第179話「ボスラッシュ12」
戦闘が開始されて1分が経過――。
皆がみんな、ナイスなフォロー&アクションをしてくれるものの。「でかしたぞ! ○○!君」と言っている間すら口惜しい。言いたいことは山ほどあるが。ここは冷静に、必要最低限の号令を出す。
「総員! 一塁分前進! 奴の自由空間を縮小しろ!」
『おう!』
そう言って全員、前へ歩を進めた。いくら変幻自在な自由度を持っている敵とはいえ、それはあくまで空間が有る範囲内だ。その今有る空間自体を圧縮してしまえば、《型破り》であれルールの外には出られない。たまにコイツは突き破るけど……。
「へえ、やるな! じゃあ今度はウチの番だぜぇ! 《全力》!!」
「来るぞ! 全員防御だ!」
が、レベルが高すぎて言うことを聞かない脳筋大好き4人組が居た。ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオンである。
『4人合体! マジ殴り――!!!!』
が、なんとそれも【力及ばず】力負けする。Sランクが4人居たとしてもココは30人部屋、ゲームバランスが違った。どんどん波動砲が押し負け、近づいてくる。
『な!? 何だと――!? 俺達がパワー負け!? 俺達がイージー!?』
が、それでも冷静な人間グリゴロスが。爆裂魔法大好きファランクスに指示を出す。
「ファランクス、やれ!」
「了解! 《空想庭園、獄帝の竜王! その覇道を貫きしは漆黒の灯!》」
あわや消滅する寸前のところで壁が立ちはだかる。不動文、世界最強の防御魔法。
「《反転世界》!!」
【今までの全て】を反転させた世界が、最強の鉄壁となって権限する。
《混沌世界の概念を浄土と化し、黄昏の日の元に壊滅せよ!》
「過信しすぎだ4バカトリオ!!」
『過信って……! 俺達プロだぞ!?』
「それを過信って言うんだよボケ!!」
ヤンキー同士の、棘のある威嚇が交換される。
《絶対の焔よ、円廻の理より還るは覚醒成る両翼!》
それを観た浮遊超気は、面白可笑しく喜ぶ。
「やるな! んじゃ今度こそ本気だ! 《暴風》!!」
世界最大級の自然災害のエネルギーが、波動砲となって襲い掛かり。今まで最強と謳われていた《反転世界》に、ヒビが入る。
《大いなる破局を我が神眼に示せ!》
「チッ流石に小手先じゃダメか……」
そう思った瞬間――。
《森羅万象、誓約の名の下に、あまねく魂に悠久の炎を!》
「スーパーフレア!! フルバースト!!!!」
大自然の化身である《暴風》そのパワーを、灼熱の炎のパワーで押し返した。
『な!? 【アレ】をパワーで押し返した!?!?』
Sランクの4人組が驚愕する。
「嘘だろ!? すげえ!!」
「初めて見たぜ《暴風》を同じパワーで押し勝つなんて!!」
「ファラン嬢ちゃんすげえなあ!!」
「俺は自分の未熟さを感じたぜ――!!」
浮遊超気も唖然とはせずに、油断もせずに。喜々としてその攻撃を食らう。ただ単純に、純粋な力の前に。壁にぶつかった。が、すぐに飛び起きる。
「へー! 新しいな!! おもしれえ!!」
キリッっと眉を吊り上げて、弱者は宣言する。
「弱者には弱者の、イイエ! 挑戦者には挑戦者の戦い方があるのデス!!」
Sランクギルド『脳筋漢ズ』が、更に力む!
「この年で挑戦者か!」
「いいね! 腕が鳴る!」
「最高の踏み台だ!」
「俺達は! まだまだ上へ行ける!!」
パワーインプレ? 何それ美味しいの? 状態で。最高に荒ぶるっている前衛S組に、負けじとフォローではなく援護でもなく。自己主張するその他大勢であった。
「セット!!」
グリゴロスが指差し確認をする。ビクリ! と全員がその声を秒速で反応し、身構える。《光風》指先には、空中に浮遊超気が低飛行して光速移動する。少年は……笑っていた。




