第224話「四重奏VS放課後クラブ5」
北陣形側:スズ&レイシャVSヤエザキ【飛竜】&オーバーリミッツ&農林水サン&ナナナ・カルメル【ロボット】
南陣形側:ブロードVS不動武&ミチビキ【空母】
体制を立て直そうと陣形をバランスよくする方法を考えていたヤエザキ、が。その労力も虚しく。
「ザコがまだ残ってるわね、掃除しましょう。〈斬月〉!」
キィン……! ――――、一閃。
鉄すら斬る斬鉄剣を思わせる居合切りで。カルメルとミチビキの機械は機能を停止させる。否、真っ二つだった。
あっっっっと言う間に終わってしまった。
「のわー! お姉ちゃんひどいー!?」
「ウソだろー!? 他ゲームのランキング1位のこの俺がー!?」
《ナナナ・カルメル戦闘不能、退場します》
《ミチビキ戦闘不能、退場します》
実況のジャンプと解説の桃花は自然な対応をとる。
『あーっとナナナ選手とミチビキ選手がスズ選手の居合斬りで瞬殺です! しかもあっさり!』
『本当に見せ場が無かったですね。今試合の〈残念で賞〉は彼ら二人が持っていくでしょう』
『ナナナ・カルメル選手に至っては、スズ選手の弟君にあたります! 全くためらいも無く切り捨てましたね!』
『情の欠片も、容赦もありませんでしたね。こんな姉を持ったら私は反抗期になりそうです』
『ミチビキ選手も他のゲームでランキング「1位だぜ!」 と言った以外全く見せ場がありませんでした!』
『イヤ、放課後クラブの新入生には荷が重すぎるステージでしょう。戦場にアリが一匹、運よく入って来てしまった感じですね。運が悪かったともいう』
『誰だってこの闘技場ではお荷物でしょう! 相手が悪すぎる! 四重奏を相手には、戦艦持ってくる気持ちでないと!!』
『隠し玉のロマン砲も見る影もありませんでした』
『いや本当! 相手が悪かったとしか言いようがない!!』
『ロボットも空母も鉄なんですけどねぇ、何で木刀で斬っちゃうかなぁ?』
『もやは強すぎて! 誰もツッコまなかった所をツッコムううううう――!!』
『とまあ、出番が無さ過ぎて実況と解説が保管しなければ。その残念感も知られなかったというね』
『それ言っちゃダメー!!!!』
オーバークォーツァーの農林水サンは神威の解除を相方に言う。
「リミッツ、コレ解除しよう。火力は高いが今は手数がいる!」
オーバークォーツァーのオーバーリミッツはコクリと軽く頷く。冷静に分析しての回答だろう。
「わかった」
《オーバークォーツァー・レベル2は解除されました》
まわりの戦況を見渡して、不動武が右手を上げる……。本物のSランク1位が次に何をするか注目が集まる。
何か仕掛けてくる? と身構える四重奏の3人組だったが、そこから意外な言葉が発せられる。
「棄権する」
実況のジャンプと解説の桃花は、何故?と疑問文が浮かぶ。
『は!? 何故、現・最強の不動武が棄権する!? 桃花ちゃん解るかい!?』
『いえ、解りません。そもそもさっき2人脱落したのに、棄権? 仲間を見捨てる行為です。もしくはもう放課後クラブの負けは見えたということなのでしょうか?』
観客席がザワついているこの状況で、退場するのもあんまりだと思われるので。ちゃんと理由を説明する。
「僕が最強だと思っているのはリスクだ、そのリスクが居なくなった以上。四重奏の負けは確定。僕が戦わなくても放課後クラブが勝つ算段がついたので。戦っても意味がないので僕は棄権する」
実況のジャンプと解説の桃花は、驚きの表情が浮かぶ。
『え!?』
『放課後クラブの勝ち確定!?』
『でました! 世界1位の勝ち確定宣言もらいました!!』
『劣勢になってるのに、勝ち筋が読めたということでしょうか? 未来予知か未来予測かな!?』
ジャンプと桃花は交互に顔を見合わせる。
『そもそも、最果ての軍勢と放課後クラブは接点がありません。あくまでレンタル、義理も人情もありません!』
『勝ちが確定した試合に、これ以上付き合う義理は無いと?』
『仲間としての絆が深まっていれば! こんなことにはならなかったかもしれねえぜ!』
『つまり…… ▼レベルが高すぎていうことをきかない。 系かな?』
『レベルが高すぎて昼寝どころか棄権しちまったぜ!』
そして、不動武は。自分の役目はここまでだと、スタスタと歩いて闘技場をあとにする、後ろ姿だけとなった。
こうして、中央陣形に四重奏と放課後クラブが集まる。男1:女5:竜男1の男女比だが、そんなこと言ってられない。
《不動武 棄権、退場します》
中央陣形:ブロード&スズ&レイシャVSヤエザキ【飛竜】&オーバーリミッツ&農林水サン
普通に視れば平等な人数配置だが、実力差は放課後クラブの二倍ほど四重奏が勝っている。と、観客は思っているが。不動武は「もう勝った」と宣言して去った。会場がどよめきと狂乱と歓声の中、クライマックスが産声を上げる。
――宴もたけなわ、決着の時が近い。




