第135話「ファーストキス・オンライン」
◆登場人物紹介◆
主人公。
御三家トキン(ごさんけときん)、プレイヤー名『ペース(足並み)』。
ヒロイン。
色鍵桂馬、プレイヤー名『オーバーリミッツ(限界を超える)』。
ムードメイカー。
牛田遊駒、プレイヤー名『ガアナ(菓南)』。
ライバル。
鉄道飛車、プレイヤー名『ジャンクション(交差点)』。
ライバルのヒロイン。
響角行、プレイヤー名『オンパレード(総出演)』。
ゲーム会社の社長兼運営。
天上院姫、プレイヤー名『トリックスター(奇術師)』。
▼現実では味わえない、青春の味を取り戻せ――。
▼キスを重ねるごとにキスレベルが上がる、超ド直球王道純愛青春ファンタジー。
▼ファーストキス・オンラインにようこそ!
現実世界2034年8月5日12時00分。
VRMMOゲーム。『ファーストキス・オンライン』発売初日、そこには有名男女アイドルのPRもあってか長い長蛇の列が、出来ていた。
御三家トキン(ごさんけときん)は、早速買い。ゲームにログインした目の前には、プレイヤー名の入力欄があった。
トキンはプレイヤー名『ペース(足並み)』、『ペース』と入力して一つのバカデカい部屋に飛ばされる。
▼このチュートリアルの部屋を出るためには。異性とカップルを組み、キスをしてからでないと出られません。
「つまり、キスをしないと出られない部屋ってことか」
この世界には、レベルイコールキスの回数で強さが決まる。最初はキスレベル0(ぜろ)。キャラクター制作すらない。
容姿は第4世代機『ミラーフォース00(ダブルオー)』が超音波か何かでスキャンしたらしく、現実の見た目そのまんま。
これは、ゲームをする前に。『最初に容姿は判明されてしまいます』とあらかじめ説明書に書いてあったように。異性と交流させる気しかない。
「これ……どこの出会い系かな?」
高級路線の全年齢対象って書いてあるけど、これはきっと男×男、女×女は出来ないよって予防線を張っているのだろう。もしくは制限。
「キスする異性を探して、キスをして。晴れて一緒に部屋から出られれば冒険が始められるって事か。そしてそのあとすっかりきっぱり別れても良いと、……それはそれで外道なゲームプレイだな」
ふと横に、良い感じの見た目と声色の女性が立っていた。こんなゲームを初日から始めようとする強者なので、覚悟は出来てるはず……ということで声をかける。
「俺、ペース。あの、もしよかったら、俺とひとキッスいっとく?」
濃い言葉を発してしまった、それに負けじと濃い返答が帰って来る。
「私はオーバーリミッツです。あの! 私、現実で女の子同士でキスとかしちゃう系女子なんですけど! それでも良いですか!」
「なん……だと……!?」
ペースは無意識に漫画のようなセリフを発した、全力で表情が固まる。
「……それは、リアル純愛?」
「ん―困ったことに、純愛なのよね」
「相思相愛?」
「相思相愛」
「それでも俺はキスしていいの?」
「それでも私はキスされていいの?」
最初のキスがヘヴィーすぎる気がした、キスした瞬間。彼女は二股確定である。変な意味で。
「お……俺は大丈夫だ、ゲームだし。秘密なら」
「ちなみに、速攻でこのことは相方にバレちゃいます」
「じゃあ何でこんなゲームやってるんだ!」
疑問を突っ込まずにはいられなかった。
「だ……男性とキスがしたいからよ! 言わせんなバカ!」
早速痴話喧嘩みたいな話題になっていた、あっちもこっちもガヤガヤガヤガヤ五月蠅くなってきた。逆に静かだったらそれはそれで怖い。
「オーケー、冷静になって考えよう。二人ともする気はある。オーケー」
「お……お―け―……」
リミッツは顔を赤らめている。こんな時にそうなっても困ると思ったペース。
長引かせたら更なる泥沼へ発展しそうだと根拠のない本能が思考に叩き込まれたので。
ペースはサッとリミッツにキスをした。電光石火、とても浅くて軽いファーストキスだった。
「……、終わり?」
「あぁ、終わった」
「……あんた本っ当っ! 最っ低っ!」
オーバーリミッツは何故か嬉しさと怒りの入り乱れる表情で、ペースのケツに向かってドン! とケリを尻モチつかせる勢いで撃ち込まれた。
▼ピロリン! ペースとオーバーリミッツのキスレベルが1上がりました!
▼ファーストキス・オンラインへようこそ! それではゲームをお楽しみください!
二人の門前に光の扉が現れ、異世界へ導かれた。




