表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第8章「FRO~幻想VS現実~」西暦2034年10月18日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/789

第166話「ドラゴン・スピード」

 現実世界。西暦2034年10月18日20時00分。

 仮想世界。西暦2019年05月18日20時00分。

 異世界。?歴????年??月??日??時??分。


 『ファンタジアリアリティ・オンライン』がスタートして、おおよそ4時間が経過。

 メンテナンスまで残り1時間。


 天候は、雨。暖かい湿ったお湯のような雨が降る。

 グリゴロスとファランクスの両名は。走っては撃って、回復して走っては撃ってを繰り返していた。

 元々、それ以外の攻撃手段は無いし。かと言って、戦闘中にカスタマイズしながら勝つ。というながら作業も出来ない。それほどまでに暇や隙が無いのだ。

「よく、ここまで粘ったと。自分を褒めてやりたいよ」

「ですが決定打は浴びせられてません、メンテまで一時間。ここが正念場ですよ」

 お互いの意見は一致していた、初めて会うペアにしてはいささか相性が良すぎる面もあったが。それでもグリゴロスとファランクスは善戦していた。

 この戦いの勝敗は、地球防衛軍のグリゴロスと異世界攻略軍のヤエザキにかかっている。それほどまでにこの戦の境界線は大事なのだ。

 もっと面白そうな対戦カードはあっただろう。でもそれは、今までの実績があるからこその話だ。何にもない『ドラゴン・スピード』の伝説はここから始まる。

「改めて聞くけど。俺たちが勝ったら仲間になってくれるんだよな?」

 ヤエザキは剣を一度おろし、ちゃんとした返事をする。

「その時は私1人だけよ、間違っても。『放課後クラブ親衛隊』や私達の仲間がスライドして『ドラゴン・スピード』につくなんてことはさせない。皆に迷惑がかかるから、これは私個人の決闘よ」

 放課後クラブはヤエザキだけのギルドじゃない、折角ヤエザキを中心にメンバーが集まって来たのに。トップだけが移動する。なんてことになったらチームが空中分解しかねない。

 それは避けたいが、でもきっと。その時は天上院姫がギルドのトップにスライドするので。なんとか統率は取れるだろう。と、ヤエザキは自分が負けた時のことを考えていた。

 それほど、負けた時の代償が大きいのだ。

 まあ、勝てばいいだけの話。勝てばあの爆裂少女が仲間に入ってくれる。あれだけの力を持つ。魔法少女はそうは居ない。いい人材なのは確かだ。

 そんなことを考えている内に。いよいよ最終局面である。


「ファランクス、下すぞ。あとは俺が時間を稼ぐ」

「え、でも。決定打が無いんじゃ……」

「それでも盾役として、残り1時間。踏ん張ればいいだけの話だ。今の俺たちならいける」

 それはやられるの覚悟の決闘とも呼べた。

「それに、もう倒してしまっても良いんだろう?」

「え!」

「……聞き捨てならないわね、この私を倒す? 冗談も休み休み言いなさい」

 拳と拳を重ね合わせたから解る。

「お前、相当よわってるだろ? 実力じゃなく心が」

「……ッ!」

 図星、ヤエザキ自身は。他者からのプレッシャーで押しつぶされそうになってたのも。また事実。

「うちへ来い。うちには何にも無いが。その何にも無いがお前は欲してるはずだ」

 気持ちが揺らぐ。でもダメだ。

「気持ちは嬉しい、でもダメね。あなたが私より強くなけりゃ、誰も納得しない」

 まあ。

「道理だな。俺がお前より強ければ、誰も文句は言わない」

 ちゃんと勝てばいい、それだけの話だ。

「いくぞ!」

「こい!」

 ギュン!

 こうして、高速の速さでの決闘が始まった。


 右へ左へと揺さぶられる。中でも時計回り、『左拳』からの攻撃が特に効いた。

(左手からの攻撃が効いてる……!)

 シュシュシュ!

 兎に角ジャプ、ジャブ、ジャブ。ワン・ツーでもない。ただの腕一本からの攻撃が効いている。ただの左、そう左なのだ。逃げても無駄なら当りに行くしかない。グリゴロスの迷いのない純粋な左ストレートがヤエザキに響く。

「ク……こんな、はずじゃ……」

 相手の初動を止める、兎に角止めるために攻撃を撃つ。連打連打連打。左左左。

「これまでの戦い。お前は右側からの攻撃に滅法強いが、左からの攻撃には対応できない。これが、お前と4時間ぐらい戦って見つけた。お前の弱点だ!」

「ク!」

 と剣を振り下ろすが。グリゴロスは左へ流れながら移動し、軽いジャブを3発当てる。どれもこれも微弱な攻撃だが、この左からの攻撃は効く。

「ク! ア! ンア!」

 何も出来ない。

「調子に! 乗るな!」

 その初動の切っ先も左ジャブの連打で相殺させる。一方的な試合展開、ヤエザキのHPはちょっとづつしか減らない。ただの一発芸にここまでハマるとは思わなかった。

 元々、それ以上のアビリティは持っていないが。でもこの『左拳からのジャブ』だけは効いている。他の攻撃が全く食らわない彼女だったが。意外なことに、対応も対策もしてなかった。

「HPあと1割デス!」

 ファランクスの声が響く。

 見つけた、彼女の唯一の弱点。『左拳からのジャブ』、加速するでも減速するでもなく一定。波のように続く波状攻撃は止まらない。


「お前の敗因はただ一つ」

「!?」

「気づくのが遅すぎた」

 ジャブ。


 意識が遠のく、もう精神的に疲れ切っていて。ダメだった。

「ただのジャブに……負けた……」

 あれだけの、力と技と知を得たのに……。

 膝をつき、ガクリとうなだれる。

 ――ピーー!

 HP0。という無慈悲な結果だけが残った。

 ポリゴン片になって消えてゆくヤエザキ。ヤエザキは異世界攻略軍のスタート地点へ戻るのだ。

「わかった、約束する。私はあんたの仲間になる。じゃあ、またあとでね」

 そして彼女は、光の粒となって消えた。

 決着がついた。

 雨が、……やんだ。


 雨上がりの中、ファランクスがグリゴロスに言う。

「でも、いくら弱点をついたからって。簡単に倒せすぎじゃないかしら?」

「そんなの、簡単だ」

「?」

「初めから、勝つ気がなかった奴に。負けるわけないだろ」

 彼女の拳はそう語っていた。


 ――ピーー!!!!

《『ファンタジアリアリティ・オンライン』イベントを終了します! 皆様お疲れさまでした、各結果は追って説明してまいりますので。プレイヤーは好きに行動してください。これよりメンテナンスに入ります》

 自由行動の合図が鳴った。


 現実世界。西暦2034年10月18日21時00分。

 仮想世界。西暦2019年05月18日21時00分。

 異世界。?歴????年??月??日??時??分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
・よければブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします!
・こちらも観ていって下さるとありがたいです。
名を上げる。ボカロBGM:最終決戦~ファイナルバトル~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ