第134話「2cヘビツカイ地区5」
(何手先を読んだだろう? 10手? 50手? 100手?)
ここまで戦場が込み合ってくると終盤まで読める、1手間違えれば状況がひっくり返る。悪手と善手を天秤にかけて、どちらが最良かを己自身に問いかけて数日が経過したような。不可逆の世界。
光速の世界での思考と思考のぶつかり合い、真に言えば己自身だったかもしれない。だが答えは出た、それは……。
サキとマリーがやったのは『システムスキル』。通常の、『システムスキル』だ。
「「超反応!」」
技名:超反応
種類:概念特殊系奇襲戦法
認識しロックオンしたしたターゲットを最優先に、空間転移してカウンターではなく、出会いがしらで先制攻撃の一撃を入れる技。
戦闘から守る、初撃を対戦相手にもさせないための。是が非でも【先頭に立ち初撃とヘイト値を稼ぐ】という執念の高難易度技。
スピードは人間の物理運動を超越した空間転移なので概念特殊系。現実世界のARゲームでは技判定こそあるが重さや威力は更に半減される。
難点はプレイヤーが指定したロックオンに依存すること。1人しか技指定できないこと。出会いがしらの攻撃が特殊攻撃力の半分から4分の1なこと。
ポケモンで言えば、ねこだまし。と同等か、その半分の威力。ただしその技に敵のヘイト値が自分に向くという特殊効果が付加されている。
目で見てから反応できるのが0.5秒、その反応を強奪するのが超反応。
電光石火。
サキはマリーのロックオンを強奪し、マリーはサキのロックオンを強奪した。それから互いに互いを両手で、パチンとねこだましをする格好の体当たり。
Zと逆Z型の弧線を描き。二人はドン! と激突する。
体と体が反動で後ろに動き、二人ともそれぞれの間合いを取る。
選んだのは善手、違法は……。ない。
それはつまり、2cヘビツカイ地区は。まだどちらの領土でもないことを指していた。
桃花はDL悟空と戦っていた。
蒼葉は敵3人を抑えていた。
プレイヤーたちはエリアボスと戦っていた。
いずれもマリーが出した魔法で制御しているのが現状、マリーを倒せば一気に終わる戦だ。
「お互い精神と体力の限界じゃない?」
「そうね、じゃあここらでケリをつけましょう」
お互いに短剣を手にして、一撃入れれば勝ち。至極ひ弱なもの同士の戦いとなった、だが読み合いが尋常じゃなかった。
一抹の間を置いてから。
「「超反応!」」
瞬間二人は場面から消えて、再び現れた時には。右わき腹を斬られたマリーがドサリと倒れていた。
「…………ッ!」
「あんたとの読み合い、中々きつかったわよ」
マリーが生み出した絵心魔法のモンスターはふっと消える。
そして短剣をキンッと腰の鞘に納めてから、決め台詞をサキは言う。
「だけど負ける理由にはならない!」
▼巨人モンスターが倒されました。
▼2cヘビツカイ地区は黒チームの領土になりました。
▼ゴーレムモンスターは倒されました。
▼2aオウシ地区は黒チームの領土になりました。
▼ネズミモンスターは倒されました。
▼1cテンビン地区は白チームの領土になりました。
▼恐竜モンスターは倒されました。
▼1aサソリ地区は黒チームの領土になりました。
▼〈白チーム〉領土4、〈黒チーム〉領土5で〈黒チーム〉の勝利となりました。
▼オセロ型領土抗争、イベント終了。皆様お疲れさまでした。
サキはドサリと地面に倒れて、渾身の心境を叫ぶ。
「終わったぁあああああああああああああああああああああああー!」
◆イベント結果◆
黒:1aサソリ地区は平地、恐竜型のモンスター、装備『全王の概念聖書【封】』。
白:1bオオカミ地区は沼地、ゴースト型のモンスター、装備『桜の王剣アンドゥリル【封】』。
白:1cテンビン地区は空き地、電気ネズミ型のモンスター、装備『ネオライト・フェザーソード【封】』。
黒:2aオウシ地区は城壁、ゴーレム型のモンスター、装備『力王の籠手マーベル【封】』。
黒:2bシシ地区は5重の塔、フェニックス型のモンスター、装備『世界樹の種【封】』。
黒:2cヘビツカイ地区は格闘闘技場、巨人型のモンスター、装備『オールド・ミラーシールド【封】』。
白:3aカメレオン地区は森、ゴリラ型のモンスター、装備『ジーラダガー・オーデリィー【封】』。
黒:3bワシ地区は空き地、機械型のモンスター、装備『リセットジェットブーツ【封】』。
白:3cカジキ地区は孤島、モグラ型のモンスター、装備『炎の王盾ネブカドネザル【封】』。
a b c
1●〇〇
2●●●
3〇●〇
おまけ:リアル時間では6日手でした。




