第153話「紅白頂上戦争3」
ヤエザキはこのフィールドを『広すぎる』と評価した。だがそれは、すぐに間違いだと前言撤回する羽目になる。そう、【狭すぎる】のだ。
ここでは、解りやすく。日本列島並みの面積が色々するので。『日本列島』がという描写に留めておく。
まず、天が割れて、天使が現れた。それが始まりの合図だった。
次に、紅組が。普通のボスモンスター100体が。風の波動砲でフィールドの壁の果てまで円形に吹き飛ばされた。
次に、白組が。日本列島全てが無へと消えた。かと思えばソレを何年もかけて、一人で打ち消したような錯覚に陥った。
次に、紅組が。日本列島が深海へと消えた。水圧で粉々になった残骸が。マグマの熱で蒸発した。ら、その水蒸気で出来た風を一点に集めて。波動砲が紅組目掛けて飛んで来る。
次に、白組が。日本列島の雨、流星群が飛んできた。流れ星。それを紅組が避けたと思ったら。サーカスのような弾道で日本列島が飛翔する。
次に、紅組が。日本列島でブラックホールとホワイトホールを作って。手裏剣のように投げた。白組はそれを、日本列島をガトリングガンの弾丸のようにして打ち消す。
何もかもヤエザキの想定外だった。これは何だ? 別のゲームをやっているのか? そもそも異能バトルのようだ。これがゲームの中? 何でもあり? ありというには常識がなさ過ぎた。
「ヤエザキ! 日本列島が飛んでくるぞ!」
「へ? いや! ちょ!?」
アマゾネス隊のような誰かが、記憶の欠片の世界でも破壊するかのように。それを破壊する。
アメリカ大陸という名の結界で覆われたその中で。
溶けては消え。生まれては破壊され。光と闇が交差し。時が先へ行きては戻り。何かが渦を巻き。アメリカ大陸より日本列島の方が無限の個数で破裂させようともした。
これら全てのエネルギーを消費し、生産し、流動、運搬させる両陣営。
弾薬の数は? 生産性の方が勝っていた。
生産性の労働力は? ちゃんと衣食住させて消耗と回復をさせていた。ただし時間は早送りしているものとする。
使えるエネルギーはアメリカ大陸全土。その【限られた】エネルギーを奪い合い殺し合い。修復し、復活させる。この世の循環サイクルが弾丸のように時を渡り。進み続ける。
色と色と色を。混ぜに混ぜに混ぜたら、やがて黒くなる。そんな天国だった。
「ルール無用もいい所だよお姉ちゃん! 解説! 解説を要求する!」
「オーケー! 長々と解説するよー!」
農林水サンは一呼吸おいてからヤエザキの欲しそうな質問に……答える。
「今起こっている事象は大体『最果ての軍勢』の【本来の力】だが。そこに『心のエレメンタル』が加わり、戦闘力の数値化が実現している。だから、決着はつくんだ。グーとグーでも筋肉の強い方が勝つみたいな!」
「説明になってないよ! どこから突っ込めばいいのかわからないよ!!」
「それでも揺らがぬルールが一つだけある。農林水サン(わたし)が勝つか、オリオン座が勝つか。それ以外は全部前座だ!」
「もー!」
「まー私以外のプレイヤーは、死んでもスタート地点に戻るだけだ。もっと命を軽んじようぜ!」
「も―――――!!!!」
ここで更に解ったルールが発生した。
・最果ての島内にあるエネルギーのみで戦うこと。
・特殊能力の有無より心のエレメンタルの数値の方がゲーム上、優先順位が高くなること。
「やっぱ戦ってみないとわかんねーことってあるなー!」
「も―――――――――!!!!」
空から闇の弓矢が雨のように降ってくる中、姉妹は逃げまどっていた。




