第158話「エピローグ」
〈ログアウトします。お疲れさまでした〉
天上院咲は、ベットから腰を上げる。そして反省会の時間とあいなったわけだ。
「今回得た教訓は、大河ドラマにストーリーの面白さを求めるのは間違いってことね。ありのままの自分でやらなきゃ。長く続かない」
変に最高傑作を作ろうとすると、ハードルが上がって。良質の作品の量産を目指すような話だ。だがそれは、長時間の鍛錬に比例して面白くなる。毎日投稿とか1週間投稿とかでは。とても『非理法権天』……湘南桃花のようには行かないのだ。
それを自覚する。ありのままで。そうありのままの自分を好いてくれるような物語構成じゃないと大河ドラマは無理なのだ。短編漫画や2時間映画なら通用するが。1年ほど続く大河ドラマ向けではない。という結論に至った。
咲が感傷に浸っている間、同じ自室に居る天上院姫は、咲とは直接的には関係のない。あらぬ方向に質問を投げ飛ばす。
「あー……それはそれとして。《ヤエザキ親衛隊》さん達にはなんて言えば良いんだろうか?」
咲にとっては、あまり関係ない事でも。応援してくれる人たちが行き場を失い。自然消滅になる。なんてことにはなって欲しくない姫であった。だから咲にとっては他人事だけど、姫にとっては死活問題なのだ。
「ん~私は人気アイドルさんみたいに『卒業』するわけじゃないよ。ちょっと休むだけ」
「どれくらい?」
「そんなの、心が落ち着くまで。て感じになっちゃうよ? もしかしたら違うゲームやるかもしれないし」
「あーそっか。確かにVR機があれば。そこら辺はどうにでもなるな」
自分で作ったゲーム機の事さえも忘れて。《ヤエザキ親衛隊》の心配をする姫。
「今回は、お姉ちゃんサイドのほうで色々ありすぎたからね」
「そこらへんは……すみませんでした!」
姉は深々とお辞儀をする。過去に自分で蒔いた種のしっぺ返しが。今回最愛の妹の方にまで飛び火した形だ。例え全知全能の神様だったとしても、ここはお辞儀をする。
「いいよ。あたま上げて。お姉ちゃん」
「咲……」
「この動乱の時代を乗り切って来れたんだもん。アクシデントはいつもの事。ただ……」
「ただ?」
一泊置いて天上院咲は、話の根底にある核心をついた言葉を紡ぐ。
「やめないでよね、このゲーム」
「…………。」
「私はこのVRMMOの時代。悪くないと思ってる、そりゃ次世代機がどうとかはあるかもしれないけど。この『人生ゲーム』はやめてほしくない。途中で投げてほしくない。私も楽しみたい」
「…………。」
「そのゲーム機は、永遠に完成しない。この世界に想像力が残っている限り、成長し続ける。でしょ?」
それは、とある夢の国の創造主の言葉だった。天上院姫の隠しごとは、お見通しな天上院咲。
「……。あぁ、そうだな。それが私の夢だ!」
「次のゲーム、楽しみにしてるよ」
咲は姫に対して。拳を前に掲げる。それは約束の誓い。終わりと始まりの合図。
「ああ! なのじゃ!」
そう言って。姉妹は拳をグーのまま、こつんと小突きあった。
END
◆ギルドエンディング◆
放課後クラブ
エンジョイしながら、別のゲームをプレイしようか模索中。
四重奏
今日も今日とて戦いの渦中に居る。当分嵐の眼となるだろう。
ルネサンス
道草を食いながら、お絵描きばっかりやっている。
仮面舞踏会
自分たちは悪くないと思いながら悪事を働き続けている。
達観者達
メインだった重要人物達が、非理法権天の方に行ってしまい。空洞状態に。
非理法権天
大人組プレイガチ勢だが。何処まで本気なのか解らない状況。
壁を破壊するもの(デストロイヤー)
エイジを筆頭に、彼らはあらゆる困難を破壊し突き進む。
紅の夜総団
運営陣は今日も今日とて微調整に追われている。
九賢者魔団
ヤエザキだけではなく、放課後クラブ全体のサポートをしようと画策中。
地図化到達し隊
動きが鈍化して、活動が見えにくい。今何をしているのかは不明である。
人間ゲーム同盟
周りのプレイヤーからは「彼らがこれで終わるはずがない」と警戒されている。
エンタメ部
技に磨きをかけて、他のゲームもやるかもしれない。
日没の黄蝶教団
クレナイ国を拠点に今日も信仰を広めようとしている。
恐竜騎士団
各ギルドと合流の兆しが見え始めている。
最果ての軍勢
あらゆるゲームで、危なっかしい所へ治安維持のため。歩を進める。
◆エピローグ2
運営管理室。
「社長、上級ダンジョンを攻略したギルドが居ます《ヤエザキ親衛隊》の2ギルドです」
天上院姫は「そうか……」とどうやら自然消滅は要らぬ心配だったらしいと。腹を決めたようだった。ならば、言うことがある。と、そう思ったので天上院姫自らログインした。
《エレメンタルマスターオンライン内。上級ダンジョン最深部》
「よくぞこの最深部までたどり着いた。〈ターニャン〉と〈ガンダルフ〉と〈その他愉快な仲間達〉……お前たち上級ギルドには別の依頼をしよう……」
ガンダルフとターニャンはソレ。天上院姫のアカウント。農林水サンをじっと見つめていた。
「どうやら。私の認識が甘かった。〈お前たち〉は死んでも食らいついてくる気があるらしい。だからこそ〈ならば〉と付け加える必要があるようだ……」
「…………」
「…………」
「近い将来。また新しいゲームが始まる予定だ。……形式は問わない。『そういう輩』は《放課後クラブ親衛隊》として有志を集めてくれ。いや、集まるならココにしてくれ。そして天上院姉妹が指揮をとる。次回は〈4号ライダー〉のつもりだが、まあ予定は予定だ。変わるかもしれない。要するにそういうことだ……」
「つまり、今の間は。有志を集め。統合してほしいと」
「勝手にいなくなるかもしれないぞ?」
それもあり得る話なのだが。事、ここに居る〈上級者達〉には通じないようだった。
「いなくならないから困っているのだろう? まったく……。だからお前たちに与える『クエスト』は……『有志を見つけ、集め。《放課後クラブ親衛隊》に集結させろ』だ……。旗印とか居るか?」
普通は居ると答えるのが定例だと思うが。この二人はノーと答えた。
「そんなもの無くても勝手についていく」
「それこそが、器たる証じゃろ?」
扱いに困るというか。勝手に歩いていいよ、後ろをついていくから。と言われているようでなんとも恐ろしくも〈心強かった〉。
「解った。私は〈好き勝手に歩かせてもらう〉よ、精々振り落とされんように気負付けろよな。これから先、もっと自由に、激しく、変幻自在に、行かせてもらうのじゃ」
そして。呆れたように手を振りながら。最後にこう言葉を残してこの場のフィナーレを締めくくる。
「では、諸君。武運を祈る」
〈農林水サンはログアウトしました〉




