第207話「16+α日目」
イベント名『ザ・エンドオブ・アリスストーリー』詳細。
『イベント達成条件1』
アナザーヤエザキの撃破。報酬は不明。メインシナリオはここだけでクリアされる。
『イベント達成条件2』
撃破はほぼ不可能なカイ兄貴&マム姉貴を何らかの形で撃破した場合は、大幅なボーナス。
『イベント達成条件3』
仮面木人ザナドゥ&シェイクの撃破、大幅なボーナス。
『ボーナス発生条件1』
天命アリス=スズを1度も死なせずにメインシナリオをクリアすると。アイテム『黄金魂』を入手。
『ボーナス発生条件2』
湘南桃花と出会い、《眠りの鍵》を入手後。リアルタイムで1週間一度も死に戻りしないと。アイテム『眠りの部屋への鍵』を入手。
『ボーナス発生条件3』
ヤエザキの噂話を色んな人に広めて彼女の名声を上げると。ヤエザキの噂話をした人数分だけ、彼女のスキル『エボリューション・白』がイベント戦闘中強化され。イベント終了後、入手出来る。
『ボーナス発生条件4』
職業『賊系』にジョブチェンジしてプレイヤー『メダル』と会話後、共闘をすると。武器『盗賊の七つ道具』を入手。
『ボーナス発生条件5』
不動武と共闘して足手まといにならないように行動すると。称号『最果ての軍勢に認められたもの』が手に入る。
報酬・ボーナスはそれぞれのプレイヤーに見合っ分量が与えられる。
アイテム【黄金魂】
バフスキル『絶対の信念』が使えるようになる。絶対に諦めない不屈の心により、何度倒れても立ち上がることが出来る。
バフスキル『反魂』が使えるようになる。何度死んでも黄泉の国から魂を呼び戻す事が出来る。
アイテム【眠りの部屋への鍵】
バットエンドを回避するために未来へ託した湘南桃花の眠りの部屋への鍵。様々なハッピーエンドルートへの必須アイテムとなっている。
スキル【エボリューション・白】
ステータスがオールゼロになるのと、データ的なログすら残らない。使用中はNPCやプレイヤーに『イナイ』ものとして認識される。
武器【盗賊の七つ道具】
高級な、船・車・飛空艇などと1回だけ交換可能。武器として使うと盗賊スキルが大体使える。
称号【最果ての軍勢に認められたもの】
ギルド『最果ての軍勢』と仲良くなれる。簡単に言うとコネ・パイプ・軍勢のレベルが高くて言うことを聞いてくれないはずが、いうことを聞いてくれる。
◆
【フィールド前提条件】
今回、プレイヤーは一番最初の布陣の位置がセーブポイントとなり。死に戻りした際に、最初に布陣を張った場所に戻ることとなる。プレイヤー全員が同じ、一か所に死に戻りするわけではない。
難易度SSSなので、過去に使っていた武器・アイテム・スキルは持ち込み可能。コンバートすることは出来る。ただし、このフィールドに不自然となるものは。この世界観に合うようにコンバートされる。
体感時間は現実世界の10倍のスピードでゲーム内時間が流れる。野生の飛竜とよく遭遇する。
【赤い空の遺跡】
今回メインになるフィールド、全体フィールドの半分は遺跡で囲まれており。防衛に関しては難攻不落と言っても良いかもしれない。ただ、プレイヤーに土地勘は無く。先住民のNPCに道案内をしてもらったらショートカットできる隠し通路はあるかもしれない。
【東部防衛線】
荒くれどもが多いい。ヒャッハーしたい人向け。モンスターレベルはA。
【西部防衛線】
統率の取れた軍隊が多いい。生存戦略をしたい人向け。モンスターレベルはA。
【英雄の村】
物資補給はここで出来る、逆に言うとここ以外での補給は困難。寝泊りできる仮設住宅もある。
【進行が困難な崖谷】
谷底は獰猛な獣がウヨウヨいるとされている。モンスターレベルはB。
【進行が困難な湖】
水面には海獣がウヨウヨいるとされている。モンスターレベルはB。
【雲の王国ピュリア】
今回傍観に徹する構えだが、ある秘宝があるとされ。狙っているやからも居るとか。
【迷いの森】
霧が立ち込めて迷子になるプレイヤー続出の場所。モンスターレベルはD。
【温泉旅館イイユダナ】
休憩所、観光スポット。衣食住が良い感じでリラックスできると評判。
【赤い樹】
幼少期のアリスが立っているイベント発生場所。VS仮面木人と出会えるがかなり注意が必要である。
◆
大体の地図状況を『鷹の眼』を使い、覗き見たヤエザキは。自身の陣地へ移動する。
ヤエザキ放課後クラブの陣地・スタートポイントは英雄の村の北側、東部防衛線と西部防衛線目前に。Yの字に道が分かれている。右側でも左側でも、どちらでも行ける距離だ。逆に片方に傾けば逆側がピンチになる可能性がある。
「さて、準備は整ったかな? あとは2日後までゆっくりできるね~」
そう思って脱力した矢先。先兵から連絡がった。
「大変です! 東部防衛線で荒くれどもが勝手に戦闘を初めてしまいました!」
「え!? つまり」
「はい! 始まってしまいました! イベント開始です!」
うわあ、やめろよそんな劇的な事をしないでおくれ。と心の中で叫んでしまったヤエザキだった。初っ端から予測できない事態に、あぁ。やってしまったかと思う。
「そうか、兎に角始まってしまったか。わかった」
動乱のイベントの幕開けである。
◆
天上院姉妹は激情と共に話を続ける。
「ねえお姉ちゃん、もしこのフィールドで超絶加速が始まって。失敗しらどうするの?」
「ん~? 考えてなかった」
「じゃあこっちでは【減速】するしかないね、10倍でも100倍でも500万倍でも」
「いやそこまで付き合わなくても……」
「私は私自身に今ムカついてる、だから頑張る」
「?」
「【頑張りが足りなかった】って思えるよ、【壊してやる、変えてやる】って思えるよ。【この絆を手放したくない】って思えるよ」
「……、サキ。ちょっと落ち着け、リラックスリラックス」
「む」
「今は1人で遊んでるわけじゃないんだ、大丈夫。大丈夫……」
「ぬ……うん、うん……」
不動武は湘南桃花に時計を手渡す。
「これは?」
「『黄泉還りの時計』だ、君なら上手く使えるだろ」
「黄泉還り……うん。わかった、上手く使ってみせる!」
《黄泉還りの時計》
秒針が今在る者らが進みゆく黒色。分針が夢幻を追い導く桃色。時針が一緒に歩くべきはるかな紅蓮色。それぞれが表裏一体となり、分かれた極め細やかな懐中時計。
元々は湘南桃花とオーバーリミッツが2人で作った象徴的な代物を。最果ての軍勢、不動武が預かり、そして返された。
夢と現、虚と実、光と闇の世界、これらを渡り歩く力を持つ。なお新旧の世界を渡り歩くことは出来ない。手に持った存在の、ただ有るべき姿を鏡映しに見せる効果も持つ。
特殊効果は単的に短く、【平和に暮らす事が出来る】。ただそれだけである。
◆
「結構『迷いの森』周辺に陣地を置く人が多いわね」
プレイヤー集団。森8割、前線2割といった見立てだろうか。
「まあ1年ぐらい冒険者が迷ってたから【そうゆう流行】なんじゃねーの?」
「なんだ流行か」
その時、プレイヤー全員に戦況を説明するログが流れる。
《東部防衛線、ギルド『カイガイ』が前線を北上中。押しています》
「どうする? あまり長引かせると運営側が労働でやばい事になる」
「よくわかんないけど、無茶させてるってこと?」
「うん」
「……ん~しょうがない。メダルさん達はメダルさん達の戦いを始めたんだ。かと言ってこの場所は離れられないなら。アナザーヤエザキさんを召喚しちゃいましょう」
そう言って、ヤエザキはアナザーヤエザキをフレンド召喚することに決めた。
《アナザーヤエザキ、フレンド申請により英雄の村の北部、Yの路地前まで召喚します》
瞬間、アナザーヤエザキが放課後クラブのど真ん前に召喚される。
「やあ」
最果ての軍勢、ギルドマスター不動武。
「ま、そんな事だろうと思ったよ。総員後退! 放課後クラブの援護に回るぞ!」
マム姉貴軍団
「マーマーマー! そう言うことなら遠慮なく進軍させてもらうよ! 総員南へ進め―!」
結果、西部防衛線は南下することとなる。
最南端、非理法権天陣地内。天命アリス=スズちゃんはここに避難させておいた。
湘南桃花は彼女を守る形で陣取っていた。
「大丈夫よメイちゃん、私が守るから」
「うん。てゆーか、桃花さんの方が狙われてない? そんな気がするんだけど??」
アメリカ・中国・イギリス同盟『カイガイ』
「メダルさん! 我が隊の真後ろに、アナザーヤエザキの軍団が大量に召喚されています!」
「あのバカ! 陣形作った意味ねーじゃねーか!」
「カイ兄貴が強すぎる!」
「タゲ外せ!」
「外せって何処にだよ!? 遺跡で陣地少ないんだぞ!?」
と、その時。
赤い空の遺跡と崖谷と湖の狭間に。BからSランクの追加の援軍がログインし始めた。
マム姉貴軍団とカイ兄貴軍団はフタを閉められたような、挟み撃ちにあったような形になる。
「なにい!?」
「あぁん!?」
Sランク冒険者が先導して指揮をとる。
「ザコモンスターなど知るか! カイ兄貴とマム姉貴のタゲを取れぇ!」
『おおおお――――!!!!』
冒険者達がなだれ込む。
◆
はい大混乱の出来上がり、と言わんばかりに。手のひらを水平に上げるアナザーヤエザキ。
「さて、他の人達の事はとりあえず置いておいて。私達の冒険をしましょうか」
ヤエザキは剣を取り、構える。もう怒りはどこ吹く風でやる気が吹き荒れていた。
「えぇ、じゃあ……」
一瞬の間をとり……。
「最終決戦のつもりでいくよ!!!!」
戦火が切って落とされた。




