第171話「ボスラッシュ4」
「何でついて来ちゃったのかなあキミ達……」
地球防衛軍に寝返った、ヤエザキはお茶を濁すが。ギルド『放課後クラブ親衛隊』の『賢者』『空戦』『牙』はというと。
どこ吹く風というか。いつも通り。というか当たり前というか。平然というか。
「確かに異世界攻略軍ですが裏切ってません」
「ちゃんとルールは守ってます、ええ。するりと抜けて」
「どうかその辺の空気と思って扱って下さい!」
という他愛ない会話をしていた。どちらかと言うと下らない会話ではなく。【クダラのある会話】かもしれない、というネタ発言も仕込んでおく。が、ヤエザキにその発言は刺激が強すぎたようで。冗談に聞こえなかったようだった。
それらを遠目に見ながら会話をするグリゴロスとファランクス。
「何をやってるんだ? ヤエザキの奴……」
「過去の因縁なのか、ファンクラブなのか、呪いなのか絶妙に微妙ですね……」
ヤエザキはと言うと「気にしないでアビリティ選んでてー!」とのこと。
仕方ないので【よくわからないけど米でも食いながら卓を囲んで】ゲームの続きに没頭する、グリゴロスとファランクスの姿がそこにはあった。
「俺って強くなったかなあ?」
「まあ、多少は。ですね……」
「あ、餅ください」
「私もお願いしマス!」
ピンク色の子供店員さんは「はいはーい、今持っていきますねー」と、これまた軽やかに飛翔する。
何故だろう、お餅を食べるのが一番落ち着く今日この頃であった。……和む。
◆
グリゴロス
アビリティ:《俊敏》《巧手》《急所狙い》《遠駆け》《早駆け》《軽業》《頑強》《忍耐》《耐毒》
ファランクス
アビリティ:《剛力》《堅守》《反動》《才知》《集中》《開眼》《祝福》《博学》《解読》《賢哲》
ヤエザキ
アビリティ:《才知》《集中》《精錬》《一極》《剛力》《骨砕き》《乱撃》《鉄砕き》《頑強》《俊敏》《耐毒》《忍耐》《活身》《賊活》《抵抗》《痩せ我慢》《暴食》《裏切り》
何だかんだありつつ、ギルド『ドラゴン・スピード』のアビリティ構成は以上のようになった。これからその解説をする。
まず、特筆すべき点は。3人で相談した結果、アビリティのレベルは今回上げない方向で調整した。全体的に手広く技を使える構成にして。限りなく何が起きても大丈夫な対処をできるように組んだ。
だから、敵の同じアビリティ同士がぶつかった時。レベル差で負けるが、それは最初の様子見としては上々なので。見送ることにした。なので全体的にバラエティが豊富な品揃えとなる。
グリゴロスは《急所狙い》を筆頭に、欲しかった《耐毒》。あとは速度に重点を置いた構成。
ファランクスは兎に角ツリーの《解読》を目指し、残りは《祝福》を目指しツリーを組む。
ヤエザキはオールマイティに《剛力》《頑強》《才知》《俊敏》の初期技を取り。残りは《一極》を目指して作る。あとはチームに足りないものを補強した。アビリティが他の2人より多いのは、経験値が多いため。代わりに《裏切り》によって、所持している全てのアビリティボーナス効果が半減している。
ギルド『ドラゴン・スピード』全体の評価としては。力は無いが、速度は並みで、戦術に特化した構成と言えるだろう。
「ふむ、こんなもんか」
「特に異論はありません」
「あとはちゃんと機能するかデスね」
互いに互いを確認しつつ、あとは本番で効果を発揮できるかどうかにかかってきた。
「ほかはアイテム集めと、参加プレイヤー集めだな~。1バトル30人参加可能だっけか」
「『放課後クラブ親衛隊』を集めてみたらどうですカ? 私達2人は他に知り合いもいませんシ……」
「あ~……その場合。地球防衛軍より、異世界攻略軍のほうが多くなるけど、……いいの?」
「構わないんじゃねーか? どうせ最初は負けて振り出しに戻るんだし」
とグリゴロス。ヤエザキは自分の人脈を呪いつつ。それしか手は無いか、と諦める。
「仕方ない。じゃあ今回は【私の友達】じゃなくて【放課後クラブ親衛隊】の中から選ぶね。今回だけだからね!」
これにより、『賢者』『空戦』『牙』の【天皇杯】参加は確定となった。ヤエザキはあくまでも注意をする。
「思いっきりはっちゃけると思うけど……。ここは『ドラゴン・スピード』のルールで動いてもらうからね?」
3人と、その他大勢は元気よく了承した。
「はい!」
「あいさー!」
「了解でーす!」
先が思いやられるが、兎に角これで参加者の問題は無くなった。




