第95話「ギルドランキング」
ここで一度ギルドランキングを簡単に説明しておく。
ギルドランキング
ギルドランキングはプレイ時間、クエストへの貢献度、総合課金額、その他道徳的マナーなどで評価されている。
◆Sランクギルド◆
1位『最果ての軍勢』
その道でお金を稼ぎ、ご飯を食べているプロ集団。≪個にて最強、束ねて無敵≫がキャッチフレーズ。
2位『壁を破壊するもの(デストロイヤー)』
アマチュア勢・課金ありの【最前線攻略組】ガチ勢。兎に角ゲームをクリアする事を念頭に置いているため、ゲームは実力主義。高額な課金額も相まって≪運営のお財布≫と不名誉な名声を得ている。
3位『紅の夜総団』
運営のみで構成されたチーム、ゲームをいったんクリアしてからは何もしてないので順位が下がるばかりである。
◆Aランクギルド◆
1位『四重奏』
戦闘特化型ギルド、時間の許す限り。己の職業を極め続けた結果この地位についている。
◆Bランクギルド◆
1位『非理法権天』
子供達を監視する役割を担っているネット内のPTA的存在、保護者会。時間はないが金や権力はある人達。
2位『エンタメ部』
とある学校で運用されている大学生チーム。やってることは運営サイドとそん色ないほど似ているが、明らかに金銭面で劣っている。
◆Cランクギルド◆
1位『ルネサンス』
特に何もしてないのほほんとしたエンジョイプレイヤー達である、のほほんとしているがゆえにマナー違反は一度もない。
2位『放課後クラブ』
クエストへの貢献度とプレイ時間は『ルネサンス』を上回っているが、総合課金額と道徳的マナーなどで『放課後クラブ』は2位となる。サキがシステム外スキル【念波】を使ったためのペナルティーによるマイナス点だ。
◆Dランクギルド◆
1位『仮面舞踏会』
プレイ時間、クエストへの貢献度、総合課金額もそこそこあるが。道徳的マナーでマイナス点を食らいまくっている。
2位『達観者達』
他を圧倒する洞察力を持っているが、そもそもこのゲームを遊ぶ気力がないためかなり下位に居るポジション。ギルド『隣り合わせ(サイド・バイ・サイド)』と『信秘の玉手箱』も吸収合併されている。
◆
「ねえサキ姉ちゃんまた『世界樹のリンゴ』が成ってるよ!」
「お……多いわね、でもこれは蒼葉こそ食べるべきものであってあたしには……」
「遠慮せずに分け合いっこしながら歩こうよ!」
若干の戸惑いを見せる咲、その時アゴがコツンと微動する。世界樹『シスターブレス』は【正常に稼働している】。
サキは「はぁ……」と呆れたようにして続ける。
「わかった、じゃあ分け合いっこね」
「うん!」
これまた蒼葉は満面の笑みであった。
というわけでこれまたたんまりと『世界樹のリンゴ』を食べてHPとMPの上限を上げた。
◆
てくてくと、クエストのための武器を手に入れるためのモンスターを探すために歩いていたサキと蒼葉だったが……。
「ねえヒメ、どっかで観てるんでしょ? ちょっと来なさい」
「流石は我が最愛の妹よ~!」
ドロン! と忍者っぽいポーズで現れた。
「モンスター倒して、武器をはぎ取って装備して、クエストこなすのめんどくさいから」
「めんどくさいから?」
「ラスボスに会わせて」
「……はい? ……まぁ良いぞ! 最愛の妹の頼みじゃ致し方ない!」
その場に居合わせた蒼葉がツッコミ役を買って出る。
「いきなりラスボスって!? それをオーケーしちゃうこの人もこの人だよ!」
そして魔法陣を作り出して……。ヒメと蒼葉のコントが炸裂する。
「というわけで、ラスボス直行の転移門作ってみた!」
「お仕事お速いいいいいあぁああああ!」
そしてそそくさと消えようとするヒメだったが……。
「流石に運営で社長のあたしが居るのは問題だからこれでドロンさせてもら……」
「居ろ、これは妹命令だ」
「はうー! 我が最愛の妹様の命令じゃ致し方なしいいいいいい!」
「この姉妹ヤバイいいいいいああああああ!」
どうやらサキとヒメと蒼葉で色々すっ飛ばしてラスボスに挑む流れになったようだ。エンペラーどこいった。
▼こうして対ラスボス戦線のパーティーが出来上がった。
サキ:初期装備のみ
ヒメ:運営であり社長
蒼葉:サキの装備のおふる
エンペラー:おるすばん
「よし! じゃあラスボス戦だほみゅう!」
「私達の戦いはこれからじゃ!」
「これでいいのかこのゲーム!?」
そして本当にラスボスの転移門の中に入って行った。行ってしまった……。
◆
そもそもこの世界は。アシアー大陸、リュビアー大陸、エウローパ大陸の大きく3つの大陸に別れており。
それら3つの大陸を制覇した覇者のみが中央にある塔『セントラルタワー』というラストダンジョンに登ることを許される。
その頂上に『エレメンタルワールド』という黒い星の卵があり、そこがラスボス戦の空間なのだ。
で、現在。冒険者であるサキとヒメと蒼葉は【運営権限でそれらを全部すっ飛ばして】黒い星の卵の眼前に居る。
「なんか勝てる可能性ゼロなんですけど……」
という不安の声色しか出てこない蒼葉。
「気にすんな、私達が道だ。失敗したら『フェイト』の村に戻ろう」
威風堂々と前だけを見つめる天上院咲ことサキ。
「まぁノリと勢いでクリアもイケるんじゃね? サキだし、サキだし」
どこまでも他人行儀な運営兼社長の天上院姫ことヒメ。
何処まで真剣なのか本気なのかマジなのか解らない3人は、こうしてラスボスへの門を開くのであった。




