番外編10「ミニゲーム~もしも~」
キャプテン・アメリカ編
現実世界2034年、7月4日。
天上院咲はVRゲーム機の中で夢想する。
舞台はとあるうさぎの夢物語の全容と時間を知っている状態。
アベンジャーズ・インフィニティウォーで、世界がサノスの指パッチンで人口が半分になってキャプテンが生き残ってるのを知っている世界。
アベンジャーズ・ノーサレンダーで、ヒーローが達が固まってしまったのを知っている世界。
灼眼のシャナンの映像の結末をほぼ全て観た状態の世界。
日本のヒーロー達が天上院咲より先に、悪の組織と戦っていた世界。
ひょんなことから、天上院咲とキャプテン・アメリカが現実世界で出会ったのは2018年。月日は、はっきりしたことは解らない。
「何で俺に会おうと思った」
「や、なんとなく。お姉ちゃんと似た臭いがしそうな気がしたから」
「確信がないな」
「私は別に未来の有益な情報を与えるために来たわけじゃ無い。話したくなったから話に来ただけよ」
「動機はなんだ、この2018年に来てまでしたいこととは何だ」
「まず前提として、私はどっかのツインテールやその弟とは違う。私は『始まりのキャプテン』に用がある」
あるうさぎの夢物語をフェーズで分けると。フェーズ3が終わって、フェーズ4の始まりあたりだよな。と天上院咲は考える。
まず咲が言ってはいけない事。この世界は灼眼のシャナンで祭礼の蛇が誕生する前であること。これは大きな星の歯車なので、どうしても言うわけにはいかないし誤魔化せない。
次に咲が言っていい事。サノスが指パッチンをする前の歴史は、もう起こった出来事なので。言ってもキャプテンには変えられない。はずだが、咲は彼の力量を知らない。
となると、ただの他愛もない雑談を表舞台でやりたい咲にとっては。アイアンマンの誕生秘話ぐらいなら話せるのか? と思考する。
話したいだけなのに時空間がこんがらがってるから、ややこしい限りである。
咲はどう話したらいいかわからないので。結局、天上院姫と話してるんだな。という前提で話そうとするが、だが男だが。
結局言いたいことを全部のみ込み。何を話せばいいかわからず迷う咲。見かねたキャプテンはこちらから先に言葉を紡ぐことにした。
「何が起きた、サノスは何処に行った」
この世界で起きたことは。蒼葉との3人のバトル中に灼眼のシャナンをみて巫女が「何が起きた」か解らず途方にくれて。更に合唱でアベンジャーズでも同様のことが起こっているという事。
正規の時系列を3周して完結した、うさぎの夢物語の中間地点で。最初は知らず、次に知り、後からまたもう一度同じ現象が起きているという事。
姿形は違っても、やっていることは同じ。だからこれは巫女に何が起きたか説明する必要があるのと同じ。そしてもう一つは蒼葉の居場所は何処だということだ。咲は検討はつかないがあてはある。
「えっと。1、最悪の事態は阻止された。あなたが解っていなくても」
「最悪とは……!」
「おっと結果は変わらなかったからそこは言えないゾ~。2、サノスがどこだって? 今は私の仲間よ、会って倒したいって言うのなら。私はそれを阻止する」
「何? これだけの人々を殺しておいて仲間だと、じゃあお前は敵か」
「私は味方よ、それだけははっきり言える」
巫女から観たら、戦うべき吸血鬼が突然その場から居なくなって途方にくれているという状態なのだろう。
だからこの滾り過ぎた闘士を何処へ向ければいいか解らずにいるといった感じなのだろう。つまり敵が居ないのだ。
うさぎの夢物語での明確な敵は戦意を喪失し、あとに何も残さないように振る舞っていたシャナンは桃花、この場合サノスだが。は大の親友だ。悪の親玉、祭礼の蛇の件から脱却したい所ではある。
咲は真帆転・桃花はよせという助言から察するに。仲間割れの危険性がある。となると、今ある敵は誰だというカードに対して咲は2枚のカードを持っていることになる。
一つは簡単に出せる敵、妖怪と。遠い未来の敵、サムライだ。
……ここはアベンジャーズの世界。ならキャプテンに選ばせようと心に決める咲。
「敵は2人居る、どっちか一つしか選べない。今戦ってる敵か、遠い未来の敵。決断はキャプテンに任せるわ」
「それで場所は?」
「サノスは『今』英霊の街にいる、その場合私は姿形を変えてあんたと戦う事になるでしょうね」
「……」
「もう一人は最果ての島ね、あとは解るはず。その場合私は居ないけど、キャプテンの仲間割れの危険性があるわね」
「わかった」
最後に天上院咲はこう告げる。
「じゃ、またあとで。1941年ファースト・アベンジャーで会いましょう」
◆
そうして天上院咲は現実世界2034年、7月4日。VRゲーム機の中から起きて目を覚ます。
そうして呟くことは一言……。
「今『やるべきこと』は、やれたか……」




