番外編19「運営の作戦会議」
現実世界。西暦2034年10月19日19時00分。
仮想世界。西暦2019年05月19日19時00分。
異世界。?歴1500年??月??日??時??分。
現実世界、神道社・運営会議室。
「う~ん。この高低差が私はあまり好かん」
神道社社長、天上院姫/農林水サンは唸る。そこは運営の作戦会議室、天皇杯という大きな冠を。どうにかして料理しようとした、その結果の布陣がこれだ。だからルールは単調にしたし、解りやすさを重視したつもりだ。『5連勝したチームの勝ち』それだけだ。そして5連勝できずに途中でプレイヤーは何処かで負ける。ここまでは良い。
だから、モブ運営はこう告げる。
「ここまではシナリオ通りですな」
天上院姫は、そこから先のルートを何度も考える。その考えを補佐するようにモブ運営も手伝う。
「ここから先がマンネリ化するんだよなあ~」
「負けるたびにボーナスが上がるなどはどうでしょうか?」
「いや、それだと難易度を最大にした意味がない。」
天上院姫が続ける。
「それに、ここまでノーヒントで冒険してきてくれた人達に返って失礼だ。いくら天皇杯だからって、今回は【弱点まで】あるんだ。クリア出来るのも時間と根気の問題だと考えた方が良いだろう」
「そうなると、その『時間と根気』をどうやって面白くするかが。我々運営の腕の見せ所になりますね」
天上院姫が続ける。
「う~ん。現状、地理的には『南と北』以外に進退は無く。イベントがあるのは街中で『ピンクの宿屋』、『大門前広場』。そして、ダンジョン『超ボスラッシュ』の5つ部屋のみ」
「シナリオ的にもこれ以上拡張するのは愚策かと思います」
天上院姫が続ける。
「だよなぁ~、いくら『西と東』が気持ち的に気になるとは言っても……。シナリオ的にも常識的にも、……なんかやっちゃいけない気がする」
「では、『西と東』は我々運営が全て。お手伝いさせていただきます」
「我々が全責任を取ります。姫様に責任はありませんし、飛びませんし飛ばさせません」
天上院姫が続ける。
「うん、それで頼む。『南と北』は『私の小手先で進める』それでいいか? てか、それしか出来ん」
「異論はありません」
「では、とりあえず今回はこれで解散で~」
◆
天上院姫、社長室。
「……咲、いるか?」
「いるよ~」
言って、真正面のドアから威風堂々と入って来た。
「どうしよう、闇の組織と光の組織の板挟みにわしはなってる……。中間管理職みたいになってる~」
「そんなの、原点も頂点もない。精神で、光も闇もない。精神で自由に取っ払って生きれば良いじゃない。今のあなたは人間、天上院姫。なんだから」
「そうだな~そうなんだけどな~光の天上院姫が。……なんかくすぐったい」
「痛いのよりかマシでしょ? 我慢しなさい」
「……へい」シュン
普段悪いことを考えているが、ある意味悪役令嬢的なアレなので。何ともやりにくさを今は感じてしまっている姫。
なんか変な間が出来たので、天上院咲は謝罪をすることにした。
「ごめんね、喧嘩した時。病院送りにしちゃって……」
それは戻すことの出来ない、辛みだった。
「……いいって、どうせ私は鈍感だから」
「もうちょっと敏感になっても良いんだよ?」
「……今はちょっとの刺激でもビクンビクンするから何とも言えん」
「ふふふ」
お互いを労わり合う、姉妹愛がそこにはあった。それは確かに存在していた。
「もっと会話したい」
「え、もういいじゃん。こっちの要件は済んだぞ?」
「じゃあ、……本の話を聞かせて」
「本……あーあの本かー……あの本の何を教えれば良いんだ?」
「本の続き、先、――後の話」
「え、……それ……真面目に言ってるのか?」
「ううん、生真面目に聞いているの」
「え~~~~~、……て言われてもなあ~どこ行きたい~? とか、場所指定みたいな。そんな象徴的な話しか出来ないぞ?」
「構わない。エレメンタルワールドの終わりの先に、何があるのか。私は……その続きを知りたい」
「ん~……。やっぱ、『VRの話』になるんじゃないかなあ~? 高低差がめんどうだけど」
「え、それってッ――」
「おっと、話はここまでだ。色々聞きたい気持ちも解るが、物語には語るべき時と言うものがある。ちゃんと温めたいって気持ち、色々知ったあとのお前ならわかるよな?」
「……うん」
「んじゃ、そういうことで。よろピク」
2人のシークレットな会話は、ここでお開きになった。




