第137話「改名ヤエザキ」
「天上院咲って名前は変えられないけど……。だからってサキは安直すぎたかな~。そうだ、ゲーム名は変えられるから変えよう」
天上院姫が部屋の反対側で寝ながらゲームにログインしている中、咲は自室でのんびりと今後の動きについて考えていた。
ゲームの攻略掲示板とかも観たいし、現実の出来事とかも気になるけど。咲は咲の【忠義や信念ではなく】、【共同や歩調のために】考えを廻らせようと努める。
ネットで咲関連のニックネームを探す、自分のネットネームだ。今度は慎重に選ぼうと努める。そして自分のアンテナにピンとくるものを見つける。
「お、八重咲き(やえざき)か~。いいねコレ」
八重咲きの意味を調べる。
花びらが重なって咲く花の咲き方のことで、普通は変わりものとして出現する。花が派手になるので園芸植物では喜ばれる。
「ヨシ! あんま変わってないけど、これでいこう!」
天上院咲はネットネームを「サキ」から「ヤエザキ」に設定変更した。
「お姉ちゃんは~……。て、もうログインしてるか。タイミングが合わなかったか、仕方ない」
スヤスヤと眠っている姉が、ベットの上でコロンと横になっている。
「食べ物の名前のほうが良かったかな~? まぁいいや! 私主人公気質だし! ……自分で言ってるのも何だけど……」
意味が増えることは良いことだ、……多分……。と自分で自分の名前にお茶をにごす咲であったが、今後の身の振り方はこれで決定した。今度からは安直じゃない丁寧さだった。
「ヤエザキ、ヤエザキ、ヤエザキ……。う~ん、そのうち慣れるでしょう」
名前も決まったので、さっそくゲームにログインすることにした。
▼『EMO』へようこそ。
~以下略~。
▼技の連合国キャット、アルテマ島、始まり市へログインします。それではよい旅を。
「お、いたいた! お~いサキ~!」
待っていました、とばかりに転移門の外側から姉に呼ばれるサキ。ヒメは駆け寄ってくる。
「や、ちょっと待って。今ヤエザキにゲームネーム変えたんだって―!」
そう言われて、ヒメはサキの頭上をゆっくりと見上げる。
「あ、ホントだ。ヤエザキに成ってる……」
「でしょ~心機一転これから私の心は八重咲きに……て、んん?」
観ると、ヒメ姉の後ろにはエンペラーとオーバーリミッツが何食わぬ顔で立っていた。




