番外編17「牙」
天上院姫/農林水サンは暗がりの中、画面を見つめる……。VRMMOをプレイしているプレイヤー達。簡単に言えば人材発掘だ。
最初は「あぁ何だ、四重奏の残党か~」とか思って観たら嫌に棘があるというか。鼻につくというか。そんなキバを感じた。
そう、彼女に無くなり欠けていた。【悪役令嬢】的な何かだ。
まあ、見事にカンに触ったというか。いや、いい意味なのだけれど。……そして興味深かったので冒険者ログを過去へ過去へと遡った。
そして彼女は驚いた。
カンに触るどころではない確かな実力の証。
『賢者』と『空戦』も確かに乗り越えた、天上院咲が最後に挑んだ魔王の攻撃を受けて。
諦めず、倒れなかった人物だと……。
「……素質はあるな、いい例だ。一度会ってみるか」
農林水サンは一時的にログインする――。
≪地球防衛軍、上級ギルド『四重奏』陣形内≫
「おい、そこのギルド『エッグなんちゃら』」
見ると、その場は口喧嘩の最中のようだったが。小柄の美少女はもうめんどくさいので圧する。
そして途中省略――。喧嘩を吹っかけてた男が、農林水サン……ゲームマスターに攻め立てる。
「な! なぜですか!? こいつ! まだまだへなちょこのひよっこですぞ!!」
「私がイイと言ったんだ、それ以上の基準なんてない。というわけで、ホイ。招待状、ス〇ブラ風で良いだろ? おめでとう、参戦決定だ。とりあえず『牙(仮)』としてマークしといてやるよ」
≪ギルド『エッグなんちゃら』は『放課後クラブ親衛隊』への招待状を手にしました≫
あまりにも、簡単すぎる。回りのプレイヤーは理解できなかった。それほどに【多少経験を積んだ初心者】。招待状を手にした本人も、何故!? と攻め立てる。
「お前は、【アノ・マオウ】の攻撃を受けて立っていた。これ以上の説明は……まぁ無粋だろうな」
「!?」
「お前なら解るはずだ。あとは好きにしろ」
そう言って、農林水サンは用が済んだのでさっさとログアウトした。
ヤエザキでもなく、グリゴロスでもなく。この世界の真のゲームマスターからの招待状……。天上院姫からの招待状を断れば。神に泥を塗るような行為になるわけだが、彼女はそれも一興とも思った。
それぐらい牙があったから彼女は好いたのだ。
一人のモブ運営が彼女に対して呟く。
「……よろしかったのですか?」
「まあ、私も久しぶりに緊張したよ。このスリル……忘れないようにしないとな……」
どうやら、彼女自身は刺激目的だったらしい。
チェックするだけチェックして、何もしないのであれば。カカシの警察と一緒だ。
「『賢者』『空戦』『牙』……さあどうする。地球防衛軍。『ドラゴン・スピード』……奴らは敵だ……!」
久しぶりに悪い笑みを見せる、この世の神だった。




