・運営・そして社会的な悪とは何か? て議論をしろってことだ】
運営A【じゃあまぁ、軽く。運営にとっての悪とは何か? て所から議論しようか】
運営B【そりゃあ運営にとって実害が出るのが悪だろうさ。例えば、社外秘情報を外に漏らして。会社に損害を与えた時。これはプレイヤー・NPC・運営、どれにも言える】
運営C【ちょっと嫌な人、ですめば良いが。大損出したら、そりゃあ切るわな。もしくは信用を無くすような行為とか】
運営A【会社のブランドに傷がつく、とか? それじゃあ冒険できないだろ】
運営B【運営が冒険してどうする? 野心的な企画は買うが、こちらは利益第一で動かないと。普通は生きれないし、生き残れない】
運営A【俺はヒット作を出したいんだけどなあ~】
運営長舞姫【では、例え話でも持って来ましょう。簡単な話、1000円でサービスを……この場合レアキャラとしましょう、を提供したいのに。バグやルールの網をすり抜けて、無料で手に入れたとする。これは悪ですか?】
運営A【普通は悪だろ、正規のルートを通ってない】
運営B【でも、そのバグは修正されてなく。沢山情報が広まってて、皆やってるから僕もやる! みたいなのは浅はかだなとは思う】
運営C【俺はエンジョイプレイヤーだから、正規のルートで楽しむのが正しい遊びだと思うぜ】
運営D【普通にアカウントバンでよくね?】
運営A【普通はそうだし、注意や警告を3回から5回やったてもダメだったらダメだろ】
運営B【ちょっと待って! 注意3回でバンはきつくね? 真剣にやって知らなくてルール違反をして、5年分のキャラデータが危うくバンは流石に無いなと思ったぜ? 1年ならともかく、5年で3~5回のミスは普通あるだろ? と、経験者は語る】
運営C【プレイヤーにとっての明確な違反って今のところアレだろ? 弱点を作らないと違反。逆に言うと弱点を作ってないと無敵で悪!】
運営D【いやいきなり悪はおかしいだろ。知らないで悪とかレッドプレイヤー認定されたらたまったもんじゃねえ】
運営長舞姫【……やはり、ルールを作って。その線引きをこえた者を違反とし。そこから更に度を越して違反してると『悪』なのでしょうね……】
運営A【同じ人間でも、状況が違いすぎますからね。NPCに至っては人ですらない】
運営B【万人向けだとそうなりますな】
運営C【プレイヤー・NPC・運営・政治家。この4勢力に3つのルールを提示することを希望します】
運営D【何で3つのルール? 5つのルールじゃダメなの? てか政治家にも提言かい……】
運営C【姫社長が提言できる範囲です。子供が処理できるルールの量。3つだと12個のルール。5つだと20個のルールです。最初は3つにしておいて、必要ならバージョンアップと言う形で5つまで上限解放、……なんてどうでしょう】
運営D【でも結構皆自由だぜ? 出来るのか?】
運営C【できる出来ないじゃなくてあくまでも指標です。これならデジタルでもリアルでも、スキル『審判』が使いやすくなります】
運営A【なるほど、審判が使いやすくなるのは良いな。3つならそこまで深く考えなくても良いし】
運営B【で、これらのルールを度を越して踏みにじってる奴を『悪』と認定するわけか】
運営C【善悪を我々で決めるのは良くないと思いますが。線引きはゲームを作ってる我々に権利はあると思います!】
運営A【運営長、ルールは我々が決めて良いのですか?】
運営長舞姫【では草案を作ってください。それで上と相談します、たぶん軽く通るでしょう。最初ですし】
運営B【よし、じゃあやるか。ファンタジアリアリティ・オンラインの法律も踏まえて】
運営C【だな】
◆
運営長舞姫【じゃあ実例をあげて議論しましょう。外せないのはアレですね。NPCの人権について】
運営A【もっと正直に言うと。NPCに悪い行いや殺害・再生ができなくて、勃発したアレね】
運営B【第一次姉妹喧嘩ですか……、確かにリアルでも被害者が出たわけですし。線引きは必要ですね】
運営C【これってアレですよね? 無自覚なNPCが死にまくるのが問題になったんですよね? だったら、同意書か何かを作って。同意してるから犯罪・死亡・出産を容認するというのは?】
運営D【冠婚葬祭ですね……。】
運営A【じゃあ3つ目は?】
運営B【違反した場合だろうなあ、この場合はゲーム内で犯罪を犯したNPCの肉体や魂をどうするか……】
運営C【うへえ、死刑だけじゃ飽き足らず。魂までデリートさせちゃうのか!】
運営B【させないための会議だろうに! それが出来ちゃうから困ってるんだろ!】
運営長舞姫【死や魂の消滅は避けられません、ましてやデータ。バックアップが無ければ消えてしまいます。ここは輪廻転生の概念が存在する世界だと保証するのが筋でしょう】
運営A【保証、ですか……】
運営B【NPCの輪廻転生システムのバックアップを運営は保証する。とかだろ】
運営C【それしか手は無いか……】
運営A【運営ってさ、何か物語だと犯罪を起こす悪者ゲームマスターってイメージあるよな】
運営B【あるな】
運営C【あるね】
運営D【てことは、実例には困らないってことか】
運営A【嫌な実例だな……】
運営B【デスゲーム、変態、人工知能……う! 頭が!】
運営C【嫌な事件だったね】
運営A【じゃあもう「人殺しは犯罪です!」「変態は犯罪です!」「人権無視は犯罪です!」でよくね?】
運営B【後追いしないためにですか? 起こってからルール作るものアレですけど……】
運営C【そうやって歴史は積み重なるのですよ】
運営長舞姫【あまりにも酷い草案ですが、道徳的に解ってないプレイヤーや運営も居ますので。そのあたりは明確に明記しておきましょう】
運営A【政治家のルールっている?】
運営B【俺達運営の金の流れ的にいる】
運営C【これ、俺達で決めて良いの?】
運営長舞姫【こればっかりは当事者に聞きましょう、呼びます】
社長姫【ほい】
大統領サーガ【ほいほい】
運営A【すげえ】
運営B【ひでえ】
社長姫【あーで、政治家のルールだっけ? 真面目に話すと。アメリカ・中国・ロシア・アフガニスタンやら、仕舞にはキリスト教や法王まで出て来る始末でどうにも手に負えん、という話じゃ】
運営A【規模が】
運営B【でけえ】
大統領サーガ【それでルールか、我々に何をして欲しいんだい?】
社長姫【う~ん、干渉するなってのも無理な話だし。干渉するなら自国の法律で動いてくれって事かな、あとは知らん】
大統領サーガ【『干渉する各国政治家は、自国の法律のもと動くように』ということか】
社長姫【そゆこと。まあ指揮者はわしが取るが】
大統領サーガ【『指揮者を元に、カルテットを基本として動いてくれ』とかかい?】
社長姫【そうだな、そのほうが動きやすい】
大統領サーガ【最後に、お金の問題か。】
社長姫【そうだな『あらゆる事象は、仕事の給料か家庭の食事で完結させること』がこちらの要望だ。お金と食事あっての生活だからな】
大統領サーガ【なるほど、了解した】
運営A【真面目に】
運営B【仕事してる】
運営長舞姫【以上で本会議は終了します、皆さまお疲れさまでした】
◆
四勢力の法
プレイヤーのルール
1:心が強いほうが勝つ。これは揺らがない。
2:争いは、2人以上の対戦ゲームで解決しなければならない。
3:弱点は必ず存在する、弱点の無い存在は違法である。
ノンプレイヤーキャラクターのルール
1:NPCにも人権は存在する。
2:NPCは同意書に同意した場合、冠婚葬祭の人権を得ることが出来る。
3:NPCの輪廻転生システムのバックアップを運営は保証する。
運営のルール
1:人殺しは犯罪です。
2:変態は犯罪です。
3:人権無視は犯罪です。
政治家のルール
1:指揮者を元に、四重奏を基本として動くこと。
2:干渉する各国政治家は、自国の法律のもと動くこと。
3:あらゆる事象は、仕事の給料か家庭の食事で完結させること。




