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2話:散弾男

女の家をお尻で踏みつぶした巨大な人型ロボットは、水色が主体で、右手には銃らしきものを持っていた。


「きょ、巨人!?」

「・・・ああ。巨大人型兵器、通称、戦人機。」

「戦人機。」

「あれは、連邦だな。それも旧式・・・アだな。」

「ア?」

「世界大戦が始まって、三ヶ月に出てきた連邦の戦人機。試作機のアだ。」

「・・・あなた、詳しいのね。

 この国で戦争の状況なんか禄にわからないのに・・・。」


女から不審に思うような言葉を聞かされ、俺はつい口を滑らせてしまったことに気付く。


「ただのマニアだ。」

「・・・そ、そう。」


その時、凄い爆音が空から聞こえ、上空を見上げると、2台の戦闘機が上空を飛んでいた。

この連邦の戦人機は煙を放っていた事から、この戦闘機と戦闘していたんだろうと推測する。


俺は今も尻餅をついているアに向かって走り出す。

俺が走り出すと、後ろから「待ちなさいよぉ。」と女の声が聞こえる。


アの操縦席(胴体の中央部)近くまで来た俺は、強制排出レバーを引く。

すると、胴体の中央部に入り込んでいた操縦席が下にスライドされ、操縦席が目の前に現れる。


「・・・まだ生きてるようだな。」

「うぅぅぅ・・・。」


俺はアの操縦席に座っていた意識が戻りかけの連邦兵のパイロットを操縦席から外に転がす。

そして、俺が変わりに操縦席に座り込む。


「うぅぅぅ、えっ、いてえぇ!」

「ちょっと待ちなさいよぉ!!」


連邦のパイロットらしき男の声と、女の声を聞きながら、操縦席を元の位置に戻す。


「・・・少し退場してもらうか。」


俺はアの再起動のボタンをクリックすると、アの一つ目の目が緑色に光り、操縦席からの景色が外の現状を180℃映し出す。そして、上空を飛んでいる2機の戦闘機を捕らえる。


--------------------------------------------


「クズリー少尉。このまま爆弾を投下して、木っ端微塵にしませんか!」

「待て。いくら旧式であっても折角の機体だ。パイロットだけ始末して手に入れる。」

「分かりました。」

「手負いとはいえ、くれぐれも注意しろ。」

「注意しようにもあの射撃の腕を見ましたよねぇ。我々二機にロックオンを禄に当てることもできなかった新米兵士達ですよ。」

「まさか、死滅の国に連邦の戦人機が二体もいるとは思わなかったもんだがな。」

「一体目は、驚いてミサイルで粉砕してしまいましたが・・・。」

「ああ。こいつは捕獲する。油断するな・・」


ピピピピピっとロックオンされたというアラーム音が通信から聞こえたと同時に、部下の戦闘機が爆発する。


「コリアーーーーーーーーーーァァァ!!」


そして、自分の機体にもアラーム音が聞こえたと同時に、旋回すると、何かが機体の横を通り過ぎる。


「こいつぅっ!今まで無駄球を撃つことしか知らなかったくせにぃ!」


旋回した戦闘機の先頭を、尻餅をついているアに向けて、マシンガンを放とうとした時・・・

アが近くあった木を根っこから抜き、それを俺の戦闘機に向かって飛ばしてきていた。


「くそがあああああああ!」


木を緊急回避でギリギリかわす事に成功した俺は、安堵の表情を浮かべた瞬間にアラーム音とほぼ同時に吹き飛ぶ。


--------------------------------------------


私は、上空で花火のように爆発する戦闘機を見る。


アから放たれた銃の発射による3発の爆音に鼓膜が持っていかれそうになった。


あの高速で動いていた戦闘機2機を3発で破壊したあの男・・・何者?

私は、今もアの操縦席で座っているであろうあの男の方向を見る。


その近くには、それを操縦していたであろう男が、俺のアを返せっと叫んでいた連邦の男が呆然と立っていた。大人しくなったのは、一機目を一発で打ち落とした時だったと思う。


玩具じゃないんだぞぉ!とか叫んでいたのに・・・。


まあ、今は、あの操縦席に座っている散弾男に感謝するべきなんだろう。

最低でも、あの人のおかげで三人の命が助かったんだから。


2話:散弾男






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