ゴーヤーの美味しい食べ方
名前決めてません。
「あなた・・・」
アサミが不安気に声を掛けてくる。
肩で切り揃えられ、ふんわりとした黒髪が揺れる。健康的に日焼けした肌、心配そうに見つめる黒い瞳。
勿論、僕のお嫁さんだ。
僕は一家の主として家族を安心させなければいけない。
笑顔に加えて、軽い首肯で返事をする。
彼女を安心させる為に向けられていた眼差しは、今、一つの食材へと注がれている。
お隣さんからお裾分けされた緑色のイボイボしたもの。苦瓜、ゴーヤーだ。
痩せた土地でも世話を必要とせず、多くの実をつける優れた作物。
最近では夏の緑のカーテンとしても利用される。
但し、そのあまりの苦さが難点だ。
僕もアサミもゴーヤーの苦味は好きではない。
ゴーヤーの苦味は油の旨味や味の濃い調味料で誤魔化すのが一般的な方法だけど、それだけでは足りない。一工夫が必要だ。
①ゴーヤー(1本)
ゴーヤーの両端を切り落として縦方向に半分に切る。
スプーン等で種、わたを取り除く。
半分に割ったゴーヤーは5ミリ程度の薄切りにする。
ビニール袋に切ったゴーヤーを入れ、塩小さじ2分の1杯、砂糖小さじ2杯を混ぜて揉む。
袋の上からすりこぎで軽く叩く。
軽くお湯に通して下拵えは完了。
②玉葱(中を半分)
玉葱をみじん切りにしたものをラップせずにレンジで2分程度温める。
③南瓜(180グラム)
5ミリ程度の薄切りにする。これは火を通り易くする為なので大雑把で大丈夫。
切った南瓜にラップをかけてレンジで3分程度温める。
火が通って柔らかくなったかぼちゃをマッシュポテトの要領で潰す。
④合びき肉(200グラム)
フライパンを熱して油を大さじ1杯、合びき肉をそぼろ状にしながら赤みが消えるまで炒める。
ゴーヤーをフライパンに入れてしんなりとするまで軽く炒める。
玉葱、南瓜、水200cc、木杓子で混ぜながらペースト状になるまで火を通す。
⑤味付け
味噌大さじ2を加え、塩と黒胡椒で味を調える。
水に溶いた片栗粉を混ぜてとろみを付けて完成。
牛肉の焦げた芳ばしい香りが食欲をそそる。肉の美味さは牛、出汁となり、他の食材の美味さの引き立て役は豚だと思う。合びき肉はその両方を兼ね備えた最高の食材と言える。
肉の旨味と南瓜、玉葱の甘味がゴーヤーの苦味と上手くかみ合い、柔らかな味わいを創り出す。肉汁は南瓜のペーストと片栗粉によるとろみでしっかりと吸いこんで旨味を一滴も逃さず。それらは口内で脂っこさを感じさせない為の穀類の役割を果たす。
噛みしめたときの心地良い食感、出汁の旨味を吸い込むスポンジとしての機能はゴーヤーが瓜であることを思い出させる。
みじん切りにした玉葱を噛みしめたときのシャキシャキとした食感、すっきりした甘味が良いアクセント、肉と野菜を交互に味わうことで飽きを感じさせない。
これで苦手だったゴーヤーが好物のひとつになることは間違いなし。
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