第188話「ボスラッシュ21」
◆始まりのギルド
村を出た無名の冒険家『ピンク髪のカニちゃん』は選択する、国選びの次はギルド選びが始まった。
「ダメだね嬢ちゃん、変身の術が上手く出来てない。うちのでは雇えないよ」
「そうですか? ちゃんと変身出来たと思いますが」
「よく観な、左手左足。素のまんまじゃないか、上手くできるようになってから、またおいで」
(ちぇーいいじゃんちょっとぐらい。ケチンボめー)
誤魔化しは下手だった、カニちゃん。この戦争で変身の術は日常茶飯事らしい、「なんでやねん」と首を傾げるカニちゃん。と、その時一つの影がついてくる気配を感じた。クルリと【右から振り向くと】そこには誰も居なかった。
「????。あ、リンゴください」
そうこうしている内に流れ着いたのが、ギルド『無限の剣陣』である。隊長はこう叫ぶ。
「俺達は遊撃隊だ! 怯えて帰ってもらおうぜ!」
ギルドの中で、ゴーレムを作ってもらった。
「カニちゃんゴーレム、合計10体だ。好きに遊んでおいで」
『カニちゃんゴーレムです、ご命令をどうゾ』
カニちゃんはびっくりした。自分の手足となってくれるゴーレムが物珍しかったのだ。
「うおー凄い本物みたい! たーんのしー!」
◆戦争と紅蒼がクロスした時
戦争中に野球なるものをした、バカな人達もいるんだなあと。面白可笑しく笑った。
「何こいつら、集団で襲って来る。強い! これが世界か……ッ」
戦場は過酷だった、流れに付いていくのもやっとだった。そこである天空の城を守護する。エルフ族の青年を見つけた、一目惚れだった。何故か【ソコ】が懐かしく感じた。だがその人は【これが最善だと】思って死んでしまったらしい。
「あの人が死んだなら! 私も後を追って死にたい!」
赤い短剣『覇去』をもってすれば、何とか出来ただろう。しかし、出来なかった。出来る術を知らなかった。もし、知ってたとしても術は使わなかっただろう。
「う……うううッ!!」
涙が溢れ、止まらなかった。これが彼女の初めての失恋。その時、森の中から現れたのだ。
「やっほーお姉ちゃーん」
心当たりは無かった。
「だれ?」
9歳の少年竜はこう答えた。
「蒼い影竜『ヤマタノオロチ』、神器『天羽々斬』に滅された一族の末裔。これでも戦闘のプロさー。……覚悟しなよお姉ちゃん」
「?」
「これじゃあまだまだ足りないかな」
それから間もなく、15分ほどの激闘が始まった。それは体感時間にして10年ほどの激闘、心身ともに削り取られるほどに。魂は摩耗し。
カニちゃんはヤマタノオリチくんに負けた。
戦争が終わったあとの数日後。カニちゃんは負けたには負けたのだが、その後の勝敗はうやむやになり。何故か仲むつまじい姉弟のじゃれつく攻撃の応酬が日常になっていた。
「だからくっ付くなっての!」
「えーいーじゃーん。勝ったんだし~、名実共にお姉ちゃんになったんだしー」
「だから知らんがなってー!」
「えー知ってるくせにー!」
「だから知らんがなってえぇー!」
これはこれで歪な愛の形にも見えた。カニちゃんゴーレム達も、何だかんだでついてきていた。
『我々はカニちゃんのフォローをしましょウ』
『異論なしでス、そうしましょウ』
『彼女に罪はありませン』
そのあとは各地の村や町、おっきなオーロラの塔、王都や遺跡を転々とした後。
「ルールなんていらないよー、歴史なんていらないよー」
「いるに決まってるじゃない! 何を言ってるの!?」
温泉旅館『ピンクの宿屋』が出来上がり。そこを本拠地にとして住むこととした。
だけど、これは大きな歯車の小さな歯車。……序章でしかなかった。
◆伝説の2人組
精霊界。
その天空の城の一角が崩壊して落ちた。それに伴い、2人の伝承の妖精が姿を現す。
蒼桜の神門塔の番人『神楽スズ』
「久しぶりね何やってるの? リスク」
全天に轟く伝説の妖精『リクション=S=リスク』
「お前こそ何やってるんだ? スズ」
◆温泉旅館『ピンクの宿屋』
現代。グリゴロスとカニちゃんは、お団子を美味しそうに頬張りながら。物語を談笑していた。それを見つめるファランクスも含めて……。
カニちゃんがここで一泊置く。
「と、今回はここまでにしましょう。ここからルートが分岐しそうな気がしますし」
「ルート分岐? え、どゆこと?」
「たぶんここから先は脚色が過剰になるというか~。私自身よくわかってないので、え~っと」
「つまりストックが尽きたのですネ」
「そうそれです、ストックがつきました。過去を思い出すのに、まだ時間が必要な感じですね」
「……そうか。お前も大変だったんだな」
「まあ、大変でしたねぇ~。何せ時代がノンストップでしたから~。んじゃまたあとで」
「おう」
「はいでス」
「約束ですよ?」
「おう」
「はいはいでス」
気分的に回復したので、再び攻略への布陣やら作戦やらを立て直そうと考えるグリゴロスだった。




