第237話「攻略本と等価交換」
湘南桃花がヤエザキを止める。
「おっとヤエザキちゃんちょっと待って! マップはまだだけど情報は手に入ったわ!」
「え、もうですか? ……その情報っていくらになります?」
「ん? タダでいいわよ?」
「そんなわけにはいきません。せめてお金や武器と物々交換しないと、桃花さんの価値が落ちます。私はそこまでバカじゃないです」
「おっとそう来たか……。う~んでもヤエザキっちって最近いらない武器とか合成したわよね? てことは余分な装備は無いし……。そのキューブだって売り物じゃなさそうだし……」
『そうだな』
値段なんて私達の仲じゃいらないのに、とは思ったが。今後の信用問題に関わることを察した桃花は、ヤエザキの持っているモノから対価を探す……。
「あーじゃあアレちょうだいよ。〈雷速鼠動2〉。むしろそれしかいらないかな」
「え、……でもちょっとコレを手放すのはちょっと……」
流石に気にいっている上に上等な品を注文してきた桃花受付嬢。
「あー情報だけじゃ釣り合ってないか……。じゃあ先払いで『エリアマップ』付きとかどう?」
どうやら価値的に、『10層分のマップ情報』<『雷速鼠動2』らしいことは解ってきた。
「それでもちょっときついですね。だって元々。スキル、超反応+ハイ・ジャンプ+雷速鼠動ですから。単純にスキル3個分です、今後の利便性でも一番勝負で逆転性能が高いスキルですし……」
「まさか私の方が天秤に品を足さなきゃいけないとわ……、物々交換で〈雷速鼠動2〉と釣り合うものねぇ~……」
銀・竜尾・審判・断罪とか頭の中によぎって来たが。ヤエザキは〈環る審判〉とか持ってるし釣り合ってない。
「困ったなあ~……」
「私も困りましたねぇ~……」
無料は相手に失礼、でも値段を付けると釣り合ってない。
「かといって『10層分』以上のマップ情報をそうホイホイ出せないし。でも〈鼠〉欲しいなあ~」
「と言われましても……」
「逆に聞くけど。ヤエザキちゃんは私から欲しいもの何かある?」
「たぶんいっぱいあると思うんですけど……。でも鼠動と対等の価値ですか~……」
手元に無防備に置いてあるマップ情報をサラッと読むヤエザキ……。
「さらっと情報読んじゃいましたけど……。もしかして、桃花さんって第50層ってクリアしてますよね?」
湘南桃花は「え?」とキョトンとする。
「まぁ、確かにあそこは『愛がなければクリアできない』所だから。正々堂々とクリアしましたけど……」
「てことは! 『第50層無条件通過チケット』とか売ってくれませんか! それなら! 第50層をさっさと通過出来ます!」
「お前まだ第1層だろ!?」 とか考えたが、確かにそういうチケットなら色々と使い道がありそうだ。むしろ湘南桃花が売れるモノと言ったらそれぐらいしかない。
「『第50層無条件通過チケット1枚』+『10層分のマップ情報』と『雷速鼠動2』の等価交換?」
「い……1枚ですか?」
「……足らないの?」
「他の人と交換とか、実際に使う時とか。もしもの時の顔パスとかに使えそうなんですけど。いわゆる1つの権力」
「権力ねぇ~……」
今までのヤエザキの苦労と労力、日の目の出なささを考えると。桃花はヤエザキに「ごめんなさい」と言わないといけない立場にある。かといって無限と言うわけにもいかず。そのことを考えると……。
「じゃあ13枚」
「なぜ13枚です……?」
「仮に、某13機関っぽい人達に目を付けられて。見逃してくれる回数、てなったら13個必要かなって思ったから。これなら、多くもないし少なくも無いかなって。または、『見つめる眼が13個分』と思えばいい」
「な、なるほど。それなら突破できますね……」
「これなら納得してくれる?」
「はい、それなら〈雷速鼠動2〉も渡せます」
こうして。
『第50層無条件通過チケット13枚』プラス『10層分のマップ情報』と、『〈雷速鼠動2〉』の等価交換の交渉が成立した。
「んじゃ、マップ情報は後でメールで渡すから。気長にプレイヤー街でも散策してて~」
「はーい!」
元気のいい声で店を出た。
◆情報の内容◆
【第10層/確定/格闘ゲーム】
1:1人VS1人のPVP戦。勝った方がフロアボスへ行ける。
2:フロアボスへは簡単に行けるが、ボスへの情報はロックされ。口頭でもチャットログでも■■■■される。
3:NPCもプレイヤーも嘘の情報を流すことでボーナスポイントが追加され、有利になる。
4:フロアボスは自身の実力の1ランク格上に設定されている、らしい。
5:フロアボスエリアは学校の体育館ほどしかない。
【第20層/確定/スポーツゲーム】
1:だいたいサッカーゲーム。
2:11人VS11人で1勝したチームがフロアボスへ挑める。
3:フィールドエリアはサッカーコートほどしかない。
4:試合中。装備・スキル・アイテムの内、1つしか装着設定できない。
5:サッカーボールを使う。
【第30層/確定/ウォーゲーム】
1:厳密に戦争にルールはない、勝つか負けるか。
2:チームの人数・チーム数に上限はない、勝つか負けるか。
3:チームは勝利宣言や敗北宣言をするまで終わらない。
4:フィールドエリアは日本国ほどに広い。
5:敗者は勝者に装備品・スキル・アイテムなど、ほぼ全てを奪われる。
【第40層/確定/ジャンケンゲーム】
1:最初にグー・チョキ・パーの勢力になる。
2:モンスターにもグー・チョキ・パーの相性があり。相性が悪いと無敵状態で倒せない。
3:フロアボスの属性はグー。
4:東京都ほどの広さのエリアを有する。
5:制限時間は現実世界で6時間であり、それをオーバーすると。第40層のスタート地点からやり直しになる。
【第50層/調査中/恋愛ゲーム】
1:最強の自在法『愛』を高めるほど強くなれるという、特殊なパラメーターがある。
2:奇跡は奇跡に還る。自由な風は何ものにも縛られない。
3:愛情は愛情に還る。情熱の火は帰る場所を守り通す。
4:自然は自然に還る。偶然と必然はただあるべき流れへ。
5:心なき言論を禁ず
【第60層/調査中/人生ゲーム】
1:賭けるものは人生という駒であり、現実世界の人生を賭けるわけではない。
2:死んだら転生するらしいが、上手く扱ったものは居ない。
3:最終的に幸福度が高い人生を送れたものが勝者となり、フロアボスへ行ける。
4:高性能AIが出現し、人間のそれと変わらない思考・感情・魂で出現する。
5:ゲーム進行中にルールが変わる。
【第70層/調査中/大航海ゲーム】
1:フィールドが地球と全く同じなほど、広大に設計されている。
2:その世界から宝箱を一つ見つける。
3:鍵も地図もコンパスも別にある。
4:太陽の流転は変わらず、同じ軌道を動く。つまり時間は測れる。
5:大陸が動く。
【第80層/調査中/ボスラッシュ】
1:1層から79層までのフロアボスがワラワラ出て来る。
2:敵が出てきたら倒すだけ。だが強い。
3:第80層のフロアボスは誰も発見できていない。
4:最前線組が調査中であり、これ以上の情報はない。
5:第80層の情報は高額で取引されている。
【第90層】
不明
【第100層】
不明




