第182話「ボスラッシュ15」
「この日本刀はね、『三国無双』て言うんだ。1本の刀が3国分の力と同等であり、また3人分の力と同等であるってこと。勿論、その分扱うのだって難しい。『ネオ・フェザーソード』も使いやすいけど、今回はお休みだね」
日本刀を中心とし、1国・1人を表す概念玉が3つ。浮遊し廻っている。それらがアップダウンしながら、日本刀を中心に廻っている。今はダウンしているので、人人人を表している。アップになると国国国を表す。
「これが僕の今の実力、そのうえで。あの時の続きをしようよ。今度はちゃんと戦ってね【夜鈴お姉ちゃん】と【ヤエザキお姉ちゃん】」
そう言って、右手に『三国無双』を構える。この単品ですら、扱うのは相当難しいだろう。更に、影分身が2体出現する。合計で3体の敵。人だと9人、国だと9国。もはや完全に人間業ではなかった。
そのうえで、3体のナナナ・カルメルから頭上に『よくわからないけど審判』が展開される。これで、下準備は終わり。どこで歯車が狂ったのか、だが。自分の知っている限りの全力を、この子はこの子で出しているに過ぎない。
「んじゃ、いくよ」
1人にして3体、3体にして9体、9体にして9国が。敵となって立ちふさがる。
「セット!!」
指先には、グリゴロスを正面では無く右側の存在を指示していた。ナナナ・カルメルの『三国無双』がクルクル廻る。
中央陣が会話をする。
ファランクスは是が非でも、再確認をしたいがためにこの場で聞く。
「ねえ、私達は湘南桃花の方へ向かっている。それは変わらないんだよね?」
聞きたい意味は解るのだが、グリゴロスは眉をピクリと動かす。
「ああ、……極論。南極でも南国でもなくただの湘南だ! それ以上でも以下でもないし。それ以外は知らん!」
「そうか、よかったー」
と、中級者。ファランクスはほっと安堵するが、事はそう簡単ではない。ヤエザキは上級者として口をはさむ。
「でも私達からしたらそれは違う。彼女は【人間】であり【先生】でもある、彼女は【動く】んですよ。前例を上げましょうか? 彼女は『最果ての島』へも行くし、人の『過去や未来』へ土足で踏み込むし。『脳内会議室』や『舞台裏』にだって入ってくる!」
グリゴロスもそれには大いに同意する。
「そういうこと、いくら俺達が【南から北へ】向かってるとしても。図面としては合ってるが……。目の前の敵に対応できない!」
内輪もめしている場合ではないが、ナナナ・カルメルは子供らしく。キョトンとして待ってくれていた、影分身も同じ声色でハモる。
「「「ねーまだ~?」」」
どちらが情報過多でどちらが情報不足なのかはわからないが、そこで認識に大きなズレが生じていることだけは解った。グリゴロスがめんどくさそうにまとめる。
「つまり俺達は、図面上は【南と北】意外には話がこじれない。以上です」
「んっと、東は?」
「……今はまだわからないって答えで納得してくれ」
「ん、了解」
「「「まだ~?」」」
前方陣が会話をする。
「またやってるよ内乱」
「気にするな、いつものことだ」
「俺達は『わかってきた』あいつらを何とかする、それでいいんだ」
後方陣が会話をする。
「こっちが回復間に合わなかったらどうする気なんですかね、あれ」
「潔く死んどけ、そこは」
「私は! 死ぬ気はないんですけどね! ね!」
右方陣が会話をする。
「攻撃は効いたな、前回」
「当てる気なかったんですがね、私は」
「そろそろ、大雨がふってきますね」
「それはまずいな、重火器が使えない」
「異世界軍の武器を使うか?」
左方陣が会話をする。
「中央の司令塔が混乱してるな」
「流石にこの規模じゃ初めてなんだろう」
「暖かく見守るしかないさ」
「俺達は足で稼ぐぞ!」
ヤエザキがお友達であるカルメルに遠巻きに言う。
「もーいーよー」
「「「おー!」」」
グリゴロスから見て、右側のカルメルが構える。
「じゃあ小手調べの初手を行くよー! 大雨津波警報発令! アップギア!」
グリゴロスが手を掲げ構えるて叫ぶ。狙うは当然右側のカルメル。
「左方陣構え! 地の利を生かせ!」
「《三ヵ国! 暴風雨》!!!!」
瞬間、横薙ぎに暴風雨がこちらに飛んできた。部屋全体は大雨で、足元に波紋がバシャバシャと舞った。




