第210話「20日目」
【日本時間】西暦2034年11月20日15時00分。
仮想世界。赤い空の遺跡。
「よし、この時間で固定決定。本当誰が得すんねんこの難易度」
天上院咲はゲーム内時間とリアルタイムのワールドクロックを合わせた。
ここは戦火の真っただ中、モブB級冒険者は「隊長! ご命令を!」と指示を待つ。どうやらモブ兵を25人ほど引き連れている設定に変わったらしい。「んじゃとりあえず」とヤエザキは思ったことを口にする。
「空を飛ぶスキルの習得場所知らない?」
準備不足もあるが、イベント真っただ中に。話題が明後日の方向に飛んだヤエザキだった。
◆
【日本時間】西暦2034年11月20日15時00分。
現実世界。神道社会議室。
以下、各運営・政治家・人工知能・プレイヤーの有力者の一部に渡された。文言はどうせ世に出回るので。今回は公開会議という形を取る。よって不特定多数に観られることを前提とした会話となる。
トッププレイヤー、湘南桃花
【で? 生の世界を味わってどうだったの? 社長としては】
神道社社長、天上院姫
【ん~。自然に話すのが一番じゃと思ったね~。良くも悪くも】
政治家、今泉善次郎
【それは現実を直視しての話かね? それとも夢を直視しての話かね?】
神道社社長、天上院姫
【ん~。やっぱ現実かなあ~、あ。でもしんどい現実から逃げてるんじゃないからな?】
運営長、舞姫
【《戦う》と《逃げる》の選択肢しか考えてない社長は、もう少し逃げても良いと思います】
最高人工知能、ヒルド
【まあお前は戦い過ぎだろうな】
神道社社長、天上院姫
【そんなー(しょぼーん】
政治家、今泉善次郎
【所で、こちらの。現実の話になるが、私達の戦い。即ち選挙戦やそれに連なるものもやって良いかね?】
政治家、ジョン・サーガ
【私の方もそうだ。我々は我々のイベントをこなさなければならない】
神道社社長、天上院姫
【ふむ。メドは立ったし、良いんじゃないか? 展開しても。ゴール地点は一応用意出来た。骨組みは良好、あとは肉付け。なら、肉付けは皆々違う盛方をするから。今の段階でスタートするのは何ら問題ない。昨日まではあかんかったが】
最高人工知能、天命アリス=スズ
【姫さん、政治家に対して発言力あり過ぎじゃありません? なんて言うか、神格化されてるというか】
トッププレイヤー、不動武
【そこは政治家以外の僕らがちょっかい出すからどっこいどっこいだよ】
運営長、猿山坂尾
【で、俺は面白いものを貫けばいいわけだから。どっちに舵を切るんだ? データ観たが、過去の因縁による怒り爆発系か? でも背景はシットリだし~】
神道社社長、天上院姫
【ああん! ゆめとうつつがごっちゃになって頭グワングワンする~!】
政治家、今泉善次郎
【頭痛にならないだけましだと思ってくれ】
トッププレイヤー、湘南桃花
【あ、あははははは(カラ元気(遠い目】
最高人工知能、天命アリス=スズ
【う~ん、混沌】
運営長、舞姫
【平常運転だと思います】
政治家、今泉善次郎
【で、これだけ居るのだから。何か議題を出して決を取りたいんだが】
神道社社長、天上院姫
【何を議論するんじゃ? ありすぎてわからん。勝手に決めて良いのなら、どこかの国の選挙戦についての賛成、反対でも票を取りたいが?】
運営長、猿山坂尾
【しょうがない、今回はそれにしとこう】
政治家、今泉善次郎
【ではまず、拉致問題から……】
トッププレイヤー、湘南桃花
【や、……まって。それはちょっと重すぎる……】
トッププレイヤー、不動武
【無難に農林水産の話題で良いと思うよ、今回は】
運営長、舞姫
【それはゲームと関係あるのでしょうか?】
トッププレイヤー、湘南桃花
【あるよ、生産職は。ググったら『地方創生』関連ね。「田園回帰」の流れが生まれつつある。だって】
運営長、猿山坂尾
【戦った後は宴会でよくね?】
最高人工知能、ヒルド
【皆そういうわけではないから……、あと。猿山に関しては移動距離も】
神道社社長、天上院姫
【つっても、地方創世の内容をあんま知らんぞ?】
トッププレイヤー、湘南桃花
【いつものように変換でしょ?】
政治家、今泉善次郎
【なら『地方創世計画』の賛成、反対の決をとりたいですね。最初だしジャブで】
神道社社長、天上院姫
【おk】
『地方創世計画』の実行の賛否。
賛成。運営長、猿山坂尾。宴会が豊かになるから。
反対。運営長、舞姫。都心に労働者が減るのは困る。
賛成。政治家、今泉善次郎。ただし何処に人の流れが行くかによる。
賛成。政治家、ジョン・サーガ。広大な土地があるため。
反対。最高人工知能、天命アリス=スズ。今の時期にやるべきじゃない。
賛成。最高人工知能、ヒルド。高齢者に優しい世界にしたい。
賛成。トッププレイヤー、不動武。腹が減っては戦は出来ない。
賛成。トッププレイヤー、湘南桃花。責任を感じているから。
賛成 神道社社長、天上院姫。ご飯が安いと嬉しい。
賛成7、反対2で可決されました。
トッププレイヤー、湘南桃花
【おい、ゲームしろよ……】
◆
トッププレイヤー、湘南桃花
【んじゃ、ゲームの話しよっか】
◎議題『ステータスの数値化について』◎
神道社社長、天上院姫
【これなー。わしはやりたくないんだけどなあ~、管理がめちゃくちゃ大変なんだよ】
政治家、今泉善次郎
【でも無いとこちらが困る。本気で困る、国民に示しがつかない】
最高人工知能、天命アリス=スズ
【まあゲームと言ってる以上、数値化は必然ですけどね】
運営長、舞姫
【こっちは困ります。数値化しないと対策が取れないのは解りますが。全部管理するのはこちらなんですよ?】
運営長、猿山坂尾
【こっちは金額で対策をしているが、それじゃダメなのか】
トッププレイヤー、湘南桃花
【ダメじゃないけど。ランク分けなら私は賛成かな。問題はジャンルの量、この前は6個のジャンルで別けたけど。1つじゃ味気ない、3つぐらいなら私は賛成できる】
神道社社長、天上院姫
【えー! 桃花数値化賛成派なのかよ!】
トッププレイヤー、湘南桃花
【いや、ジャンルの量によるって話よ。あと公開頻度ね1イベントが終了するまではレベル固定なら、なおありがたい】
政治家、ジョン・サーガ
【我々にとっては数字は命だ。姫さんどうか】
神道社社長、天上院姫
【いやだ! 自由度が無くなる! 数字なんて振り切るためにあるんだろ!】
最高人工知能、ヒルド
【姫、科学を舐めすぎ。皆ならコントロールできる。お前にコントロールできる範囲でステータスの可視化はするべきだ】
運営長、舞姫
【しかしかなりの人数になります】
トッププレイヤー、不動武
【う~ん。昔ならともかく、今ならコントロールできるんじゃないか? 特殊能力が優れていても、カードの攻撃力と防御力は未だに生きてる。それは威力やHPが明確だからだ】
神道社社長、天上院姫
【お? そっちの観方か、じゃあレベル制を廃止して。HPを固定化すれば……いけるか? いや、しかし私は自由な方が良い! じゃあ決を取るぞ】
『ステータスの数値化について』の実行の賛否。
賛成。運営長、猿山坂尾。すでにコントロール出来てるから。
反対。運営長、舞姫。管理するこちらの身にもなってください。
賛成。政治家、今泉善次郎。最悪、政治業界では生きていけない。
賛成。政治家、ジョン・サーガ。投票でも数値化は重要だ。
反対。最高人工知能、天命アリス=スズ。今の状態で困ってない。
賛成。最高人工知能、ヒルド。数値化の量による、3つなら賛成。
賛成。トッププレイヤー、不動武。今なら数値化でもコントロールできる。
反対。トッププレイヤー、湘南桃花。雑務が増えすぎる。
反対 神道社社長、天上院姫。不自由になるのが嫌だ。
賛成5、反対4で可決されました。
運営長、舞姫
【え、マジで私がやるんですか?】
トッププレイヤー、不動武
【攻撃力・防御力・素早さの数値化。レベル制を廃止してHPはプレイヤー全員最初は固定。これならイケるだろ?】
運営長、舞姫
【イケません。装備品やら装飾品何個あると思ってるんですか!】
神道社社長、天上院姫
【ぐぬぬ……。まあやってみてよ、続かなかったら中断して良いから】
運営長、舞姫
【……、解りました。その雑務、お受けします。ただ、今すぐと言うわけにはいかず。今稼働中のイベントでのバージョンアップはしませんのであしからず】
そんな時間稼ぎと言う名の保険を付けつつ。その後も、細々とした会議は続いた……。




