第216話「受付嬢湘南桃花2」
《ハイファンタジー・オンラインの世界へようこそ》
「あ、すまぬ。チュートリアルはまたあとでやるからスキップな」
《……かしこまりました、ゲームマスター》
天上院姫/農林水サンは、四重奏の登場の方に舵を切った事により。風向きと周りの変化を敏感に感じ取った。
よって、【階梯】を1段上げて話をする。【あっちとこっち】の板挟みにあっている受付嬢・湘南桃花と同じ目線で会話をする。
なので、支離滅裂になり。読者を置いてきぼりに可能性があるがそこは我慢してほしい。大事な話なのだ。
大事な大事な話なのだ。
「受付嬢になったのは良いが、お主はいつになったら【あっち】の道を歩くのじゃ?」
「……落ち着くまで」
ふてくされる様に桃花は言う、まるで大事な遊び道具を止めて本を読みましょうと言われる子供のそれだった。
「詳しくは解らんが半分は確実にワシは【解ってる】。せっかくハッピーエンドの道が用意されとるのにどうして行かないんじゃ?」
「だって……冒険の途中だし……、結末知ってるし……いや、過程は大事なのは解ってるよ」
「デジタル小説を読むクセは【頑張って】ついたのに……肝心かなめのアナログ小説は、ほぼ読む気ゼロ。【待つものも、来るものも】だいたい知ってるのに何を迷う必要がある?」
つまるところ、単刀直入に言うと。小説執筆をいったん止めて・休んで。小説を・本を読んで欲しいのだ。そうすることで過去の清算は終わり、未来を作り出す旅へ行ける。だが……。
「文量が多いい」
「短い文脈もあったじゃないかぁ~」
「そっちは本命じゃない」
湘南桃花の嘘・偽りのない本音だった。
「読むと太る」
単的な短すぎる言葉で意味不明になる。ので農林水サンが翻訳する。
「読むときに、ポテトチップス食べる上に。文量もとい、単行本数が多いから結果的に太る。じゃろ」
「……、……」
「ていうか。お前の場合、キスしてセ〇クスして赤ちゃんできて幸せの絶頂のハッピーエンドになるのが最高に恥ずかしいんだろ!」
「言うなや恥ずかしい!!」
「そっちに舵を切らないから私が言うしかないんだろ! 神様の代行体でもない本体の私が! 四重奏の話題出して風向きが変わって確信したわ。皆解ってるんだよすっとぼけるなや!」
「別にみて見ぬふりはしてないじゃない!」
「だったら! 1日1回はアナログの本を手に取れ! マジで何も進まないぞ! この際、盛大に太っても良いから……」
「そこは重要な問題でしょ!?」
「別に多少太ったところで死なねーだろ!? 清掃したところで死なねーだろ!? こちとら人生賭けたゲームしとるんじゃ! むしろもっと太れ!!」
「オンどりゃ解ってて言うか!?」
「アダルトショップの店員を1ヶ月でクビになった事を10年も引きずって未だに立ち直れない世界線のお前が悪いね! どう見てもお前が悪い!」
「おま!?」
この際だからちゃんと言う。
「罰としてもっと太れ、これはお前が制裁しなきゃならん罪だ。間接的にじゃない、お前の直接的な【罪】だ」
「むう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
情熱的に言ってしまったので、冷静的に言う。
「別にもう一度土下座しろとは言ってないからさあ、頼むよォ……。マジで何も進まねえよォ……次に進まねえよォ……」
この世のゲームマスター、神様の方が音を上げていた。ハッピーエンドを用意してくれたのにその道に進んでくれない人間に対して音を上げていた。
「……、解った。1日1回アナログの単行本を手に取る。ね……わかった」
「ほんと……、ホントに頼んだぞ~~~~」
そう言って、クエストもイベントも頼まずに。【本題】だけ済ませて、ドアを閉めた。
◆
農林水サンと入れ替わるように【室内から】オーバーリミッツが、今度は湘南桃花ののほうに寄り添う。
「神様は行っちゃった?」
「うん、あいつはあいつの道を行ったよ。ここにはあたしとあんただけ」
ちょっとした沈黙が訪れる。
「この今も一緒に歩いてるのは、もちろんわかってる。好きで好きで好きなのも変わらない。でも、愛っていうのは……ちょっと盲目的に言いすぎちゃったかなとは反省してる」
「それでも、確かな証がちゃんと今も残ってる」
その絵空ごとは決して嘘はつかない、純粋なあの時の想いや願いは。色あせていない。
深い深呼吸と共に。心を落ち着かせる。
「ヤエザキの所に行くのはイヤなの?」
「イヤじゃないけど、桃花と離れるのはイヤ」
ずっと一緒に居たいと思うのは、誰の心なのか。桃花にはわからない。
「じゃあ観客席で見守ってる。あとは好きにしていいよ」
「うん、わかった。そうする」
そういうわけで、オーバーリミッツのレンタルの件は了承された。




