第26話「フェイ・エメラルド」
エンペラー【どの世界線でもフェイは死ぬと言う事ですか…】
あんず【あんた誰?】
サキ【ああ……皆と別れた後に知り合ったのエンペラー君っていうんだ、一緒にギルド放課後クラブを立ち上げたの】
ダリウス【ほう……ではもう一人ではないと】
フー【一人は……寂しいもんね…ブルブル】
双矢【エンペラーってあのエンペラーか、クリスタルウォーズで有名な】
文美【知ってるの?】
エンペラー【いやあ僕なんてまだまだ】
双矢【ちょっと小耳にはさんだ程度だけどな】
エンペラー【改めまして放課後クラブのエンペラーです、以後お見知りおきを】
マリー【あらなんてお行儀のいい! あんずと違って! そうあんずと違って!】
あんず【なんでそこ強調するのよのほほんバカマリー!】
戦空【喧嘩か!? 喧嘩ならうちも参加するぞ!】
夜鈴【こら! 火に油を注ぐな、それに喧嘩は喧嘩でもここはチャットよ、あんた口喧嘩でもするの? 苦手なのに?】
戦空【なにい!? うちだって口喧嘩ぐらい出来るぞ夜鈴のバーカ! バーカ!】
夜鈴【バカって言う方がバカなんですー! バーカバーカ!!】
戦空【バカって言ってるじゃねーかよー! バーカバーカ!!】
マリー【リアル小学生が小学生みたいなこと言ってる…】
あんず【マリー、あんたそこは冷静に受け流すのね、少しは大人になったわね】
双矢【俺から見ると4人ともガキだ】
サキ【あーそれで何の話でしたっけ、フェイちゃんが死んじゃうって話でしたよね、かなり物騒な話なのにゲームだからその感覚が緩んじゃいますけど】
文美【まー私たちはフェイちゃんを死なせないためにはどうすればいいかって話をしようとしてるんだしね】
エンペラー【もう少し様子を見ましょう、こっちの世界ではケンチャも出てきていません、死んだ理由も全く掴めない、とにかく情報不足です】
双矢【……だな、じゃあ有力な情報があったら教えてくれ、ゲームをクリアしたって情報でも可能だ、皆、健闘を祈る】
サキ【うん!】
エンペラー【わかりました】
戦空【わかったー】
夜鈴【了解しました】
文美【はい】
マリー【あいあいさー】
アレキサンダー【私は乙女にしか教えたくないぞ!】
ミュウ【うぬ】
あんず【ふん】
ダリウス【かしこまりました】
フー【うー!】
皆全員「おー」とか言えばいいものをここぞとばかりに全員個性を主張する、これだけ大勢いると話をまとめるのも大変だがそこはリーダーシップを発揮した双矢が場を収めた。
かくして、フェイが何故死んだのか?という情報収集を放課後クラブ、四重奏、ルネサンス、仮面舞踏会の4グループに分かれて世界線すら超えて始めるのだった。
双矢【あ、言い忘れたがフェイはどの世界線でも必ず死ぬと言う事は言い換えればどの選択肢を取ってもフェイは必ず死ぬと言う事だ、全員くれぐれも気をつけろよ】
これでチャットは終了した。
◆
神聖歴は神エデンが生まれたとされる年の翌年を元年(紀元)とした紀年法である。神聖歴1485年雲の王国ピュリアで一人の少女が生まれた。少女は王家の家系で生まれ、すくすくと育っていった。神聖歴1490年、5歳、少女は疑問に思った、外の世界はあんなに綺麗なのに自分の足で行きたいと思った。そして当時女王であり母親であるリムにこう告げられた。
「だめよ、15歳になるまで外にでてはいけません」
その言葉は子供のフェイにはあまり理解は出来なかった、しかし母の言う事に今まで従ってきたフェイはそうすることしか出来なかった。
「うーわかったー」
少女は思った。
「速く15歳に、ならないかな~」
そして10年後、神聖歴1500年。箱入り娘の少女の名前はフェイ・エメラルド、彼女が事件の中心人物になることなど、当時、神であるエデンの神も、その更に上のEMO制作会社である運営も、だれも予想だにしていなかった。
私はフェイ、ひょんなことからお城の外の世界に出る事が出来ました。ですがお外には知らないことが一杯、一般教養で空を飛ぶことが出来る乗り物「トンボ」に乗る術とかは教えてもらっていたけれど王宮では見知った人たちと会話をするだけ、知らない人たちと会話をすることはありませんでした。会ったことも無い人たちのために社交ダンスを踊ったり会ったこのも無いのに外の世界の勉強を一人でする毎日、正直飽き飽きしていました、勉強や身の周りの世話をする人たちは執事長やケンチャ、それに家政婦の人たちばかりでした。目上の人たちばかりで同年代の人たちはほとんどいませんした、なのでほとんど敬語ばかりを使って育ってきました。
そんな中、ケンチャとケンチャの手下達が暴動を起こしました。どうやら事態は王宮の中だけにとどまっているようで、王宮の外、ピュリアの街中はいつも通りの賑わいでした、あ、いつも通りの賑わいだと知ってるのは普段からお城から外を見て米粒ぐらいの大きさの村人達を眺めていたからです。ケンチャははもう居ない、だからあとはその残党、その残党さえ何とかできればこの国は再び平和になる。
◆
「と言う事なの」
一連の話を聞いたサキとエンペラーは事の深刻さを再確認した。
「と言う事はこうしちゃいられないわね、一刻も早く王国を取り戻さないと、フェイちゃんの父親と母親は捕まってるんでしょ?」
「そうだな、そうしてほうがいい、悪い芽は早めに摘んでおかないと」
フェイは安心した、勇気を出して知らない人に話してよかったと思った。
「よかった話を信じてくれる人がいて、じゃあヒルド王宮へ行きましょう」
半ば心配で涙目になりながらフェイはヒルドに言う。
「おう」
こうして4人は王宮を目指した。
「ぐわあ」
王様はケンチャの部下らしき雑魚兵に蹴られる、どうやら縄で身動きが取れないようだった。
「くそうどうなったんだよ! ケンチャはどうした!」
「それが応答がありません」
ケンチャの部下らしき人物はケンチャが居ず、この先どうすればいいのかわからない模様。
「畜生、ケンチャが王国を乗っ取るって言うからそのおこぼれにあやかろうと思ったのによう。これじゃあ俺が主犯格じゃねえか!」
どに怒りをぶつければいいのかわからず暴走するケンチャの部下、とその時。
「お父さんお母さん助けに来たよ!」
フェイとその仲間達、サキにエンペラーにヒルドが王宮まで入って来た、典型的な戦闘戦である、RPGだと基本的に全ての戦闘を全部勝利すれば全クリ出来るのだが、果たしてこの場合どうなるのだろうか。ケンチャの部下は。
「な! フェイ王女! 畜生ケンチャはどうなったんだ!」
「ケンチャなら星の彼方に飛んでったわよ! おとなしくお父様を返しなさい」