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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第8章「FRO~幻想VS現実~」西暦2034年10月18日

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第191話「ボスラッシュ24」

 場所は『ピンクの宿屋』。

 グリゴロス、ファランクス、ヤエザキはカニちゃんと一緒に。湘南桃花の前に立つ。そこには知っているようで知らない光景を目の当たりにすることになる。湘南桃花は赤ん坊を愛おしそうに抱きかかえていた。無償の愛。優しい空間がそこにはあった。桃花も桃花で嬉しそうである。

「あうあう! オギャアー!」

「あぁ、やっほー今ちょうどねー【私の子供】の名前を決めようと思ってたのー。いや~体中痛くってさー、本当に大変だったわ~。で、何の用?」

 が、その時。

 カチチチ!!!! と、時計の歯車が【動きだした】。まるでこれが正しいと、世界に平等に教えるように。

 瞬間、赤ん坊と自分の存在が隣の部屋に移った。そして記憶が蘇る。皆の声が、記憶が、響いて反響して木魂する。


『『『『『湘南桃花』』』』』


「うっ!」

 呆然と目の前を見つめる。赤ん坊がいない。からとなった両手をワナワナと宙に浮かせる。【ないものはない】とばかりに、虚空をこの手に掴もうとする桃花。あるべくしてある状態はそう、『自然体』こそが彼女だった。

「そうだ、【私は私だ】。……何で忘れてたんだろう」

 とは言ったものの、環境状況が新旧で違い過ぎている。と、彼女は感じる。


 かくかくしかじか、と魔法の言葉を唱える。長い説明の後に、雀が数羽。飛び立った。

「あー、観ての通りルール上。今回私参加できないからさ~。代わりにこの力を受け継いで頂戴」


 《グリゴロスは時計型の神器『ウオッチ』の『武装:湘南真紅』を手に入れた》


「……、ありがとう。【借りる】よ、この力はその内に返す」

 桃花は大きくうなずく。

「うん、OK【もう解った】。通っていいよ。お帰りは右側から。その代わり……」

「その代わり?」

「手加減したら許さないから、全身全霊、最高のハッピーエンド。魅せなさいよ!」

 そう言って【自然】と、右手をあげてグーポーズを前に突き出した。

 グリゴロスは「あぁ!」と言ってから同じく【整然】と、右手を突き出してグーポーズで。

 コツンと誓い合った。



 グリゴロス、ファランクス、ヤエザキの3人が居なくなってから話し出す2人。 

 カニちゃんが湘南桃花に、事が終わった後に聞く。

「よかったの? ハッピーエンドを手放して」

「いや、いいんだ。どうせ今までは、自分の心の無意識に。引っ張られただけ。そんな邪道な手を取るわけにはいかない。今度は意識的にハッピーエンドをもぎ取る!」

 そして間もなく、もう一度。虚空を掴む桃花。そこには、何も、無い。……なにも。ただ虚空を掴む。

「でも、何でかな……」

 その時、両目から涙が滲む……。

「どうしてこんなに、悔しいのかなッ……!」

「……。一言で言うなら――」

「一言で済むような! そんな単純な話じゃない!!」

「……」

「助けようとして助けられて、守ろうとして守られて、生かそうとして生かされて、救おうとして救われて、償おうとして償われて、やろうとしたらやられてて。…………ッ!!!!」

「でも、そこに。敵役も悪役も枠役もいないよ。だから今、虚空を掴んでる」

「本当……、何がしたいんだ。……私は……ッ」

「……、それでも。隣に居ることだけは。忘れないでね」

「……うん」

 そしてもう一度、ただ虚空を掴む。

 何度も何度も、ただ虚空を掴む。

 諦めずに、虚空を掴む。

 努力して、虚空を掴む。

 虚空を掴む…………。

「………………ッ!!」

 無力感しか、感じなかった。


 カニちゃんは「成果物リンゴ食べる?」とか「求めるものは目の前にある」とか、言おうと思ったが。やめた。 



 古代ダンジョン超ボスラッシュ部屋。

 第一関門、第二関門と順調に突き進むチーム30人。ちなみにこの30人チームの総称を表した名前はまだない。

 グリゴロスが光の湘南桃花から託された、アイテムを起動する。それは時計型の神器『ウオッチ』。


 《アーマータイム! 『湘南真紅』装着!》


 グリゴロスは心のままに、言う。

「いくぞ、アナザー桃花……。桃花には桃花の力だ!」

「ただ真似をしただけで、超えられるとは思えないが?」

 グリゴロスは大きく深呼吸してから、叫ぶ。

「どうかな! 何事もやってみなけりゃ解んねえぜぇえええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーー!!!!」

「バカめ、私には《神速》《成長》《進化》《心眼》など色々と【黄金の魔法】が……」

「祈れ」

「!?」

 ドゴオン!!!!

 パンチの放ち方はこうだ、と言わんばかりの轟音だった。ようやく、浮足立たずに力を地面に踏み込めるまで。力が回復したらしい。

「誰も言わないなら! 俺が言ってやる! 許す! 罪は償われた!! だがな!!」

「な! な!?」

 アナザー桃花の鼻先がジンジン赤くなっていた、鼻先の絶叫を両手で抑えつける。

 画竜点睛がりゅうてんせい、流石に今回ばかりは。目力が違った。更に追い風が勇気もくれる。

「俺の怒りが!! 冷めるまでだ!!!!」


《【天皇杯】古代ダンジョン超ボスラッシュ! 地下三階、VS非理法権天『湘南桃花』戦闘を開始します――。》

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名を上げる。ボカロBGM:最終決戦~ファイナルバトル~
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