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この世とあの世の生活

この世とあの世の生活〜第6話〜

作者: 福紙

ここは地獄の閻魔庁の事務所。今日も裁きを終えて閻魔大王は自分の机に戻り、冠を外す。そしてため息を吐いた。


「…今日は子供ばかりではないか…」


と言うとこん助がトコトコと歩いてきた。


「赤ちゃんもいましたね…」


声が自然と暗い。閻魔大王は肩を手で押さえてゴキゴキと鳴らす。


「赤ん坊の魂は極楽の使者に引き渡した。すぐに生まれ変われるであろう…他の子供も比較的早く生まれ変われるのだがな。とりあえず、河原辺りで石積みさせて待たせる」


「でも、石積みしてそれを崩すって意地悪じゃないですか?」


「事情はどうであれ、親より先に死んだと言う罪だ。まぁ、理不尽と言えば理不尽だが。さて、奴を迎えに行くか。現世に行くぞ」


「はい!」


と閻魔大王とこん助は河原に向かった。


「…お兄さんすごい…」


一方河原では子供の亡者たちと担当の獄卒らが群がっていた。岩の上に乗った白刃(しらは)が何かしている。


「…っ」


自分の背より高く石を積んでいる。しかも絶妙なバランスで真っ直ぐと積み上がっている。


「ふぅ…」


「わー!お兄さんすごーい!」


「何で倒れないんだ?!」


パチパチと子供たち拍手される白刃。何となく達成感があった。しかしそこに黒い影が迫っていた。


「どーん!!!」


閻魔大王が黒い(しゃく)で高々と積み上げた石を叩いて崩した。せっかく高く積み上げた石がバラバラと崩れて行く。


「え、閻魔様!?」


「何を誇らしげな顔をしている?さぁ、現世に行くじ…」


と閻魔大王が言いかけた瞬間、


「この鬼め!食らえ!必殺!∞(むげん)万年殺し!!」


と背後から少年の亡者が閻魔大王の尻めがけて尖った石を突き刺した(※よい子は真似しないでね!)



「つ、疲れた…」


「ぬぉおおおお…!!尻が…!!尻が…!!!」


現世のアパート。白刃はちゃぶ台に伏せ、閻魔大王は畳に敷かれた布団の上でうつ伏せになって尻を押さえていた。と、子供に化けたこん助が袋を下げて帰ってきた。


「閻魔様ー。お尻の薬買ってきました〜」


ドロンと野干(やかん)の姿に戻ったこん助は薬局に行ってきたらしい。


「おお…こん助…!」


「薬局でどんな薬買ったらいいかわからなかったので、“近所の子供に尖った石でカンチョーされた”って言ったら、店員さんが困った顔をしてこの薬を出してくれました」


「貴様!言ったのか?!」


「じゃないと、どの薬かわからないじゃないですかー。白刃さんにはコレです。栄養ドリンク」


「栄養…どりんく?」


「疲れた時にいいそうです」


「…?」


と白刃は栄養ドリンクの瓶の開け方がわからず逆さにしたりしている。


「そこの上を首を捻るように開けてください」


「…おお。開いた…」


「閻魔様、お薬塗りますのでお尻を…」


「自分で塗る!!自分で塗れるわ!」


「うぐっ!良薬口に苦し…」


とそれぞれこん助の買ってきたものを使う閻魔大王と白刃。閻魔大王は別の部屋へ行った。


「白刃さん、栄養ドリンクはどうですか?」


「まぁ…疲れに効くのであれば…ありがとう」


白刃はこん助に礼を言った。薬を塗り終わった閻魔大王が戻ってきた。


「くぬ…あの小童(こわっぱ)め…」


「あぁ、閻魔様。薬局の店員さん曰く“暫く長時間座るのを控えてください”との事です」


「何?!立って裁きをしろと?!」


「さすがに長時間立つのは大変ですので、座布団を買ってきました。これです」


とこん助は袋から座布団を出した。


「座布団…にしては奇怪な形よのう…真ん中が空いてるではないか」


「それは座布団と呼べるのか?」


「円座布団です。痔の人とかにいいそうです。試しに座ってみてください」


「ぬう…痔ではないのだがな…」


閻魔大王は恐る恐る尻の下に円座布団を敷き、ゆっくりと座った。


「…お?おお?!なかなかよいぞ…!」


「そんな意味のなさそうな座布団が!!恐るべし…現世…!」


「治るまでこれを敷いて裁きを行うぞ!」


と閻魔大王は円座布団を大いに気に入った。白刃はふと思い出す。


「しかし、あの子供…恐れ多くも閻魔様に何と言う事を…」


「子供だから(ゆる)す。だが、大人がやったら無条件で阿鼻(あび)地獄に落としてくれる!!」


「確かに無礼ですが、ちゃんと罪状見て裁きましょうね。ところで、白刃さん。子供の亡者を相手にするのをよく引き受けましたね。子供とか苦手そうなのに」


とプライドが高くエリートの獄卒である白刃が、閻魔大王により河原で子供の亡者の面倒を見る命令を、嫌がらずすんなりと引き受けたのをこん助は不思議であった。


「いや…私には…弟妹が20人いてな。つい調子に乗ってしまった…それにしても人間の子供は大人しいな」


「20人?!」


白刃は大家族の長男で子供の面倒を見るのは得意であった。そして白刃が思いついた。


「こん助よ、両親にその栄養どりんくとやらを送ってもいいか?きっと弟妹の面倒でぐったりしていると思う。やんちゃでな」


「いや、相当ぐったりしているでしょう…」


翌日から閻魔大王は尻が治るまで円座布団を敷いて裁きをし、白刃は栄養ドリンクを土産に久々に実家に帰った瞬間、妹弟の歓迎(襲撃)を受けて両親と一緒に栄養ドリンクを飲んだ。

円座布団は寝る時に腰にも敷くと腰痛持ちには重宝します。

なんでか子供の頃って無限とかそんな言葉好きでしたね。


カンチョーはやめようね!

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