第212話「タイムアップと2年生編」
03秒……
02秒……
01秒……
ピー! タイムアップです! 皆様お疲れさまでした。
集計結果を発表しますのでしばらくお待ちを!
「ぬ、これからだって所だったのに」
やっぱりお姉ちゃんがログアウトしたタイミングが一番妥当だったということか。と、感心するヤエザキ。この中途半端な決着は前にも経験したことのあるような?
とはいえ最低限の目的は達成出来たのだから良しとしよう。
『終わっちゃったねー、まあ私達はいつでも会えるから。また今度ね~』
と言うアナザーヤエザキ。なんか普通にフレンドリーだ、道を踏み外さなければお友達になれたんだろうなと。そう思った。
と、言うわけで集計結果だ。
◆
・西暦2034年11月20日16時00分。
・エレメンタルマスター・オンライン。Ver.1.9.2。イベント名『ザ・エンドオブ・アリスストーリー』
・ランキングの基準はゲームへの貢献度で決まる。
Sランクギルド
1位『最果ての軍勢』
2位『四重奏』
3位『壁を破壊するもの(デストロイヤー)』
4位『脳筋漢ズ』
Aランクギルド
1位『九賢者魔団』
2位『非理法権天』
3位『放課後クラブ』
4位『カイガイ』
Bランクギルド
1位『紅の夜総団』
2位『エンタメ部』
3位『地図化到達し隊』
4位『人間ゲーム同盟』
5位『日没の黄蝶教団』
Cランクギルド
1位『ルネサンス』
2位『ドラゴン・スピード』
Dランクギルド
1位『仮面舞踏会』
2位『達観者達』
◆
ヤエザキは唖然とした。めっちゃびっくりした。
「げ! 私のギルド、Aランク3位……!? めっちゃ上がってるやんけ……!」
エンジョイ勢がこの順位なんてどうしたものかと思うヤエザキ。
「ま……いっか」
そんな、あれよあれよと言う内に。その後大きなアクシデントも無く。
11月が終わり。12月も終わり。3月も終わり。新学期、4月になっていた。
2年生編の始まりである。
◆◆◆
VRゲーム『ブルーマウンテン・オンライン』、蒼い山脈が悠々と果てのどこまでも広がるこの世界で。
俺は今、最強の仲間たちと共に。最強の勇者となりてラスボスを討たんとしていた。
「これで……! 最後だぁ――ッス! 『超次元螺旋斬』!!!」
「そんな! そんなバカナ! ……うわぁあああああああああああああああああああああああああああ――――!」
――――瞬間――――爆裂――――。
そして、終わった……。
こうして、激闘の終幕と共にエンディングを迎えた俺達。
Sランクギルド『黄泉還りへ導くもの』は、盛大な宴会の末、ギルドは解散となった。
主人公の名前は『ミチビキ』、導きと読む。皆を導くという立派な名だ。二つ名は単的に短く『勇者』、だから彼の名を皆は『勇者ミチビキ』と呼ぶようになった。
「ミチビキはどこへ行くの?」
「ん? 俺はもう前衛職を極めちまったッスからな。データオールリセットして、後衛職でも遊んでみるッスよ」
だから解散なのだ。ガチ勢であることをやめたミチビキと足並みをそろえることは出来ない。それにもうすぐ新学期だ。
ミチビキは小学6年生だったが、もうすぐ中学1年生になる。
心機一転にはちょうどいい時期だ。まあ、つまりはそういうことだ。
◆
現実世界。西暦2035年04月15日15時00分。
学校、学校の廊下のチラシを観るミチビキ。
「求む! エンジョイ勢! VRゲーム部? 名前は『放課後クラブ』か……ちょっと入ってみるか。こんちゃ~」
ガラララ、と部室に入ってゆく生徒が1人。
「あ! ほらお姉ちゃん来たよ! 初めまして! 2年生の【天上院咲】です! よろしく!」
「む……ふわ~眠い。わしは同じく2年生の【天上院姫】じゃ。お主VRゲームの経験は?」
「『ブルーマウンテン・オンライン』のラスボスをクリアした攻略組ガチ勢だ、だったんだがな」
「だった?」
「新学期を期に、データをオールリセットして新しいVRゲーム出来ないかな~。と思ってたところなんだッス」
「え、それって【世界樹シスターブレス】経由のデータ全部ってこと!? もったいない、折角コンバート出来る所だったのに~」
「へ~今時、珍しいののじゃ」
「そゆことで、前衛は最強まで極めたので今度は後衛で美味しい所は全部最後に持っていきますッス」
「おお~やる気あるね~じゃ私も真似を……!」
「咲ー! やめろ! それは全力で阻止する!」
「あ! ああーーーーー!?!?!?」
「なんかもう入ること前提になってるッスね。【先輩がた】、まあよろしくっス」
「咲、お前は感情が流され過ぎなのじゃ」
しばらくお互いの齟齬を埋める会話をして……。
「改めまして、俺の名前は。【流水寺 導】ッス、1年生ッス!」
「こちらこそよろしく!」
「なのじゃ!」
「う~むすさまじいエンジョイ勢ですね、まあ俺も負けませんッスけど」
「じゃあ何のゲームやろっか? お姉ちゃん、新しいゲームちょうだい!」
「ぬ、じゃあ『ハイファンタジー・オンライン』なんかどうじゃ? どっぷり異世界観に浸かれるタイプの」
「お! いいねいいね! やろう!」
そう言って、VR機『テンジョウ』を3人分机に置く。
「げ! 最新機種じゃないッスか!? 値段が高すぎるヤツ!? こんなお金どこから……」
「「……」」
「まあ、それはオイオイ話していくよ。じゃあ個別にログインして後で合流ね」
「了解しましたッス」
「じゃ、ダイブスタート」
「なのじゃ~」
◆
仮想世界、西暦2035年04月15日16時00分。
《ホーム画面、『世界樹シスターブレス』を経由して『ハイファンタジー・オンライン』のソフトへログインします。それでは良い旅を》
「おー久々のキャラメイクだな、懐かしい。とりあえず決まってることは一つ」
今のミチビキは黒魔導師でオーバーロマン砲を撃つことが夢なのだ。
「黒魔導師だ!」
こうして、新学期と共に。新しい部活友達と、新しいゲームで遊ぶこととなった。




