表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第11章「浮遊城の夢」西暦2035年4月24日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

280/789

第244話「地ならしとスズの話」

 現実世界。西暦2035年4月26日、放課後。

 ハイファンタジー・オンライン『A1エリア』、運営管理会社神道社ネット支部。位置的にはA1エリアの東部にあたる。


 ゲームマスターヒメとギルド受付嬢湘南桃花は、何もない。真っ白なトランプを並べていた。絵も何もない状態で、形だけの意味のないババ抜きを。

 桃花が言う。

「あー、そっか第3層は【平成最後の大乱闘】の歴史があるわけだ」

 ヒメが言う。

「そゆこと。狼に鷲、白と黒、エルフにゴーレム。あと森と温泉。そんな感じで構成されているエリアじゃ、今は」

「スズちゃんの関係だから私が呼ばれたと……」

「スズちゃんは被害者だからなあ~。お前はその時の保護者、だから第3層のステージ構成をどうしよっかなーと相談に呼んだ訳だ」

「テレビで見たけど……、大統領がここ数日が勝負だって言ってるから、なんかあるんでしょうね~……原因は解んないけど」

「で、このルート。なぞるか、それるか、飛ぶか、潜るか。……どうする?」

 トランプを握る手が止まる。

「う~ん……むむむ」

 考えて考える。

「ここをしっかり掃除すれば、綺麗に【令和最初の大乱闘】に持っていけるのよね? どうせこの感じだと、10日以内に終わるでしょ? 第3層」

「私の想像は適当だからどうでも良いけど。【皆の布陣】を観る限りそうみえる……」

「第3層と、概念系の第3階層って別物でしょ? ……誤字じゃん……」

「いや、わかってるけど。皆それで今まで動いちゃってるし……」

「ふーむなるほどねー」

「確か、決着がついた後。東西南北から【電車型の山羊を一頭】倒す。……で終わったわよね?」

「うぬ」

「ふむ。じゃあ自動車か電車か飛行機か選んで、姫っち」

「え?」

「えじゃないわよ、あんたのゲームでしょ?」

「えっと……、で。電車かな~」

「じゃあ第3層は『電車スタンプラリーゲーム』で良いと思います」

「……エルフどこいった?」

「乗せれば良いじゃない。電車に」

「お、おう……」

「んじゃ、あとはあんたの仕事でしょ? ルール作り頑張んなさいゲームマスター」

「なんか釈然としないが……、わかった。相談にのってくれてありがとう……」

「ファイト♪」

 少し苦笑しながら返事をするヒメ。

「お、おうなのじゃ!」

 こうして、第3層のマスター承認試験の大本は決まった。



 現実世界。西暦2035年4月26日、放課後。

 ハイファンタジー・オンライン『A1エリア』、西区プレイヤー街。


 スズは戦空を呼び出した。

「どうした」

「……、話がある。じゃないか、話を聞いてて」

 直感と本能で察する戦空。

「また悲劇のヒロインか?」

「違う」

 ここで風が来る。

「【私の話をするの】」

 単的に短く、短すぎて主語が無かった。

「……、あんたは関係ないし関わってないから。本当は喧嘩したいし反発も起こった方が劇的なんでしょうけど……」

 戦空は無言で聞く、聞く専門に徹した。むしろそれしか彼に選択肢はなかった。

「ノーリアクションを貫いてて。これが私なりのマスター承認試験よ」

「……わかった、でも始める前に言わせてくれ」

「……なに?」


「うちは助けない。お前が勝手に乗り越えろ」


「!……、言われるまでも無いわ」

「……。」

「じゃあ始めるわよ」

「あぁ」

 冷たい風が来た。

「……私の中の私なのか。私以外の私なのかは知らないけれど、ピンクや赤や青、偽物にはちゃんと彼女たちの人生があった」

「……」

「でも、不思議な事に。そいつら全員、他の人と恋をした。私だけが、お前とは1%ぐらいしか恋愛対象にならなかった」

「……」

「それは私が、お前のことを……いや、勝つためとかライバルとか、喧嘩対象とかじゃなくて。ただ等しく平等に、お前は平等にただの子供のように。殴った、殴られた。それだけよ」

「……」

「やがて世間を知り。それは女性に対して失礼だとか。男じゃないとか、そんな世間体を学んでいった。そう、そんなことは知らないのよ。そんな常識……子供には」

「……」

「でも、今の私達は中学生。小学生じゃない、思春期に入り。体の構造が変わり、世間一般常識が身につく。だからもうあの頃のようにはいかない……。それが【普通の理詰め】、さだめかしら?」

「……」

「その後、外の世界を知り。鈴がどうとかリスクが危険とか石油とか、平和とか不可逆的だとか。理屈をこねた世界が広がってた。それが、世界を見たわたしの眼。ま、鏡は相変わらず私しか映さなかったけど」

「……」

「そうして帰って来た私は。……そうね、憧れていたころの私を着飾ってた。認識した私の想像を超えていた。だからそこには【背伸びした私しかいなくなってた】」

「……」

「等身大の私がいない……それが今の私なのよ」

「……」

「お前に話さなければ、そのことすらわからなかった」

「……」

「戦空」

「……」


「ごめん、……そして。ありがとう」


「……」

 冷たい風がやんだ。

「もう話していいわよ」

「お、そうか。ふーん……色々あったんだな」

「うん、だから。改めて言わせて」

「うん?」

「【ひさしぶり】」

「……うん。おお、そうだなひさしぶりだな」

「……あーあ。齟齬とか時差とか空間の差異でわけわかんなかったけど、やっと戦空に会えた気がする」

「そっかー。……言葉って難しいんだな」

「戦空もちょっとは言葉を選べ、1ミリぐらい成長しろ」

「うん。そうする」

「無心・反射・直感じゃ。あんたの感想とか聞けないんだもん」

「感想言っていいか?」

「どうぞ」


「弱い」


「……、だから直感で言うなって。わかってるわ……」

 その時、風がまた来た。


「でも何だろうな。あったかい」


「……。そっか、あったかいか。うん、悪くない返事だわね。こういうのなんだっけ? 下げて上げる?」

「知らん、そう思っただけだ」

「ふ~ん、そう言うことにしておくわ。で、試験の結果は~……」

「お」

「99点」

「……? 残り1点は?」


「秘密」


「……うん、わかった」

「へへっ」

「以上で、私からの試験は合格です。お疲れさまでした」

「過去最高に楽だった気がする」

「そりゃどうも」


 太陽の光が照らされる。二人は、互いの齟齬を温め合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
・よければブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします!
・こちらも観ていって下さるとありがたいです。
名を上げる。ボカロBGM:最終決戦~ファイナルバトル~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ