第163話「爆裂魔法」
「いやーどこかに超火力持ってるプレイヤーは居ないかな~?」
バカみたいに地球防衛軍の敷地内を右往左往しているプレイヤーがここに一人いた。
そんな中、巨大怪獣が現れた。誰かが都内に召喚したのだろう。身長118mの巨大な巨体が秋葉原へ目掛けてゆっくり、だが確実に進行していた。誰にも、その巨体を止めるすべはない。
そのど真ん中に、立ちはだからんと。独りの魔法少女が悠然と君臨していた。そしてやたら長い演唱呪文を唱え始める。
「我が名はファランクス! 今こそ爆裂魔法の進化が試される時!」
《空想庭園、獄帝の竜王! その覇道を貫きしは漆黒の灯!》
「え……!?」
《混沌世界の概念を浄土と化し、黄昏の日の元に壊滅せよ!》
「な……何ィ!?」
《絶対の焔よ、円廻の理より還るは覚醒成る両翼!》
「そ……!」
《大いなる破局を我が神眼に示せ!》
「そんな……!」
《森羅万象、誓約の名の下に、あまねく魂に悠久の炎を!》
「バカな……!?」
『スーパーフレア・フルバースト!』
「ぐわあああああああああああ!!」
――――チュドーン!!
――――瞬間、破壊光線。
ゴ〇ラも恐れ戦き跨いで通る。そのバカ火力一点突破なのは、爆裂魔法その系統そのものである。
「きゅう~ダウン……」
バタリ、とこれまたここはギャグ空間なのか? と疑いたくなるほどの清々しいダウンっぷりを披露した美少女の名はファランクス。
「あ……倒れた」
グレゴロスの間の抜けた、声と共に。一人の美少女が仲間になりたそうにこちらを見ている。
「あのう~。動けないので助けてください」
巨大怪獣は光の粒となって霧散していった。
「見つけた! 超火力!」
「ふえ?」
地球防衛軍のキャンプ地という名の休憩所で。体力回復がてらメシを食いながらの話となったグリゴロスとファランクス。
「なるほど、そういうわけで。我が最強の爆裂魔法が必要なわけですね。グリフィンドール」
「俺の名前はグリゴロスだ!」
「言いにくいですグレンドロス、もっと発声はしやすい名前は無かったのですか?」
「他に『速い』の意味合いのが無かったからな。て! だから俺の名前はグリゴロス」
「グリとグラをグッゴロス?」
「違う! 何もかも間違っている! グリゴロスだグリゴロス!」
「で、グッツボックスさんは私をパーティに入れたいと」
「だから名前違う。……ああ、そうだよ。俺が素早さタイプの壁役担当で、ファランクスがトドメの一撃を入れてくれれば良い。これこそチームプレイだろ?」
「チームプレイ、良いですね。確かに私も独り身ですし……奴隷、いや護衛が欲しいところ」
「おい、なんか変なの混ざってたゾ」
「いいでしょう! この爆裂魔法を世に知らしめるため! あなたを下僕にしてしんぜようゾイ!」
「お、良いね。じゃあチーム名は『ドラゴン・スピード』な!」
「あのう、私スピードじゃなくてパワーなんですけど」
「良いの良いの、これは決定事項だ。前からこれにしたかったんだよなあ~」
「……む、すこし不満は残りますが。まあいいでしょう。『ドラゴン・スピード』入らせてもらいます」
こうして。
《ギルド『ドラゴン・スピード』にグリゴロスとファランクスが介入しました!》
と、ポップアップ画面が表示された。
んじゃ、その辺のスライムと戦ってみるか。
「はい! 最初っから全力です! てか全力しか出せません!」
「……?、まあいいや行くぞ」
スライムが戦いを挑んできた!
《空想庭園、獄帝の竜王! その覇道を貫きしは漆黒の灯!》
「フン! ハア! テイ!」
《混沌世界の概念を浄土と化し、黄昏の日の元に壊滅せよ!》
「ソイ! ゼイ! ヤア! スピードタイム!」
《絶対の焔よ、円廻の理より還るは覚醒成る両翼!》
「よし! 倒したぞ! おいファランクス? ファランクス??」
《大いなる破局を我が神眼に示せ!》
「おい! もう敵居ない! 敵居ないって!」
《森羅万象、誓約の名の下に、あまねく魂に悠久の炎を!》
「やめろやめろ! 誰か彼女を止めろー!」
『スーパーフレア・フルバースト!』
――――チュドーン!!
――――瞬間、グリゴロスに向かって破壊光線。
「この魔法は、一度発動したら止まれないのです! きゅう~ダウン……」
「それを、先に言え……。ダウン……」
テイク2
《空想庭園、獄帝の竜王! その覇道を貫きしは漆黒の灯!》
《混沌世界の概念を浄土と化し、黄昏の日の元に壊滅せよ!》
《絶対の焔よ、円廻の理より還るは覚醒成る両翼!》
《大いなる破局を我が神眼に示せ!》
《森羅万象、誓約の名の下に、あまねく魂に悠久の炎を!》
今度は早口で演唱呪文が始まった、今度はグレゴロスはスライムに相手に全然攻撃してないから。攻撃は食らうはず……?
『スーパーフレア・フルバースト!』
――――チュドーン!!
――――瞬間、スライムとグリゴロスに向かって破壊光線。
「俺を、巻き込む、な……」
「この魔法は、全体攻撃な上に敵味方問わず吹き飛ばします、です。きゅう~ダウン……」
「おい、俺ごと倒したら。運ぶ役居なくて全滅だぞ」
事実、二人はVSスライムで2回とも全滅して。地球防衛軍のキャンプ地に強制送還されていた。
解ったこと。
ギルド『ドラゴン・スピード』
リーダー:グリゴロス
メンバー:ファランクス
攻撃力:S
防御力:D
素早さ:S
賢さ:D
ファランクスは現状を考えながら冷静に解説した。
「つまり、こういうことですね。グリングロスさん」
「俺の名前はグリゴロスだ! ……なあ、こんなに速くて強いんならさ。俺がお前をおぶって走り回りながら演唱すれば。強いんじゃないか? そうすれば俺も爆裂魔法を当たらなくて済む」
「なるほど! 騎馬戦! じゃなくてオンブですね! あ、ちなみに肩車はダメですからね! 私だって女子なんですから!」
「いきなり女子力出すんじゃねえ! 今スライム一匹も倒せないんだからな!」
テイク3
《空想庭園、獄帝の竜王! その覇道を貫きしは漆黒の灯!》
カサカサカサカサ……!
《混沌世界の概念を浄土と化し、黄昏の日の元に壊滅せよ!》
カサカサカサカサ……!
《絶対の焔よ、円廻の理より還るは覚醒成る両翼!》
カサカサカサカサ……!
《大いなる破局を我が神眼に示せ!》
カサカサカサカサ……!
《森羅万象、誓約の名の下に、あまねく魂に悠久の炎を!》
カサカサカサカサ……!
『スーパーフレア・フルバースト!』
――――チュドーン!!
――――瞬間、スライムに向かって破壊光線。
したのだが、足元が軽すぎて。砲撃と共に後ろに思いっきり吹き飛ばされた。当然スライムは灰も残さずに消えたが、自分達もHP1を残すまで反動で攻撃を受けた。が、兎にも角にも。スライムを倒しながら自分たちは生き延びられた。
「やった! やりましたよグランドクロスさん!」
「俺の名前はグリゴロスだ! だがあぁ、兎に角これでやっと他のパーティとの戦闘に参入出来るぞ!」
長かった、ここまで長かったと思いながら一同。地球防衛軍のキャンプ地まで戻るのだった。




