第115話「半運命感知」
「さて、ではどうしようか? 蒼葉っち」
1、復讐鬼にリベンジ。
2、牧場主である遊牧生を探す。
3、街をだらだら歩く。
「何で僕にふるかなぁ……、ん~たまには戦闘以外も良いんじゃない? てことで牧場主を探してみる。かな」
「じゃあどうやって会うかだよそれ……私にはあの事話したような気がする記憶がおぼろげにあるけど……」
「とりあえずステータス画面開いてみたら?」
「いやいやいや、会ったこともない人物とのフレンド登録なんて……」
あった。
遊牧生のフレンド登録が完了している状態であった。
・遊牧生
・前橋コハク
・ラミ・ドラキュール
・鬼門牙血
・綾波静
・億千万 成田
・狂
〈不可逆の世界〉特有の〈なかったことにしてはいけない〉が思いっきり発動していた。
こればっかりは、天上院咲も目を白黒させざるおえなかった。
「見なかったことにしよう! ……とは言っても〈見て見ぬふりをするな〉と誰かに言われているような……」
登録履歴を見る限り、どうやら第4世代機『ミラーフォース00(ダブルオー)』に機種変更した後に表示が現れたようだった。
「仕方ない……あるんだから通話してみよう」
緊張しながら通話ボタンを押すサキ。するとどうだろう、遊牧生は通話に出た。
『もしもし、えっと。誰ですか?』
「まぁそうなるか……えーっと初めまして。サキです、私はあなたのことを思い出しました。あなたも私のことを思い出せるはずです」
『……? すみませんがいつ会いましたか?』
「2034年6月20日」
『……はい?』
「今は2034年8月1日です。アニメみたいなセリフで言うと、私だけが覚えているのかな?」
『ん? 何を言ってるんですか?』
「ん? おかしなことになっている……。同じ地球に住む人間だからオンラインでの時間の流れは同じはず」
サキと生の間に、説明役として。再び姫が通話に割り込んできた。
『や、おかしくない』
サキは茫然とするしかなかったが、考えに考えて。何とか話を進めようと努力する。が、何も出てこない。
「えっと、とりあえず今どこ? 場所です場所!」
『戦乱都市アスカの2aオウシ地区です』
「お姉ちゃん、この場合。どっちの時間軸が正しいの?」
姫はただ真実を述べる。
『どっちの時間軸も繋がっているんだよ、二人とも忘れてるだけで』
「えーっと……」
『遊牧生もサキみたいに会ったけど忘れてるだけだ、思い出させればいい』
「ふむ……」
遊牧生は何かの間違い電話だと思っている。サキは話の整理をするために一度通話を切ることにする。
「ごめん、またあとでかけなおすね」
ピロン。と通話を切った音が鳴った。
「……ごめん、蒼葉っち。一回ログアウトする」
「うん、わかったー」
そうして、ゲーム自体をログアウトするサキであった。
◆
咲自身の部屋。咲は目の前に居た姫に語り掛ける。二人っきりの部屋で。
「無理だよお姉ちゃん。会ったことのない相手に会ったことあります何て言ってもさ……」
天上院姫は意味深な言葉を呟く。
「半運命感知……か……」
『少女は異世界ゲームで名を上げる。』での世界観。
『半運命感知』
第4世代機『ミラーフォース00(ダブルオー)』で発見された、システム外スキル。
光速の世界、0秒で【世界線を移動しても記憶を維持出来る能力】。現在確認されているのは天上院咲、1人のみ。1ゲームソフトのみで有効。
姉の天上院姫は運命感知で全てのゲームソフトで世界線の記憶の維持が有効。
完全運命感知は科学の域を超えているので都市伝説とされている。




