第175話「ボスラッシュ8」
第3陣のプレイヤー達が雪崩れ込む、ギルド『ドラゴン・スピード』はそれらを黙って見送る。新たなプレイヤーを探して、第4陣に流れ込めれば良いな。程度に考えていた。
さっきの戦いでグリゴロスにアドバイスをするヤエザキ。
「あなたの場合、手足を交互に動かすのが合ってるかもね」
「……そういうもんか?」
「きっとそうよ。手足の技で、必殺技とか入れ込めば。動きも良くなると思うわ。……風林火山とか」
「なるほど……、考えとく」
あたりをキョロキョロクルリと1週回って、観察してからヤエザキは呟く。そこには『放課後クラブ親衛隊』の『牙』が猛烈にアピールして手を振っていた。「大丈夫ですよー!」と言わんばかりであったので、こちらもニッコリと笑顔で手を振って返す。
「やっぱり1番目にクリアするのは難しそうね……」
「皆それぞれ事情があるんだろ? ニートとか学生とか会社員とか」
「……、それもそうね。こうやって、みんなとゲームを共有できること自体。幸せだと思っておかないとね」
「笑顔笑顔、折角の美人が台無しだぜ?」
「……それもそうね、そうしとく」
神経を尖らせているのを隠す微笑となってしまったが、今は笑顔が出来るだけましだろう。彼女の心の中での複雑な葛藤と摩擦は続いているのだから。
グリゴロスは、こちらもこちらで。感情と言う名の気合を注入しなおす。
「さて、俺たちが仲間集めをしている間に。攻略組は浮遊超気の弱点を知ったので、攻略が始まると予想出来るとして……」
「どうしまス? いったん様子を見まス? 今度は最低限は済ませてるので何も言いませんけド……」
ファランクスが間に入って来た。
「ん~ちなみに。【互角の5人】とは直ぐに連絡はつくのか?」
「つく人もいますし、つかない人もいます。どうします? パッと集めますか?」
「こんな所でもたつくのも面倒だ、1時間後。パッと集めてさっさとダンジョンに入ろう」
1時間後。歌峠夜鈴、秘十席群、不動文、主神ゼウスをパーティに招待した。グリゴロスは真面目に観て「こいつら悪役ズラじゃね?」とか思ったが、どうやらボスを倒したい気持ちは一致団結してるので。戦闘に入れば問題は無さそうである。
これで合計、現在7人。残りの空白は23人。
何やら彼らは彼らで、お互いの自己主張が激しく。四苦八苦していたのでその多文な言動は割愛させていただく。
「さて、考察や口論も良いが。結局机上の空論でしかない。ので、足りない人材は戦いながら決める事にしたいんだが。どうだろうか?」
「異議なしデス」
「問題ないよ~」
『ちょっと待てー!!!! 俺達も入れろー!!!!』ドン!!
ビクリ! と、何やら気迫のある叫び声が。こちらに轟いた。ギルド『ドラゴン・スピード』は萎縮する。
「えっとー、どなた様?」
グリゴロスが質問すると、男。いや、漢達はこう答えた。
『我らはSランクギルド『脳筋漢ズ』。週に一回、互いにゲーム内で漢を磨き合ってる漢気溢れる男達だ!』ドン!!
暑苦しい男達に囲まれた3人、まるで不良の集まりみたいだった。『脳筋漢ズ』の漢気溢れる連携技は、その業界では知れ渡っている。
「俺の名は『ジャンプ』俺達も混ぜろ! 戦いたくてうずうずしてるんだ!!」
「俺の名は『マガジン』お前らの戦いライブで観たたぜ! 良い筋肉してるじゃねえか!!」
「俺の名は『サンデー』歌峠夜鈴嬢ちゃんのフォローが必要なんだろ!? 俺達なら100%大丈夫だ!!」
「俺の名は『チャンピオン』俺達とお前らで! 勝てない敵は何もない!!」
ヤエザキは「いいの? 私達EからDランク程度のギルドなんだけど……」と言ったので、ジャンプが圧する。
「機械の方が壊れてるんじゃねーか? 俺たちの眼は誤魔化せねえ! そうだろ兄弟!!」
『おおー! 四の五の言わずにパーティーに入れろー!!』ドン!!
近年のクールな主人公像は何処へやら、昭和の風が吹き荒れる。確かに、居てくれたなら心強い。きっと超気とグリゴロスとの戦いで、燃えて来た感じなのだろう。マガジン・サンデー・チャンピオンが言う。
「蚊帳の外はごめんだぜ?」
「なあ、兎に角戦わせてくれ!」
「お荷物にはならねえ!」
グリゴロスは「それなら良いぜ!」とちょっと熱が移った。
これで合計、現在11人。残りの空白は19人。




