第190話「ボスラッシュ23」
「行くぞ!」と言ったものの、時間が時間だったのでやめる。そして明日にしようということで合意してもらった。
現実世界。西暦2034年10月20日15時00分。
仮想世界。西暦2019年05月20日15時00分。
異世界。?歴1500年??月??日??時??分。
『大門前広場』
ファランクスに「パッと進めます?」と聞かれたので、それはもう当然の様にパッと進むを選択する。勝てる自信はあるが、どれもこれも激戦必至だからだ。
《パッと進める》
第一関門は辛くも勝利、もはや楽勝で勝てるビジョンなんて見当たらなかった。
第二関門も辛くも勝利、こちらはちょっとだけ手加減してくれたようにも見えた。
そして第三関門……。
現実世界。西暦2034年10月20日15時30分。
仮想世界。西暦2019年05月20日15時30分。
異世界。?歴1500年??月??日??時??分。
「疲れた、死ぬ」
「あいつら人間じゃねーよ」
「手加減を知らない……」
「前よりも強くなってるし」
などなど、苦痛の声を拾えば霧が無い。リベンジマッチはこの先だ。
「全員防御だ、一手目も二手目も防御でいく。あとは作戦通りに。奴らは倒したら増える、だから。湘南桃花本体だけを狙うんだ」
『おう』
そういうわけで、もう前振りなんてふっ飛ばして。大門を開けた。
瞬間――、死。……ななかった。
それぞれがそれぞれの防御方法で防ぎ切り、相手が連射する前に雪崩れ込む。
「ようこそ、んじゃ2手目だ」
360度の包囲網がプレイヤー達を待ち構える。が、わき目もふらず、それぞれの陣営がそれぞれの目指すべき標的へと突っ込む。桃花本体は想定外の陣形に顔をギョッとさせた。
カグラ型ゴーレム10体VS後方ギルド『放課後クラブ親衛隊』
桃花型人形30体VS右方ギルド『連射隊』
桃花型傀儡10体VS左方ギルド『ヒーロー戦隊』
桃花型if10体VS前方ギルド『脳筋漢ズ』
熊型の兎1匹VSヤエザキ
ゴリラ型の亀1匹VSファランクス
オーバーリミッツ1体VS歌峠夜鈴、秘十席群、不動文、主神ゼウス
湘南桃花本体VSグリゴロス
「「「「「「「「お前の相手はこの俺だ!!!!」」」」」」」」
「!?」
今更ながら戦闘開始の合図と言う名のログが残った。
《【天皇杯】古代ダンジョン超ボスラッシュ! 地下三階、VS非理法権天『湘南桃花』戦闘を開始します――。》
◆
戦闘から数秒後。その圧倒的な力量差を前に、プレイヤー達は右往左往。足元がお留守になってしまっていた。
湘南桃花がグリゴロスに問いかける。
「……どうやら、他にやるべきことが出来てしまった。ちがう?」
「く……!」
「……、私の闇を晴らすには。まだ準備が足りなかったようね。人形達、《最適化》を実行」
『ピピピ、最適化を実行。瞬殺モードに切り替わります』
数分後、重傷となったプレイヤー達は。《最適化》された攻撃行動に押しに押され。殺されはしなかったものの、撤退を余儀なくされた。
《撤退しました、大門前まで転移します》
機械的なログが残った。
◆
ファランクスがグリゴロスに質問する。
「撤退を選択したということは何か、勝利へのヒントは得られたのですカ?」
「……まあそういう感じだ。これはヒントを得ないと負け確定イベントのようだ」
「というと?」
「一度、本物の湘南桃花。だと言いにくいな……『光の湘南桃花』に会いに行こう」
それが、グリゴロスの選択だった。色々探した結果、光の湘南桃花は。『ピンクの宿屋』の部屋の奥に居るらしい。
「間に合ったのか……?」
「まぁ、ギリギリ間に合っているでしょう」
「手遅れ&チェックメイトされた後に間に合ってもなぁ……」
「そのあたりの補正は『放課後クラブ親衛隊』に任せるしかないわね。私達は私達で、ここから先のルートと言う名の道を作りましょう」
そう自分達に言い聞かせて。光の湘南桃花のいる部屋の前まで行き、摩訶不思議な扉を開いた。
その結果。どういうわけかよく知ってる身重の女性が、この影響で体調を悪くしているところを発見した。ここで道が途切れている。
「ここか」
「ここですネ」
「ここしかありません」
そういうわけで、光の湘南桃花と雑談する機会が手に入った。




