第128話「3cカジキ地区2」
「野郎どもー! 3cカジキ地区に雪崩れ込めー!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおー!」」」
「全力でフォローするんだー! 俺たちの真の力を見せてやれー!」
「「「モブウゥウーーーーーーーーーーー!」」」
放課後クラブ以外の人たちも思い思いに叫びながら、守りたいものに対して必死だった。
そんな渦中、サキが困った動物でも観たかのように、うなだれる。目の前には〈白チーム〉がいる。
「なんなのよ! こっちに近い領土なんだからさっさと元来た陣地に帰りなさいよ!」
「そんなわけ行くか! 〈白チーム〉にとっちゃ3cカジキ地区のアイテムは【最重要アイテム】なんだよ!」
「? 何で?」
「『日没の黄蝶教団』にSランクギルド『最果ての軍勢』からの直々の依頼だ! 『炎の王盾ネブカドネザル【封】』、それを達成出来ればショウモンチョウ様を復活させられる!」
「復活って……人口AIでってこと?」
「あぁ! しかし出来なきゃ儚き夢と化す! 我らの崇拝する神様のためにもこの土地は譲れねえ!」
それを男は一人で吠えていた。
「……て言っても、あんたのギルドメンバー5人のうち4人は【退場】してもらっちゃったし、あんた1人だけで私達3人を相手にすると?」
「ぐ……」
「1人の夢も集団戦ではモロイものね……解った、この土地は空け渡しましょう」
桃花の仰天の回答に心揺れるサキ。
「え!? 桃花さん何を言って……!?」
「ただし! この土地を譲る代わりに。2cヘビツカイ地区と1cテンビン地区での出来事にあんたは関与しないことを誓ってもらうわ! 反対方向に今更引き返す時間も惜しいしね!」
「お、俺1人の足止めのために土地2つの安全圏を主張するか……結構俺、高く見積もられてるのか?」
「待って桃花さん! そのショウモンチョウってAIが復活したらそれはそれで不味いんじゃないの?」
「それはイベント後の話よ、このイベント中は参入は無理なはず。まあ復活したらそれはそれで私が責任をもって何とかするけどね」
「何とかって……」
「変なフラグが立ったよ……」
蒼葉はみょうちくりんな声色を発する。
「ぐ、今更だが多勢に無勢でも。こっちの要求は呑んでくれるんだな?」
「サキちゃんと蒼葉君はいい?」
独断専行にならないように、二人に語り掛ける桃花。
「二か所の邪魔が入らないけど、確定じゃないのよね……しかも口約束だし」
「桃花さん何でそんなお願い聞いちゃうの? 普通に倒せばいいじゃん?」
「や、……個人的には『最果ての軍勢』の力量はよく知ってる。あの曲者揃いの敵になるのは正直言って不味すぎる、少なくとも私一人の手じゃ負えなくなる」
「そんなに厄介だった? 私一緒に戦ったことあるけど」
「あれは味方だったから良かったのよ、敵になったら冗談じゃなくヤバイわよ」
「てか、『日没の黄蝶教団』て『最果ての軍勢』の軍門だったんだ……」
2人の確認を再度とる年長者である桃花。
「サキちゃんは?」
「しゃくだけど、桃花さんにケアされた身としては。何も反発出来ない……」
「蒼葉君は?」
「ん~。まあ良いんじゃない? 恩も売れるし」
「よし。じゃあここはあんたを見逃す、私たちは2cヘビツカイ地区へ安全に行ける。オーケー?」
間を置いて、場を切り替える。仕切り直しだ。
復讐者は安堵したかのように、〈白チームの〉情報をついコロっと教えてしまう。
「あぁ、だが気をつけろよ。2cヘビツカイ地区には〈白チーム〉『ルネサンス』の絵心マリーがスタンバっているからな!」
「あ、マリーちゃんって始まりの街でイフリートの時。一緒に戦ったあの人?」
「それだけじゃねえぞ、1cテンビン地区には〈白チーム〉『エンタメ部』真典の守護者・旅村歩燐がスタンバってる!」
「「誰? それ?」」
サキと蒼葉は首をかしげて、うん? とうなった。だけど情報量と顔が広い桃花だけは動揺していた。
「げ! あーうん、じゃあ作戦変更。絵心マリーにはサキちゃんと蒼葉君で戦って、私は仲間の非理法権天と合流して旅村歩燐を叩く」
「え、桃花さんレベルが5人いるのに1人を相手にするんですか?」
「行けば解る、簡単じゃないってことがね」
一呼吸間を間を置いてから、復讐者は自分の標的モンスターへ向かってゆく。なんだか敵なのにゆるキャラになってしまっていた。
「じゃあ……、この場所は俺が貰うから先に行けー!」
「変な言い回しするなしー!」
こうして、恩が売れたサキ、蒼葉、桃花の3人は2cヘビツカイ地区へ走りながら向かうのであった。
放課後クラブの間で、復讐者の好感度と言う名の株が何故か上がってしまうのは追加効果だった。




