第138話「まとめ情報とアイドルユニット」
▼『エレメンタルマスターオンライン』バージョン1.6.1にしたところですが、ここでバージョン1.6.2へのメンテのお知らせです。
運営から全プレイヤーへ、そして最新情報を発信するSNSや。公式サイトから通知が来た。
バージョン1.6.2修正点。
・『心のエレメンタル』実装。
・装備項目をポイント制にして拡張可能。
・プロフィールに毎シーズンごとの履歴を掲載。
掲示板の反応はこうである……。
◆バーチャル空間内の匿名掲示板~メンテ避難所~◆
【もうメンテかよ!? 開始して24時間経ってね-んじゃね-か?!?】
【え-……、てことは午前中メンテで。操作不可能な感じ???】
【折角、大型アップデートで、次回アプデ思考班や考察班が。湯水を得た魚のごとくはしゃいでたのに……】
【楽しみすぎて熱湯になっちゃうな、お魚チーン】
【あ―そっか―。じゃあ午前中何やろっかな―。クリスタルウォーズかな―】
【EMOはその分チートにはなりにくいからな、ありがたいけど待ち時間やロードはやっぱりストレスにしかならん】
【その間にイスをゲーミングスタイルにするために買ってくる!】
【おう、いってら。体は大事だぞ~】
【イスだけは良いの買っとけ、これはガチだ(経験者談】
【ただの噂じゃないんだな~高い椅子買っとけ説は】
【心のエレメンタルって何ぞ? 必殺技かな?】
【過去の情報によると、本来。本命のゲームシステムだったらしい】
【『心のエレメンタル』って、クリスタルウォーズにもうあるよね? てか隠すつもり無しの名前まんまやんけ!w】
【同じ会社、神道社なんだからいいだろ、そんぐらい】
【クリスタルウォーズではどんなシステムなの?】
【かなり危険なシステムだぞ。例えば心のエレメンタルを『愛』と設定する。すいると、その信念を貫き通せばステータスがずっと無限になるって代物。インフェニティ∞】
【え、なにそれチート?】
【勿論、相手もそのシステム設定してるから。チート合戦になる。最後は『心が先に折れたほうが負け』てゲームさ。正直ゲームの度を超えてるんだよなあ……】
【あぁ~、冷静に文脈化するとそんな感じになるのか】
【それを今回導入するの? まんま移植?】
【さっきEMOはチートになりにくいって話したばっかりなのにw 不穏な空気www】
【始まるのか……、無限と無限のぶつかり合いが……!(偉い人のポーズ】
【毎シーズンごとの履歴って何ぞ?】
【アレじゃね? ポ〇モンの季節分けのランキングみたいなの。それがシーズン】
【運営の説明を簡単に当てると。今までのプレイスタイルが、就活書の履歴書のごとく。毎シーズンのログが残るって事じゃね?】
【じゃあ俺の場合。第1シーズン「女性プレイヤーにナンパしたらネカマだった」第2シーズン「ゲーム内でキレたらイエロープレイヤーになった」第3シーズン「100万円課金しようとしたら運営に止められた」みたいな感じか?】
【突っ込みどころ満載だが、それがシステムに自動判定されて残り続けるのもキツイwww】
【一度レッドプレイヤーになったらそれが残り続けちゃうわけか……。現実は厳しいw】
【まあ、わかりやすくはあるけどな。第4シーズン「初めてログインした」とか「ログインしてない」ってプロフに残ったら解りやすい】
【装備項目ポイントって要するに増強できるってことだろ? ここはまあ別にやってれば慣れそうな感じはある】
【2~4個で固定は、人によってはストレスだもんあぁ。個人差があったほうがいい】
【CWの『心のエレメンタル』のシステムは解った。問題はEMOでそのシステムのまま導入するかどうかって所だ】
【マジでそのまま導入はやめてくれ! ダメゲーになってしまう!w】
【そこらへんはしっかり考えて欲しいな……マジで】
これにより、再ログインを済ませたプレイヤー達は。自身のプロフィールやステータス、システムや動作確認に務めた。
現状、ギルド。放課後クラブのプレイデータのは次の通りである。
◆記載時期◆
現実世界、西暦2034年9月2日、午後。
エレメンタルマスターオンライン、バージョン1.6.2。
◆ギルド『放課後クラブ』の詳細
メンバー:5人。
戦乱都市アスカでの、エリアクエスト『オセロ型領土抗争』でCランクからランクB判定に上昇。
≪飛空艇・空母エヴァンジェリン≫所持者、ヤエザキ。
≪機動戦機ノア2号≫所持者、農林水サン。
≪機動戦機ノア3号≫所持者、エンペラー。
畑にいるもの:食物犬花ジェリー
池にいるもの:人面猫魚トム
◆天上院咲/【改名】ヤエザキ
レベル15
心のエレメンタル:『設定なし』
称号:≪最吉最善の幸運者≫≪モンスターを調べる者≫≪最終決戦おひとよし≫≪まっしろなみちにひかりさすもの≫≪セミプロ≫
装備1:短剣『ジーラダガーオーディリー【深い闇】』
装備2:長杖『トリックメーカー【改+3】』
装備3:眼鏡『万華鏡転生レンズ【改+3】』
装備4:靴『真新しいスニーカー【改+3】』
スキル:防音クリアボディ、ハイジャンプ、雷速鼠動、超反応、古今無双。
システム外スキル:念波。半運命感知。
シーズン履歴
第1シーズン「プレイ時間が350時間を超える。39000匹のうっぴ-を倒して、喋るうっぴ-を最初に見つけた」
第2シーズン「姉である運営をフルボッコにする。クリスタルウォ―ズという別のゲームで200時間かけて【念波】というシステム外スキルを習得した」
第3シーズン「空をジャンプで飛び、最3階層まで強引に突破して。最強のSランクギルド『最果ての軍勢』に出会った」
第4シーズン「ゲーム本編のラスボスであるゴ〇ラの鱗を剥ぎ取って、短剣を手に入れた」
第5シーズン「ゲーム内で死ぬ気で戦って一度心肺停止まで行ったが、第4世代機『MF00(ミラーフォースダブルオー)』によって心肺蘇生し。復活した」
◆天上院姫/【改名】農林水サン
レベル15
心のエレメンタル:『設定なし』
称号:≪どうあがいても運営≫≪神道社代表取締役社長≫≪まっしろなみちにひかりさすもの≫
スキル:特になし
システム外スキル:念波。運命感知。
装備1:『忍刀【5種類のクリアしおり付き】』
装備2:『忍の袴【改+3】』
装備3:『綿妖精のニット帽【改+3】』
アイテム1:モリリリンA
アイテム2:アップルだんご×10
過去の履歴
第1シーズン「ほとんどサキの動向を見守るだけで何もしなかった」
第2シーズン「雲の王国ピュリアのゲームマスターとしてシナリオを構築するも、妹に激怒され病院送りにされる」
第3シーズン「5歳の時に作ったフリーソフト『世界樹の種』の存在を社員に明かされ。神の天啓を受ける、そして≪神道社代表取締役社長≫に就任する」
第4シーズン「第2世代機『シンクロギア』から第4世代機『ミラーフォース00(ダブルオー)』を【無料体験】で行える。テスターを募集した」
第5シーズン「大規模実験が終了し。後継機、『MFC000(ミラーフォースコンバートオーズ)』が完成する足がかりとなる」
◆近衛遊歩/エンペラー
レベル15
心のエレメンタル:『設定なし』
称号:≪第3回クリスタルウォーズ個人ランキング1位≫≪まっしろなみちにひかりさすもの≫
スキル:不明
装備1:銃『ブリッツブレッド【改+8】』
装備2:服『銀糸装束【改+8】』
装備3:小物『風の精霊の羽衣【改+4】』
過去の履歴
第1シーズン「クリスタルウォーズでPVPランキング1位になった。メインクエストはクリアしてない」
第2シーズン「学校でイジメられて不登校になったが天上院咲と友達になった」
第3シーズン「〈起動戦機ノア〉に乗ってサキを身お挺して護った」
第4シーズン「特になし」
第5シーズン「特になし」
◆神楽蒼葉/【改名】ナナナ・カルメル
レベル22
心のエレメンタル:『設定なし』
称号:≪まっしろなみちにひかりさすもの≫
スキル:古今無双。
装備1:ネオライト・フェザーソード【改+5】
装備2:流星のコート【改+2】
装備3:幻聖剣物語の小説
装備4:フェイのネックレス【改+6】
装備5:風の精霊ヒルドの手袋【改+3】
装備6:リセットジェットブーツ【改+2】
装備7:軽量版オールド・ミラーシールド【改+1】
装備8:灼眼のシャナンの小説
アイテム1:マグロ肉
アイテム2:鷹の目【改+3】
過去の経歴
第1シーズン「ギルド『四重奏』のスズの弟としてゲームを始める」
第2シーズン「不明」
第3シーズン「ギルド『達観者達』を脱退」
第4シーズン「ゆるいエンジョイギルドということで、『放課後クラブ』に正式加入する」
第5シーズン「エリアクエスト『オセロ型領土抗争』にチームを組んで参戦した」
◆流川成長/遊牧生
心のエレメンタル:『設定なし』
レベル11
称号:≪生産職≫
スキル:水まき
装備1:でっかいカバン
過去の経歴
第1シーズン「どこかのD級ギルドに所属」
第2シーズン「特になし」
第3シーズン「特になし」
第4シーズン「生産職は弱いからという理由でD級ギルドを追放」
第5シーズン「放課後クラブと出会い、生産職として仲間になる」
◆前回のエリアクエスト『オセロ型領土抗争』でギルドランクが変動◆
ギルドランキングはプレイ時間、クエストへの貢献度、総合課金額、その他道徳的マナーなどで評価されている。
Sランクギルド
1位『最果ての軍勢』変動なし
2位『壁を破壊するもの(デストロイヤー)』変動はしてないがかなり活躍した。
3位『四重奏』大活躍してランクが上がった。
Aランクギルド
1位『紅の夜総団』ゲーム自体をプレイしてないのでAランクに下降した。
2位『九賢者魔団』安定した撃破数によりランク上昇。
3位『地図化到達し隊』活躍はしたが目立っていなかったのでこの順位。
4位『人間ゲーム同盟』体調不良により不参加だった。
Bランクギルド
1位『非理法権天』活躍したプレイヤーもいたが、若干プレイマナーは悪かった。
2位『エンタメ部』可もなく不可もなく活動していた。
3位『放課後クラブ』クエストへの貢献度が高く評価されCランクからBランクにランクインした、課金額は低い。
4位『日没の黄蝶教団』道徳的マナーで減点、課金額だけはBランクトップクラス。
Cランクギルド
1位『ルネサンス』エンジョイプレイヤー勢なので特に変動なし。
Dランクギルド
1位『仮面舞踏会』道徳的マナー以外は放課後クラブを上回っているが、マナー自体が悪かった。
2位『達観者達』ゲームはプレイしていたが、目的が違うからか。やることやったらすぐログアウトしてしまった。
◆ギルド『放課後クラブ』内個別専用チャットルーム≪飛空艇・空母エヴァンジェリン≫船内◆
この部屋には放課後クラブ以外のメンバーは居ないし、内容がギルド外に漏れることもない。
ヤエザキ
【メンテ明け乙だよ~お姉ちゃん~】
農林水サン
【おぉ……。ありがとう、今回はマジで疲れたよ。まあ問題はまだまだ山積みなんだけどな!】
エンペラー
【そうなのか?】
遊牧生
【大変そうです~!】
ヤエザキ
【おお遊牧生ちゃん! やっほ-いつもお世話になっております。ひっさしぶりい! 久しぶり? まあいいや兎に角、武器強化とか。ありがと-! 満面の笑みですわ~】
遊牧生
【ありがとうございます。僕自身は若輩者のお荷物ですが。頑張ってこのギルドで役にたてればいいなと思っています!】
エンペラー
【期待してるぞ】
農林水サン
【あぁ~今回は疲れた~】
ヤエザキ
【ああ、心配しなくていいよ。お姉ちゃんは自分で問題作って自分で解決してるだけだから。問題を作りすぎてるだけ】
エンペラー
【おお……。流石に妹だからそういう所、解ってるんだな。心配して損をしたのかな?】
遊牧生
【え! そうだったんですか!? お二人とも姉妹さん!?】
ヤエザキ
【……。お! やった! ランキングがCランクからBランクに上がったよ! 頑張ったかいがあったねえっ~!】
農林水サン
【まあサキ……じゃなかった! ヤエザキに至っては『反射』で心臓マッサージまでやったんだ、次世代機の実験ネズミ扱いでもこれぐらいの報酬があってもいいだろうってころだろうな】
エンペラー
【そういうわけで、貢献度としてのランクアップか? 俺もお前らが知らない間にゲームはプレイしてたから。貢献度は上がってたと思うけどな】
ナナナ・カルメル
【何せ廃人プレイヤーだもんねえ。何やってたの?】
エンペラー
【武器の強化とか、畑と池に入れ込んだモンスターの世話とか。飛空艇の掃除】
ヤエザキ
【トムとジェリー! 忘れてた! てかイベント中で世話してる暇がなかった!】
ナナナ・カルメル
【サキちゃんは、おっちょこちょいだねえ~。モンスターの世話とか苦手? 今度私がお世話しておこうか? 何かレアアイテムが見つかるかもしれないし】
ヤエザキ
【お、おおう。じゃあお願いしとこうかなあ~。私は未開の地を開拓するので忙しいし】
農林水サン
【おおう! どんどん楽しんでエンジョイしてくれ! のじゃ!】
エンペラー
【てことで。お前らの武器レベル、まんべんなく増強しておいたから。流石に新規武器は用意できなかったが武器強化ぐらいなら出来る】
ヤエザキ
【おォ! サンキュー、なんかエンペラー知らない間に生産職レベル上がったんじゃない?】
エンペラー
【いや、そこは新しく入った仲間。遊牧生の力が大きい。ここまで武器レベルを上げられたのは彼のおかげだ】
ヤエザキ
【お~。やっぱ生産職がいると違うね~。下地が、がっしりして、ギルドに潤いができた感じが良い!】
農林水サン
【個人的には、こんだけ秘密基地っぽくなったんだから。もっと家畜とか飼ってもいいんだぞ? とサンはサンはと推奨してみたりする】
ヤエザキ
【まあやることが増えるのは良いけど、優先順位は付けないとねえ。全部は出来ないからさあ】
農林水サン
【あぁ、やっぱ広すぎるか? 世界やシステムが】
遊牧生
【運営は全部チェックしてるのかな? てぐらい多くのシステムが生成されていますね。結構自動システムなどに依存しているんじゃないかとと言われています】
ヤエザキ
【で、この『心のエレメンタル』て項目は……】
農林水サン
【ヤエザキなら1ヵ月クリスタルウォーズに籠ってたから知ってるはずだよな?】
ヤエザキ
【あったから触ったけど……。これ疲れるよねぇ……。てか、これシステムはそのまんまなの? 発動したらパワー無限みたいな……】
農林水サン
【そのことなんだが……あ、また今度話そう。今は変わった世界とシステムに慣れてくれなのじゃ!】
ヤエザキ
【なんか意味深ね……、また実験台になれとか言わないでよね!】
農林水サン
【そうそれ!】
ヤエザキ
【それって!? やめてよ私死にそうな思いしたんだよ!?】
農林水サン
【私は我が最愛の妹に殺されそうになった、お互い様じゃ】
ヤエザキ
【うぅ~鬼畜! 畜生! 社畜!】
◆
天上院咲はネット名を『サキ』から『ヤエザキ』に変えてログインして、適当に仲間たちと他愛ない雑談をして。ゲームを一日分謳歌したその次の日。
天上院姉妹は同じ私室でいつものように談笑していた。
「5人組アイドルユニットを結成したい? 何それ、お姉ちゃんの要望なの?」
「いや、下から……横からの要望? みたいな? なんつ-か、熱心なネットアイドルオタクな運営がいてな。わしのアンテナ的にも『イイカモ……』と思ってしまったわけじゃ」
このEMOには、一人だけバーチャルアイドルという枠組みが存在する。バーチャルアイドルのくるみちゃんだ。過去に咲に対して語尾を【ほみゅうほみゅうほみゅう】と付けて、ラノベ的個性を出そうとしたが。本人の性格に合っていなかったのか、結局ごく低確率で語尾に「ほみゅう」と茶化すように言うのが日常的になってしまった。言ってしまえば咲の黒歴史である。
「あぁ、あの黒歴史か……悪ノリが過ぎたわよね。え、で何で5人組」
「見た目的に栄えるから」
咲は飽きれながら腕を組む。
「また適当な……振り回されるこっちの身にもなってほしいわね」
「で、バーチャルアイドルくるみちゃんと、咲は確定として。残りの【現実のプレイヤーへのオファー】は誰にしようか? て話」
姫の妙な含みのある内容だった、くるみちゃんはいわゆるNPC。人工知能のAIで動く、簡単に言うとロボットだ。つまり姫はAIのロボット5人のアイドルユニットを組むのではなく。なんと現実世界の生身のプレイヤー残り4人でアイドルユニットを組みたいということだった。
咲は姉である姫の自分に対しての無茶ぶりはスルーして、事の内容のほうが気になったので問いただす。
「……えっと、詳しく」
「一人目はネットアイドルの看板娘であるくるみちゃん、二人目は我が神道社の社長の妹である天上院咲ことヤエザキ、三人目は攻略組トップギルドから一名、残り4人は考えてないけど入れたい。みたいな、最終的にその5人組でクエストやってライブイベントでもやってチケット収入などを得られればなおよし」
「商売かよ!」
「当たり前だ! メインゲーム以外、サブウエポンでも利益出さなきゃ死ぬんだぞ! 運営死ぬぞ! 運営が死ねばゲームが存続できなくなる!」
咲は商売の話にはうとかったので、お金の話に姫を持ち込む。
「そういえば【コノゲーム】の収益とか利益とかってどうなってるの? 儲かってるの?」
「ふむ、良い質問だ。ぶっちゃけ言うと、儲かってない」
「儲かってないの!?」
リアリティのある物語だった。神道社社長、天上院姫は続ける。
「詳しく話そう。次世代機、MFC00(ミラーフォースコンバートオーズ)は飛ぶように売れた。時代を先取りしすぎた感じだから旧ドリームキ〇ストぐらい売れた」
「ドリームキ〇スト」
2019年のゲーム機全体の売り上げで言えばこうなる。
1位、ソニ〇:Play〇tation 2(1億5500万台)。24位、セ〇:ドリームキ〇スト(1060万台)
「1060万台ほどの売り上げ、だが待ってほしい。これは1ヵ月での売り上げだ」
「1ヵ月で1060万台の売り上げ……」
「つまるところ、今世界23位」
「ゲーム機世界23位」
ちょっと現実に地に足ついた数字が出てきて、夢の国から目が覚めてしまいそうでもある咲。
「で、ソフトのほうが微妙なんだ。基本無料ダウンロードなんだけど、そのダウンロード数が201万ダウンロード。ポケ〇トモンスター青ぐらい。今ソフト世界91位」
「ソフト世界91位」
「201万ダウンロードで、その1割が毎月3000円課金してくれる。ので、月々6億300万円」
「月々6億300万円」
ちょっと待って、これ以上聞いたらヤバい気がする。と直感の危険予知で話を切ろうとする天上院咲。
「この頭金を運営に分配したり、更に政府からの補助金が……」
「もういい! これ以上は聞かない!」
「……ふむ、そうか。……というわけで、ちょっと儲かっている」
「ちょっと」
キョトンと目が点になる咲だったが、それを反復するように姫が続ける。
「ギリギリ黒字」
「お、おっけい。何がどうなってなのかは解らないが、結果としてギリギリ黒字なのね」
「それを回復させるための起死回生が5人組アイドル!」
「荷が重い!」
「まぁまぁ、あんたらはいつも通りゲームをエンジョイしてれば良いからさ。それを広告塔として、ちょっとお金儲けしたいって話」
「そうすればどうなるの?」
「ゲーム内空間が更に快適になるように、運営が頑張れる」
「……、ん~おっけい。わかったやるわよ、まぁ元々お金の話を聞かなくても、お姉ちゃんの頼みならやってあげるけどね」
「さっすが! わが最愛の妹あいだッ!」
咲はゴツンと軽く頭を殴ってあげた。理由はわかったから、と話を前のめりに進める。
「じゃあ『三人目は攻略組トップギルドから一名』だったわね、誰にするの?」
「Aランクギルドの『四重奏のスズ』か、Sランクギルドの『最果ての軍勢ラフティーヌ』の両方とか思ってる」
咲と姫の綺麗な押収が始まる。
「ああスズちゃんは最初のイフリート戦とか、豪華客船ミルヴォワール防衛戦で会ったわね。小さくて可愛いって印象だったわ。ラフティーヌは会ってないけど、Sランクギルドだったら名前なら聞いたことある」
「ランクCからヤエザキ、ランクAからスズ、ランクSからラフティーヌ、AIからくるみちゃん、あと一人は?」
「非理法権天の湘南桃花もいい線行ってるかもだけど、あの人はアイドルというかマネージャーて感じの風格なんじゃよな。できればランク低いところから選びたい」
【放課後クラブ】はギルドランクCなので、それより低いとなるとランクDとなる。
「そうなってくると、【仮面舞踏会】のあんずか。【達観者達】のオーバーリミッツか―。オーバーリミッツはスズちゃんと被らない?」
「被るなぁ、声質がほぼ同じなんだよな。かつ言ってあんずは評判悪いよな、PKプレイヤーやってるとか。あんまり良い噂は聞かない」
咲と姫は残りの二人への選択肢がほぼほぼ無いことに気が付いた、だが。こと個性については被らないほうがいい。
「とりあえずダイレクトメール送ってみる。それで反応を見よう」
姫は運営として。スズ、ラフティーヌ、あんずにそれぞれメールを送ってみた。しばらく間を開けて。3人とも暇だったのか、すんなりオーケーをもらった。姫はとりあえずメンバーは一安心と深呼吸する。
「5人のメンバーはそろった、あとはユニット名だな」
「このメンツでユニット名か―、真ん中。センターは誰? くるみちゃん」
「まあアイドルベテランだからなあ。経験値が違う」
並んだ時の立ち位置として。Aあんず、Bヤエザキ、Cくるみ、Dラフティーヌ、Eスズ。という形になった。基本陣形は。
「ユニット名か―、エレメンタルマスターズ?」
「それ安直過ぎじゃないか? あと、ゲームの外でもイベントやると思うから。他のギルドとは明確な差別化を図った名前のほうがいい」
咲と姫は悩むように首をかしげて話し合う。
「つまるところ、今までに無い名前か-。アイドルのクインテットで良い感じのを探してみよう」
「化学反応……じゃあケミストリーか……なんか男っぽい響き。類義語だとシナジー」
「星・音・花からは脱却したいかな」
「仮想世界、バーチャル」
「仮想世界には皆ログインしてる」
「カード名から取るのは? 豪華さと希少性も兼ねそろえた『ロイヤルストレートフラッシュ』とか」
「ん。他のギルドにも被らないな、いいねそれ。それでいこう」
「ちなみに、ロイヤルストレートフラッシュって出る確率いくつだっけ?」
「0.00015%」
「ひっく!」
というわけで、大まかな事柄は決まったので。VR空間にダイブして5人全員で話をする形に事は運んだ。
アイドルユニット名『ロイヤルストレートフラッシュ』
メンバー。くるみ、ヤエザキ、ラフティーヌ、スズ、あんず。
天上院咲/ヤエザキはゲームにログインする。天上院姫/農林水サンも同じくログインする。今回は二人、同じギルドランクCの『放課後クラブ』近衛遊歩/エンペラーと。神楽蒼葉/ナナナ・カルメルと遊牧生はお休みである。
天上院姫は咲に感化されてこちらもプレイヤーネームを変えた。プレイヤー名【農林水サン】である。
姫が農林水サンにしたのは、この広すぎる世界観で。少しでも生産色が増えて欲しいな……。という淡い期待があるからだ。農林水サン、農林水サン、農林水サン、と連呼してれば何だかんだで話題に上がるだろう。
自身の運営陣としての責任感からか、姫は強い想いも相まって。この名前に決めた。
そんな中、ユニット作りの話題をラフティーヌとあんずに持ち掛ける。
「なんですか? そのロイヤルかに玉って……」
誰もそんな答えを求めてはいなかったが。ギルドランクS、最果ての軍勢に所属する。最強の魔法使いラフティーヌは変化球な会話を投げてきた。彼女は知識が豊富で美しさと賢さを兼ねそろえた、才色兼備な女性である。
「金になるんならするぜ、タダ働きはごめんだぜ」
折角運営からのスカウトなので、ここぞとばかりに上から目線でものを申してくる。ギルドランクD、仮面舞踏会のあんず。彼女はヤンキー気質というかグレてるというか。簡単に言うと悪役気質である。
その後、紆余曲折あったが。アイドルユニット『ロイヤルストレースフラッシュ』は結成された。
「そういえばアイドルユニットってことは。……歌って踊るの? 私どっちもヘタなんだけど……? え! まさか今から練習するの!?」
「いや、運動モーションは自動スキルでやってくれるだけだから、実質何もしなくてもいい。流石に歌ってはもらわないと困るが」
「まじか……緊張する」
咲と姫が交互に会話を弾ませる。
大勢の観客が集まり。舞台のカーテンが開く、そして歌姫達の演舞が始まった。
「それでは皆さん聞いてください! 新ユニット『ロイヤルストレートフラッシュ』が歌うのは……!」
『あり〇ままで!!!!』




