第192話「ボスラッシュ25」※ターニングポイント4
「俺は許そう、だが拳が許すかな!!!!」
「また怒りか、学習しないな。そんな自己満足で私わこへ――!!」
「俺はな! アナザー桃花! 何故怒ってるか解るか!? 俺にも解んねーんだよ! でもな! 解るんだよ! こいつだけは許しちゃいけねえ! どんだけ論を積み重ねようと! どんだけ理屈をこねようと! こいつだけは許しちゃいけねえ! 希望を夢見て眠ったものの尊厳を破った! 冷静なふりして見て見ぬふりを決め込んだ! 不完全燃焼を美徳として決め込んだ! 恐怖を克服せよと弱者に強制した! 怒りの矛先は自分じゃないですよと白を切った! 見ざる聞かざる言わざるを貫いた! 何より!」
ドゴンバゴンズガン! と殴りに殴りに殴った。
「お前は! 湘南桃花の努力を利用した!!!! それが一番! 一番許せねえ!!」
「だからそれも自分の心に帰結すると言ってるだろ!!」
「自分のせいとか他人のせいとか関係ねーんだよ!! ちょうどいい幻影を作った? 自分の体が痛む!? ああそうだ! そう思われたって仕方がねえ! 自分を肯定する気なんてサラサラねえ! ハンマーを持てば勝てる!? そんなチャライ理由じゃねーんだよ! 人の眼が気になって怒りが出せない!? それは納得できるし共感できる! でもさあそうじゃねえだろ!? 自分の情けなさとか他人の都合とか、そんなの関係なく! どうしてもっと自分を表現しない!? いつまで殻に籠ってるんだよ! 雛鳥だって腐っちまうよ! 何が言いてえかってーとああもうめんどくせえー!!」
「ああ、そうかい。だいたいわかったぜ。グリゴロス君」
「「お前が邪魔だ!!!!」」
が、次の瞬間。
「!?」
「!?」
竜尾の男から《本物の竜尾》が飛んできた、飛んでアナザー桃花とグリゴロスの間に割って入る。これに触れるのは、得体が知れない以上に。何か不味い。そう本能が警告を鳴らしていた。
「理解できたかな? 少なくとも道は既にあると。闇雲に進まなくていいと」
アナザー桃花とグリゴロスが続けて答える。
「まあ」
「今さっきよりかは理解できたかな」
ただの長髪には観えなかったし、ただの鱗にはもう観えない。それ以上に、自分がどれほどの存在を前にしているのか。今なら理解できた、グリゴロスのわかる範囲でなら。時代の元号すら変えてしまうほどの現実変革の力だと。変わっていける力だと。理解できる。それ以上の事はやぼなので言わない。
「戦いの最中申し訳ないけど。もう傷つけあう必要はないんだ。今は【共に一番槍】を収めてくれるかい? あとの片づけはこちらでするよ」
グロゴロス自身は、ふにおちないが。ここまで逆境だと、流石に心身ともに疲れ果てている。ここのダンジョンに来るのは早すぎたと、腹を決めて諦めるしかない。
アナザー桃花は、桃花として言う。
「しかたない、というか。……しょうがないわね。待ってる子も居るし」
グリゴロスも少なからず共感できてしまう。
「あとで説明をちゃんと教えてくれよ、これじゃあここまで頑張った意味がない」
それを聞いて、竜尾の男はゲームマスターに話を持っていく。
「ゲームマスター、終戦宣言をしてくれ。あとのことはこちらで何とかしよう」
ゲームマスター/天上院姫/農林水サンは、それに答える。
「しょうがない、お主の声なら耳を傾けないわけにもいかぬしなあ」
と言って、面白そうな見世物そっちのけで。終戦宣言をのアナウンスをする。
『今から長期的な緊急メンテナンスに入る。終戦宣言だ。戦闘行為は全面禁止、会話や生産や商売、農業なんかはオーケーだ。繰り返す、今から――』
グリゴロスとアナザー桃花は睨み合う。
「決着はいずれ」
「おお、全部スッキリ終わったら。その時こそ再戦だからな」
そう言って、アナザー桃花は。闇の世界へと消えていった。
「…………」
かくして【天皇杯】は急な来訪者のおかげで、大きなアクシデントもなく。ここで終幕となった。




