『風の精霊』
「シロや、シローーー♪」
「ご飯だよ~」
いつもなら
ウチが呼べば
長いしっぽをふって
嬉しそうに駆けて来るのに
その日は、
いくら呼んでも
いくら待っても
シロは帰って来なかった。
「ばあちゃん、シロが、
帰って来ん、、、。」
「………嗚呼、シロは精霊に
連れて行かれたんかもしれん、」
「精霊?」
「イヌワシや鷹のことや、」
「奴らは、上から見てて動くもんに
狙いを定めると一気に駆け下りてきて
鋭い脚の爪と脚力でガッチリ獲物を
掴んで、持ち去るんや、、、」
「だから、シロはもう帰ってこん、」
「(つω`*)グスン・・・・」
「だから言ったやろ?」
「白い猫は、飼うのは止めなさいって、
白っぽいもんは狙われやすいから
お前が泣くんがわかってるから、」
「でもな、
精霊たちも生きていかんとならん、」
「自然の摂理やで、諦めなさい。」
「あーあー泣かんとええんや」
泣かんとええんや、、、
泣かんとええんや、
この事件から
しばらく経ったある日
テレビで絶滅危惧種の
特集で”イヌワシ”を観ました。
逞しい翼で風をつかみ
空へ飛び立つ瞬間、
イヌワシの瞳は、空を映し
限りなく澄んでいた、、、
彼らの瞳には きっと、
透明な風の姿が見えているだろう
滑らかに蒼空に弧を描き
高みに昇って行く姿を見つめながら
わたしは確かに自らの鼓動を感じていた。
それは、愛猫を喪った哀しみではなく
_魅了、そのものだったことを
認めざるえない感情だった………
イヌワシは、その数十年の生涯で
パートナーを変えることがない。
岩棚や、大木の上にいくつかの巣を持ち
毎年 気に入った場所で子育てをする。
産み落とされる卵は2つ
オス、メス交替で大切にあたため
ひと月半くらいで雛が誕生する。
白くふわふわの綿毛に包まれた
愛らしい雛だが、
余程、食べ物が豊富な年でもなければ
二羽とも育つことはない。
大きくて丈夫な一羽だけが
__初夏の空へと帰ってゆく。
巣立ちを控えたヒナは、
親たちのように巧みに動いてくれない
その、我が翼で、
ジタバタともがいていました。
精霊見習いの旅立ちの時も
もうすぐ、、、




