第131話「2cヘビツカイ地区2」
「はは~んもしかして私がラスボス前の前座だと思ってる? 思ってるっしょ~? これでも星クズ程度の主人公を張ってる自信はあるよ?」
大空真理ことマリーは鉛筆をクルクルと回す行為でお茶をにごした。サキはほむうと腕を組む。
「でもあんた自身は弱いわよね? 観た感じ」
「そうね、私自身は弱いわよ、身体能力だったら桃花さんにも負けるぐらい。でも、私だって旅をして進化したんだよ! 絵心魔法! オートアクション:雷斧!」
すると不自然に、機械的に一度描いた絵をなぞる様にキャラクターを書き連ねる。ペンと紙のオブジェクトが自動製造工場のように動き出した。
「え、ちょっと待ってこれって……」
太陽に向かってペンを高らかに掲げた、まるで旗か国旗でも掲げているかのようである。
「だから私は! 数に頼る! オートアクション:ジン&大関」
すると、更に2体のポリゴンNPCが現れた。合計3体のポリゴン群である。
「更に! 【ハッピーの変換法程式】を応用して【運命の糸】を再構成! 数字は18! 色は青! 私の意志を読み取り勝手に動いて!」
見る見るうちに元となった絵の形を変え、青々く発光すら加えた輝きの【糸が4本】。
絵心マリーの前衛には。雷斧、ジン、大関。そして巨人型のエリアモンスターを操っている。
この巨人モンスターには『オールド・ミラーシールド【封】』が装備されている。これら全てを操って、まるで不思議の国のアリスと同等の存在に昇華したような自信に満ち溢れている。
絵心魔法の神髄は、その自由度にあると言っても過言ではない。でもサキは剣を構えて動じない。
「でもこれぐらいの修羅場は何度もくぐってきたわよ!」
「あっれれ~? まだこの絵に満足できない? じゃあもうちょっと絵を【加えよう】かな!」
「【ハッピーの変換法程式】! 【運命の糸】に【バタフライ・ソナダー】を発動! これにより……」
これにより、4人は独立して個々人で放つ言葉に【力が宿り】、2cヘビツカイ地区全体にその声が響くようになった。一方的に響くだけならまだ可愛い方なのだが、この技は轟き、反響して大音響へと駆け上がる。
「ねえ、あのお姉ちゃんは1人で何をしてるの?」
「要するに増やした手駒をパワーアップさせてるのよ」
桃花は不思議な別の窓に語り掛けるように、サキと蒼葉に語り掛ける。
「【運命の糸】も【バタフライ・ソナダー】もこのゲームにはない、マリーちゃんのオリジナルの設定付加よ。なんか魔法陣でも描いてると思えばいい」
ヒメがステータス画面ごしに、アドバイスをする。超常的な内容は、大体天上院姫に聞けば解決してしまう。
『ちなみに【ハッピーの変換法程式】は【ミラーフォース00(ダブルオー)】の数字を操ってるわけだから別に悪法、てわけではない』
「新たな単語が次々と……」
蒼葉が困ったような顔をする。
『あのマリーちゃんっていう子は設定が好きなんだな、まあ創作をやってるならむしろ設定が全くないのは、褒められたことではないが……』
「後戻りできない専門用語が肥大化してるわけだね」
『そうだな、カロリーみたいに燃えてどっかいけばいいのだが……広がり続けるとマリーは厄介な敵キャラになるぞ』
「じゃ、これ以上描かせなければいいわけだね!」
サキとヒメは答えを導き出す。が、マリーは嬉しくないので悪巧みをする。
「ところがどっこいそうはいかないよ! 絵心魔法『オートアクション』は私が別の事をやってても勝手にイメージを描いてくれるよ! つまり私を止めても止まらない! 私を倒さない限り絵は残り続け、増え続けるよ!」
「しまった! この子、初期段階で手を打っとかなきゃヤバイプレイヤーだったか!」
「もう遅いよ! 絵心魔法! 【時は加速する(メイド・イン・ヘブン)】! 4体の手駒を【赤い彗星(通常の3倍)】にする!」
時を重ねるごとに設定が付加し続ける絵心魔法のマリー、流石にここまで来ると嫌でもやる気が出てくる3人であった。すでに桃花1人では倒すのは無理な状況下に置かれている。
「もう手遅れだよ! 設定付加! 【対象の想像の10倍に増幅する】!」
雷斧、ジン、大関。巨人モンスターの力が10倍に、スピードは30倍になった。
というわけで。取り返しがつかないところまで行って、一気に、大いに焦る3人は。縦1列で猛ダッシューで走り出した。
『付加されたんだったら削除しろ!』
「ナイスアドバイスお姉ちゃん!」
参加はしてないが、サキに思いっきり窓ごしにアドバイスする席に座っているヒメであった。




