第111話「紅蓮の意志」
戦乱都市アスカの街の中の喫茶店内。サキはテーブルでブレイクタイムを楽しみながら桃花とボイスチャットをしていた
『今回私たちはその街では活動しないから。これはオーバーリミッツも同意見よ』
Bランクギルド第1位『非理法権天』の湘南桃花はゲーム画面の通話越しに言った。余談だがサイド・バイ・サイドとも掛け持ちしているらしい。あっちこっちに引っ張りだこでスケットを頼まれるのが彼女の性分だ。闘争の渦ともいうかもしれないが、今のところ『世界樹シスターエデン』と彼女の関係は無かったりする。
天上院咲、ゲーム名サキはフレンドとして遊びたかったので困惑しながら言葉を返す。
「あれ? もしかして私のこと苦手?」
『違うって。私は私で忙しいし。レベルが高い私が出たら、貴女の出番【喰らっちゃう】でしょ?』
なんか微妙に誤解を招くようなニュアンスだったが、一応言いたいことは解った。ギルド、放課後クラブは放課後クラブで、この艱難を乗り越えて見せろというお達しらしい。
『あーなら、またあいつら呼んでみれば? Aランクギルド第1位『四重奏』黄色い悪魔ことスズちゃんも居るし。あいつらは戦闘大好きっ子だから』
そういえば蒼葉はスズのお姉ちゃんらしいことは、蒼葉自身の口からから聞いている。姉弟の会話が見れるのは、結構レアだ。
『あいつらだったら「やばい、俺たち好みの戦場だ」て脱兎のごとく食いついてくるわよ』
それもそうかと思うと同時に、この今居る人生という道が合っているのかどうかでサキは迷ってしまった。なんというか直感で固まってしまった。
『サキちゃん。あなたはあなたの心のままに動きなさい』
「え、それってどういう……」
『目の前にあるのは白紙、そこには何を描いても良い。問題もないし正解もない。だからサキちゃん、私の言葉で迷わないで』
「……、……」
『ふむ、悟すような言い方じゃダメか……なら』
戸惑うサキに桃花は昔ながらの激励を下す。
『いつまでも私の金言聞いてるんじゃねーよ、ちったー自分で探せ。……よ!』
画面の向こう側で桃花がウインクしているようにも見えたサキであった。
「う、……うん! そうする!」
『おし! 元気出たかー? まー言ってる事は過去の自分に言い聞かせてる内容なんだけどね』
「私の成長は、私にしか見つけられないってことね! ……ありがとうございます!」
『うん、迷ったらまた相談に乗るから頑張んなさいや』
そんなこんなで、サキと桃花との通話は切れた。




